表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/74

第二話 夜がうるさい、魔法の世界


 アジ・ダハーカの肉体には、魔虫、魔獣、魔人――

 様々な異形が住んでいる。


 一体ごとに命があり、意思を持つ。

 傷を負うたび、体内から湧き出す。

 それらは全て、アジ・ダハーカに絶対の忠誠。

 その数、無限。


 かつて、アジ・ダハーカと共に、幾多の国を覆い尽くし、


 「そこにある命を すべて 刈り取った」


 ――これは、アジ・ダハーカの能力の【一端】に過ぎない。



 半年が経った。

 我は今も生きている。


 食われるか奴隷にされると思っていたが、男(父親)と女(母親)は、むしろ衣食住を与え、世話をしてくれる。


【……そこまで子とは大事なものか?】


 分からぬ。我は奪ったことしかない。

 我以外の者は全て食料、糧に過ぎない。


 今までそうして生きてきた………。


「オリオン様!」


【……戻ったか】


 人間となった我。

 体は大幅に小さくなり、能力にも変化があると思っていた。

 だが、異形の者たちは「アリ」くらいの大きさとなり、今も我の体内に存在している。

 どういうわけか、我にも分からん。


 この世界について知るため、我は自らの体に傷をつけ、異形たちを密かに解き放ち、情報を集めていた。


 我は常に女(母親)の監視下にある。

 何度か逃げ出そうとしたが、そのたびに察知、捕らえられた。

 だからこそ、探索は異形の者たちに任せていたのだ。


 クモの魔虫がトコトコと近づき、小さな声で報告する。


「どうやら、この水晶石に触れることで、わずかですが“エーテル”を得られるようです!」


 “マナ” は完全に消え去り、代わりに “エーテル” という新たな力が大気に満ちているらしい。


 ――“エーテル” を体内に溜め込み、魔力へと変換して放つ――それが『魔法』。


 しかし、今の我は “エーテル” を感じ取ることすらできない。

 どうやら、魔力という器が閉じたままの状態らしい。


 一度、エーテルを直接感じ取り、その蓋をこじ開ける必要があるようだ。


 魔虫は青く輝く小さな石――水晶石を差し出す。

 我はそれを受け取り、じっと見つめた。


【これが……?】


 ――ビリッ!


 指先から鋭い衝撃が駆け抜け、思わず手を引く。


【ぐっ……な、何だ、これは……?】


 夜の闇に包まれた部屋。

 だが今、かすかに光が満ちている。

 青、緑、紫――微かな光が揺らめき、空間を静かに照らしていた。


【これが、エーテル……なんと、美し――】


「あんっ!」


【………し】


『まだまだいくぞ!そらっ!』


【………い】


「んっ!あなた~!!!」


【はぁ~】


 またこれか。

 夜な夜な、我が眠りにつく時間、つまり今、パンパン!と音と共に叫び声が響くのだ。

 ほとんど毎晩と言っていい。


【人間はナ二をしているのだ?】


 これが我の眠りを妨げる要因。

 この部屋でやらないこと、そして日々、世話になっている故、目を瞑っているのだが……うるさい。


【少しは静かにできんのか?】


 まぁいい。こうも続くと、慣れてしまうものだ。


 ともあれ、魔力という箱に穴が空いた。

 エーテルを感じられるだけで、大きな収穫と言えよう。


「あぁぁぁん~♡」


【主人公が死ぬカウント 1】


ーーーーー

次回:第三話 これもまた、能力の【一端】  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ