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第六話 聖都市(セイトシ)

  血に染まった村には、静寂が訪れていた。


 生き残ったのは、若き女性たち。

 魔族の暴虐に晒され、辱めを受け、心を砕かれた者たち。

 彼女たちは、まるで死人のように地に伏し、虚ろな瞳で燃え盛る炎を見つめている。


 オリオンは――赤ん坊に転生してから、わずか半年………

 家族も、村の住人も失った。

 頼れる者は、誰一人としていない。


 だが――オリオンは、感じていた。

 魔族たちを喰らったことで、魔力の器が大きくなったことを。

 わずかに、だが確実に。


 ならば、進むべき道は決まった。


 赤き炎が村を貪り、闇が夜空を覆う。

 転生した場所――故郷とも呼べるこの地を、振り返ることはない。


 オリオンは、その小さな体で、ただ前へと進み始めた。



 聖都市セイトシ――それは、この大陸最大の都市であり、善神の名のもとに築かれた神聖なる都。

 巨大な城壁に囲まれ、六つの聖騎士団が都市の治安を統治し、数百万もの人々が暮らしている。


 その中でも、最も武勇に優れ、信仰厚き騎士として名高い男がいた。

 六つの聖騎士団のうち、一つを率いる団長――


 ジークフリート。


 夜の二時。

 溜まりに溜まっていた書類仕事を終えた彼は、一息ついていた。


「ようやく終わったか……」


 蝋燭の灯りが揺れる執務室。

 そこへ、


 タッタッタッ……! バンッ!


「団長! 至急! 報告すべきことがございます!」


 勢いよく扉が開き、報告書を持った団員が駆け込んでくる。

 ジークフリートは疲れた表情を崩さぬまま、椅子の背にもたれかかった。


「……フラグが立ったか」


「ど、どうされましたか?」


「いや、何でもない。こんな遅くに何用だ?」


「それが――"村"に配属されていた団員と定時連絡が取れず、不審に思い、数名で村へ向かいました。ですが……村は壊滅しておりました。血の痕跡から、魔族に襲われたと推測されます」


 ジークフリートは険しい表情を浮かべる。


------


 村が魔族に襲われたのは午前10時頃。

 村の住民と騎士団員は協力し、何とか応戦。

 しかし、数で押し切られオリオンが村に着いた夜には、すでに壊滅していた。


 ――これが、事の真相である。


------


「それで、生存者は?」


「村の若い女性たち数名です」


 ここでジークフリートは、おかしな点に気づく。


「待て、魔族に襲われた村で、女性だけが生きていたというのか?」


 魔族は人間を襲い、喰らい、弄ぶ。

 生き残った者がいるとすれば、それは巣に持ち帰る食料としてのはず。

 生かして残すなど、今までに例がない。


「……はい」


 報告した騎士も、それがあり得ない事態であることを理解していた。


「お前たちが魔族を討伐し、生存者を救助したのか?」


「いいえ。我々が到着したときには、すでに魔族の姿はなく、死体すら残されていませんでした。ただ、村の至るところに大量の血痕と、何かに喰い散らかされたような跡が残っていました」


「女性たちは、何か話していたか?」


「……いいえ。皆、精神崩壊を起こしており、言葉を発する様子すらありません。現在、治療を受けています」


 ジークフリートは、重く息を吐いた。

 部下を死なせてしまった。

 それだけでも無念だというのに、残されたのは不可解な状況のみ。

 真相は闇に包まれている。


「そうか……ご苦労だった。この件は私が引き継ぐ。お前は休め」


「はっ」


 部下が去るのを見送り、ジークフリートは詳細な報告書を手に取った。

 その内容をじっくりと読み込みながら、眉をひそめる。


「一体、何が起こったというのだ……?」


ーーーーーー

ここまで、お読み下さった読者の皆様、誠に感謝申し上げます。

次の第七話は短い内容になっており、

八話からいよいよ、学園生活が始まります。

自分が大好きな主人公暗躍もの!

スタートです!

これからも、お楽しみ頂けると嬉しいです!

どうぞ、よろしくお願い致します。


次回:第七話 ある噂


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