第七十話 英雄ジークフリート 対 英雄ロキ
シュンッ! キン!
瞬間移動のような速度で二人の姿が消え、次の刹那には火花が散る。
キキキキキキキ——カンッ!!
剣と剣が幾度もぶつかり合い、耳を裂く金属音が都市の中央に響き渡る。瓦礫と化した建物が、その余波でさらに崩れていく。
ジークフリートが横に一閃。
「上級魔法:轟雷斬」
ズガアアアアアアンッ!!!
「上級魔法:黒炎斬」
ゴウウウウウウウウッ!!!
ドカン!!!!!!!!!
両者の斬撃が正面から激突した瞬間、
轟音とともに爆発の衝撃波が都市全体を震わせる。
瓦礫が宙を舞い、崩れ残った建物が次々と倒壊していった。
火花が散り、剣と剣がぶつかり合っている最中、ロキはニヤリと笑いながら口ずさむ。
「ジークフリート、うぬは世界を守りたいと言っていた。しかし、うぬの望みが叶うことは決してない」
このままでは確実に
*** ”あの者”が世界を破壊するからだ ***。
そう言い放つロキ。
ジークフリートは知っている……彼が決して嘘を言わないことを。
だからこそ疑問に思う。
世界を終わらせるのではなく、既に終わっているという発言に。
「あの者?」
「たとえ余を殺し、黒翼を壊滅させても――すでに無意味」
「ますます理解できんな。私が……そんなことを許すとでも?」
ガギィィンッ!!!
ジークフリートの剣がロキの刃を弾き飛ばす。
ロキは後方へ滑るように退き、瓦礫を踏み砕きながら着地する。
「うぬの実力は知っている。だが、強ければいい話ではない。世の中にはどうしようもない化け物がいる……誰も”あの者”には……」
ロキの背から闇色の翼が爆ぜるように展開される。
「勝てん」
バサァァァン!!!
次の瞬間、ロキは漆黒の稲妻となり、天へと駆け上がった。
ジークフリートもまた白き翼を翻し、閃光の矢のごとく追随する。
――空中戦、開幕。
シュンッ!
斬撃の軌跡が稲光のように走り、
シュバァッ! キィンッ! バシュンッ! ドガァァンッ!!!
残像が幾重にも重なり、都市上空を覆う黒雲を貫く。
地上の者には二人の姿は影すら捉えられない。
ただ、雷鳴の閃光と黒炎の閃光が絶え間なく交錯し、天を引き裂き続ける。
キキキキキキキキキキキキィィィィィィィィィィィィンッッッ!!!
空気が震え、大気が裂け、
シュンッ! バシュンッ! ギャリィィィィィンッ!!!
フゥン ドンッ カン
――そして。
キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!
シュンッ! バシュンッ! ギャリィィンッ!!!
光、闇、雷……三属性を併せ持つ英雄、ジークフリートが放つ融合魔法……それは二属性の上級魔法の組み合わせ。
超級魔法より威力は低いが、二段構えの攻撃……それに加え速度は尋常ではない。
「融合魔法:轟雷爆葬・深淵斬」
相殺するには……
「融合魔法:炎舞・深淵斬」
火、闇……二属性を併せ持つ英雄、ロキも同じく融合魔法を放つしかない。
威力は互角……結果。
キンッ! クルクルクルクル……
両者の聖剣は反動で弾き飛ばされ、空を舞う。
二人の地上への着地。
直後――視線が交錯する。
ドッ――!!
拳が閃光の速さで突き出され、互いの拳を迎撃。
衝突音は爆発の如し。
ドゴォォォォッッ!!!!
拳骨が砕けるかと思える衝撃。
わずかな隙。ジークフリートが回し蹴り。
ゴシャァァァァッ!!
ジークフリートの雷を纏った足がロキの脇腹を抉る。
ロキも黒炎を纏った足で顔面を薙ぎ払う。
バギィィィィッ!!!
拳、膝、肘、踵――すべてが殺意の塊と化し、連撃に次ぐ連撃。
ダッダッ……
タ……タタ……タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ――ッ!!!
攻撃の速度がさらに上がり、体がぶつかる度に周囲へと衝撃波が奔る。
地盤は抉れ、大気は裂け、建物は遠くまで吹き飛ぶ。
そして――天から落ちる二本の聖剣。
クルクルクルクル…… ガシィッ ガシィッ
同時に柄を掴み取った二人。
剣を縦に振り下ろす。
ガンッ!!! バギィィィンッ!!!
雷鳴と爆炎が迸り、衝撃に押されて互いに後退。
しかし一瞬の間すら置かず、ジークフリートが超級魔法を叩き込む。
「超級魔法――」
「超級魔法――」
ロキも即座に応じる。
最初の一撃を押し返し、次の一撃を正面から潰す。
爆発が爆発を呑み込み、衝突が衝突を塗り潰す。
ギャリィィィィィィンッッ!!!!
雷と炎がぶつかり合い、互いの魔力が拮抗する。
――二人の英雄はただ、目の前の敵を屠ることだけを望み、攻撃を重ね続ける。
そんな二人の間に、英雄同士の戦いに誰が入れるだろうか……
魔族 いや
英雄 いや
神 違う
「……」
「……」
【なんだ ジークフリートだけはなかったのか】
フゥ
シュドン!!!!!!!
上空を裂き、隕石のように何かが落ちてきた。
都市の瓦礫を砕き、爆風を撒き散らし、着弾点から放たれる威圧感は、二人の英雄すら一瞬動きを止めるほど。
その中心に立っていたのは――オリオン。
【まぁいい。我の供物は……どっちだ】
ジークフリートは困惑した。
理由は分からないが、学園の生徒オリオンが来た。戦いには巻き込まないと、ここから遠ざける手段を考えていた。
対して、ロキの額に汗がにじむ。
この瞬間、ロキとオリオンは初めて相まみえた。
声も、姿も、何もかも初めて――それでも。
ロキの口角が、不気味に吊り上がる。
なぜなら、自身の聖剣:レーヴァテインが、目の前の男に脈動するように反応していたからだ。
ついに……出会えた……と。
*
ジリ……ジリ……
もう、語らなければならない。
次の話は【この世界の闇】:こうして、第一話となる。




