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第三話 これもまた、能力の【一端】

 この世界には、火・水・木の基本属性がある。

 そこから派生した、氷・雷・土――様々な属性が存在する。

 生物は、この世に生まれる時、必ず一つ以上の属性を与えられる。

 それぞれの属性には、有利、不利が存在し、戦いの中で重要な役割を果たす。


だが――


 アジ・ダハーカは、この世にある全ての属性を宿していた。


 【全属性】


 それすなわち、全属性に対し有利であり、不利が存在しないことを意味する。



 今日は珍しく、女(母親)が不在。

 「少し出かけてくるから、大人しくしていてね♡」――そう言い残して去った。

 もっとも、我が従うはずもないが。


 この家は、村と呼ばれる人間の集落にある。

 周囲に大きな町はなく、山と自然に囲まれていた。

 我は異形たちに大きな窓を開けさせ、庭の芝生と外の景色を一望する。

 人の気配はない。


【さて、始めるか】


 昨夜、魔法の源――“エーテル”を直接取り込み、ようやく魔力の蓋が開いた。

 今日は、自分の魔力(器の大きさ)を確かめる。

 そして、我の【属性】が今も健在かどうかも試すのだ。


 数分間、異形たちが回収した人間の書物に従い、詠唱を試みた。

 だが結果は、いずれも不発。空気はわずかに揺れたが、魔法が顕現することはなかった。


 ……ふむ、理解した。


 どうやら、我の属性は今も変わらず――【全属性】のままらしい。

 それ自体は喜ばしいが、この体では事情が違う。

 人間の体は、”属性”ごとにエーテルを蓄える魔力「器」が一つずつしか存在しない。

 例えば、火・水の二属性の場合、このように魔力「器」が二つ存在する。


  火・水

  [] []

  ↑ ↑

 エーテル


 我は【全属性】のため魔力「器」の数もそれに比例して複数存在する。


  火・水・木・氷・雷

  [] [] [] [] []  


  ↑ ↑ ↑ ↑ ↑

    エーテル


 エーテル「100」取り込んだ場合、二つの属性であれば「50」ずつ溜まる。

 しかし、我は全属性、『20』ずつ、いやそれ以上に分散して溜まってしまう。


 ゆえに、エーテルを取り込んだとしても、一つ一つの器には、魔法を発動させるだけの魔力がなかなか溜まりきらない。

 だから、魔力量が足りず、魔法が放てないのだ。

 それに今は、器が小さいため強力な魔法を放つことなど到底不可能という状態だ。


 竜だった前世では、一つの巨大な魔力「器」に “マナ” が集まり、一挙に放たれる。

 その威力は神をも屠るほど――それが今では、放つことすらできぬ。

 人間の体、なんと不便なことか……。


 そんなことを考えていると――


「カランカラン!!!魔鳥だーーー!!!」


 突然、外が騒がしくなった。


【何だ?急に慌ただしいな……】


 少しだけ窓辺へ移動し、外の様子を窺う。


 ――その瞬間、


「グァァァァァーーー!!!」


 鋭い鳴き声と共に、巨大な翼が広がる。

 突如、強力な爪が我の小さな体を掴み、宙へと舞い上がった。


『オリオン様ーー!!!』


【くっ、魔鳥だと?千年経った今も生きているとは……しつこい奴め。はっ、離せ!】


 そう思った矢先、すでに地上から遥か高く舞い上がっていることに気づく。


【待て……魔鳥は、獲物を高空から落とし、肉を柔らかくしてから喰らう生き物だったはず……】


 忌々しい記憶が蘇る。


【待て、やはり離すな。我はアジ・ダハーカ。命令に従うのが、貴様のためっ】


 だが、その思いも届かず――


 バサッ。


 魔鳥は、容赦なく足を放した。


【離すなと言っておろうがーー!!!】


 ヒューーーーーーーーーーーーーーーー……


 空気が耳元を切り裂く。


 そして――


 グシャッ。

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