第二十八話 クルサの嫉妬❤
第二次試験は無事に終了した。
我はローゼとマイラを保健室へ運び、保健教師に治療を依頼し、屋上へと向かう。
試験は午前中で終わり、午後の授業に備えて昼休みとなった。
我は屋上でクルサの作った弁当を食べていた。
──ギュッ。
弁当を食べ終えるとクルサが我の手を、そっと握ってくる。
学校がある日は、必ず触れ合う──それがクルサとの約束。
クルサが我の女となってから一か月、最初の頃は恥ずかしげに手を繋ぎ、肩を寄せるだけだった。その度に、彼女は心底幸せそうな笑みを浮かべては、他愛のない話をしていた。
──しかし、第二次試験が始まってから様子が変わった。
まず、他愛ない雑談はぱったり消えた。
代わりに、ローゼとマイラの話題ばかり尋ねてくるようになったのだ。
「オリオンは二人のこと、どう思ってるの?」
「……何でさっき廊下を一緒に歩いてたの?」
「どこに行ってたの?二人と一緒だったよね?」
「今日、二人と話した内容を、私に全部話して」
次から次へと尋問のように。
あまりのしつこさに、【もういい。うるさいぞ】と一度は突き放した。
──だが、翌日。
出された弁当の量が、激減していたのだ。
理由を問いただしても、クルサはプイッと顔を背け、冷たく黙り込むばかり……。
【このままでは、弁当そのものが消滅しかねない】
我は強い危機感を抱かざるを得なかった。
以後、クルサの問いかけには、逃げることなくすべて応えるようにしていたのである──。
さらに、触れ合いの方まで影響を及ぼしていた。
「頭撫でてほしい」
「膝枕してほしい」
「匂い嗅がせて」
「全身……チラッ……やっぱり、上半身だけでいいから……触らせて」
以前は手を繋ぎ、肩を貸すだけだった。
だが今は、要求が次々と増えている。
これもまた、クルサの機嫌を損ねぬよう、我はすべて受け入れていた。
──そして、現在。
クルサは手を放し、ひとつ深呼吸をすると、そっと体を寄せてくる。
「んっ」
ムニュ
おっぱいの柔らかな感触が、我の腕に押し当てられた。
クルサは顔を真っ赤に染め、ぎゅっと腕に抱きついている。おっぱいで我の腕を挟み込み、さらに自らの腕も絡めてきた。逃げ道が無くなる。
【どうしたのだ?】
「……他の女の匂いが付いてたから、私の匂いで上書きしているの」
意味が分からん。
ローゼとマイラの匂いなど……あぁ、そういえば保健室に運んだか。あの時に付いたのかもしれん。
それにしても、二人はあまりにもポンコツだったな。
そんなことを考えていると、クルサの腕にギュッと力がこもる。我の腕がさらにおっぱいへと沈む。
「ねぇ今、他の女のこと考えてた?」
クルサは冷たい表情を浮かべ、下からじっと我を見上げる。魔力を帯び、怒っているように感じた。これもまた、正直に答えた方がいいと本能が訴えかけてくる。
【あぁ、ローゼとマイラについてだ】
「へぇー、ふぅーん。私の前で、他の女のこと考えてたんだ」
【少しな】
「何を考えていたのか教えて」
【試験のことだ。二人があまりにも弱くてな。失望していたのだ】
すると、クルサの周囲に漂っていた魔力の波動が、ふっと消えた。
代わりに、ポカンとした顔でこちらを見つめてくる。
「しっ、失望? 二人のことが嫌いになったの?」
【嫌い……。そうだな、あまり関わりたくはない】
こう言っているが、あの二人は素質がある。今は弱いが、これから強くなるかもしれない。それに嫌いになったという訳でもない。
しかし、クルサはあの二人のこと、いや、他の女性の話を持ち込まれる事自体が嫌なのであろう。
よく分からないが、とにかくクルサの機嫌を損ねないために「我は二人と仲が良くない」と思わせる必要があると判断した。
全ては弁当のため。
「そ、そうなんだ。じゃあ、私の方が好きってこと?」
好き……未だに好意、人間が持つ恋愛感情というものが分からんが、どちらかと言われたら……。
【それはもちろんクルサだ】
「ほっ本当?」
【クルサに嘘はつかん。約束だからな】
でないと、お弁当が無くなる。
「そっそっか……。そうだよね。良かった〜」
クルサは、先ほどの冷たい表情が嘘のように消え失せ、満面の笑みを咲かせた。
そして、そのまま話題を切り替える。
「オリオン……私、試験、合格できたよ」
クルサも無事合格したのか。
まあ、我が鍛え、あれほど鍛錬を重ねさせたのだ。当然の結果だな。
【良かったではないか】
「オリオンが、鍛えてくれたから」
【その通りだ。感謝するがいい】
「だから……お礼、させてほしいの」
お礼を求めていたわけではないが、断る理由もない。
クルサは立ち上がり「立って」と言ってきた。我は命令に従い、膝に手を乗せて立ち上がる。
その瞬間、クルサは自らの両腕を大きく広げた。
「ハグ……させてあげる」
【ハグ?何だそれは、新しい魔法か?】
「違う。ただ、抱き合うだけ……言わせないでよ……バカ」
クルサは少し恥ずかしそうに笑いながら、両手を広げたまま、じっと我を待っている。
「んっ」
我は小さく首を傾げた。
抱き合うだけ?それに何の意味がある?それが、我に対するお礼だと言うのか?そんなことよりも、お弁当の量を増やしてくれた方が、我は嬉しいのだか……。
「んーんっ!」
クルサは、両腕を縦に小刻みに揺らしてせかしてくる。
だが、我は何も動かない。何をすればよいか分からんからだ。それに、間違った行動をすれば、また飛ばさせる可能性もある。
「もっ、もう!」
堪えきれなくなったクルサが、勢いよく飛び込んできた。
ギュ――――ッ!
「ぬうっ……!?」
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次回:第24話 初めてのマーキング:燃えるエチチ獣「クルサ」❤️




