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第二十七話 竜の舞……踊り狂う第二次試験【絶感葬送(アブソリュート・レクイエム)】

 同時刻:ローゼ(オリオン)対 Cクラスの女。


 【】オリオンが喋ってます。  「」ローゼが心の中で思っています。


【さぁ、ショータイムだ。初級魔法「火球」……初級魔法「炎陣」】

「なっ、なにこれ!体が、勝手に──痛ッ、痛いッ!っていうか口が勝手に恥ずかしいこと言ってるんですけどー!」


 人間は、痛みによって“ブレーキ”をかける。

 脳が「限界」を察知すれば、筋肉を緩め、戦闘を中断させる。

 全身に傷。右腕の骨にはヒビが入り、出血も止まらない。痛みは波のように全身を駆け巡る。普通なら──いや、普通でなくとも、体はとっくに悲鳴を上げ、動きを止めるはずだった。


 だが、今のローゼに“その機能”はない。


 制御権は彼女のものではなく、オリオンに握られているからだ。どれだけ本人が痛かろうと関係ない。彼は、ローゼの肉体をあたかも“自身の四肢”のように扱う。逃げるという作戦は消え、戦いを楽しむために真っ向勝負。

 今出せるローゼの限界を最大まで引き出そうとしていた。


 ローゼの体が、演舞のような流れる動作を見せる。

 左足を引き、両腕を上から下へと弧を描く──


 ボッ、ボッ、ボッ、ボッ。


 周囲に、淡く燃え盛る火球が十数発、浮かび上がった。

 左手を右肘に添え、右手の指を前に差し出す──


 パチン


 音と同時に、「火球」たちが弾丸のような速度で撃ち出される。


 ババババババババババババッ──!


《中級魔法:土壌壁》


 相手の女は咄嗟に詠唱し、自身の目の前に土を盛り上げ壁を作る。「火球」は壁に次々とぶつかり、激しい爆発音と共に弾き返される。

 だが──それだけでは終わらない。

 左右、さらには後方からも回り込むように「火球」が迫る。

 女はすかさずジャンプで回避する。宙を舞う間、素早く詠唱。


《中級魔法:岩石弾》


 三発撃った。ローゼは「火球」にて弾の軌道をずらす。破片が降り注ぐ中、ローゼの華奢な体が、滑るように回避行動を取った。


 その動きはまるで、舞うように軽やかで──


 ボイン……。


 わずかに揺れる双丘が、動きのたびに主張する。


【ふむ、おっぱいが重たいな。まぁいいハンデだ。初級魔法「炎槍」】

「痛たぁぁーーー!!!えっ?何、さっきの火球の威力……私、あんな火力出せないんだけど!?」


 ボォォォン  ヒャリン  バン


 ローゼの頭上に大きな炎の槍が出現し、すぐさま放たれる。空中にいた女は自身の足元に岩を生成し、反対方向へとジャンプする。炎槍は岩を貫き、奥へと飛ぶが……。


【戻れ、炎槍】

「デッカ!炎槍デッカ!」


 槍は向きを変え、再び女へと向かう。「岩石弾」をぶつけられ軌道が逸れるが、足に掠れ血を流す。女は地上に着地するが、痛がっている様子はない。これもあの、紋章の強化魔法のせいかとオリオンは睨みを効かせた。

 ローゼは炎槍へと飛び移り、サーフボードのように巧みに乗りこなす。

 女の頭上を高速で旋回しながら、右腕を前に突き出し、詠唱を紡ぐ。


【もう完成するか。よし。「火球」】

「だから痛いって!!!……ん?なんか、地面に私の魔力が(円陣)を描いているんだけど」


 バババババババババババババババ  ヒャリン  シュン バン!


 ローゼは飛び回りながら、火球を放ち続け、最後には炎槍を飛ばし地面に着地した。

 だが、全ての攻撃はドーム状の岩で防がれていた。それを見たローゼ(オリオン)は、むしろ満足そうに笑みを浮かべた。


【仕上げだ。「炎陣」展開】


 右腕を高々と掲げると──

 ローゼと女の周囲に、轟音とともに巨大な火柱が立ち上がった。

 炎は結界の天井まで達し、四方を壁のように塞ぎ、まさに逃げ場なき炎獄を作り上げる。


【ローゼ、その身に焼き付けよ。これが貴様の最高地点だ】


 すべては、女の魔力を削ぎ、初級魔法「炎陣」で包囲するための布石。

 確実に、致命の一撃を放つために。


 ローゼは、全身の魔力を右手に集約する。

 女の正面へと右腕を向け、膨れ上がる炎弾を、限界まで肥大化させた。


【中級魔法:「爆炎弾」】


 ──シュドンッ!!!


 轟く音と共に、巨大な爆炎弾が発射される。


 女も即座に《中級魔法:土壌壁》を発動。三枚の厚い土壁を展開して防ごうとするが──


 ──バンッ! バンッ!! バンッ!!!


 容赦なく、「爆炎弾」はそれらを粉砕した。


 そして──直撃。


 爆音と灼熱の衝撃波が結界内を吹き荒らす。


 女は何も防げず、吹き飛ばされ、地面に激しく叩きつけられた。

 燃えた空気が揺らめき、倒れ伏す女の周囲には、瓦礫と煙しか残っていなかった。


……………………………………………


 同時刻:マイラ(オリオン)対 C クラス女。


 マイラ(オリオン)は思わず下を見る。Gカップ、見事なまでに大きな谷間。両手で下から持ち上げ重さを確かめる。


 ボン~ボン~。


【ふむ。重すぎる。これでは走れんな】

『うん。体が勝手に胸を触ったね。私の意思じゃない。お人形さんになった気分。すごく痛い。そしてエッチ』


 マイラは地上戦を諦めて跳躍する。

 踏み込んだ足裏には、一瞬で風が渦を巻いた。

 それを利用し、まるで重力を無視するかのように空中へと舞い上がる。


【初級魔法:「風刃」】

「うぅ」


 ──ビュオンッ!!


 空中からマイラは腕を振る。すると、その直線状に見えない風の刃が放たれる。地面がえぐれ、飛び散る土砂。

 女はとっさに雷の盾を展開する。


【やはり、マイラの素質は悪くない】

「うん。腕を振らないでほしいかな。痛いから」


 マイラは何度も、何度も、腕を振り続けた。

 鋭く、しかも高速。視認も困難な無数の風刃が、一斉に女を襲う。


 ──ズババババババババッ!!!


 五秒も経たないうちに、雷盾には無数の亀裂が走った。

 女は歯を食いしばり、すぐに新たな詠唱を紡ぐ。


《中級魔法:雷鎧》


 詠唱と同時に、彼女の全身が紫電を纏う。

 顔以外、すべてが雷の鎧と化し、襲いかかる風刃を軽々と弾き返した。


《中級魔法:雷弓》


 ──ゴオオオオオッ!! 


 雷光が収束し、巨大な雷弓が女の手に現れる。

 そして、弦が弾かれた瞬間──鋭く、光よりも速い雷矢が放たれた。


【速いな。……おっぱい(体重)を利用するとしよう】

「うん。すごくエッチ」


 マイラは空中で仰向けに転がり、風魔法を一時解除する。

 重力に引かれ、一気に下方へと落下。

 雷の矢は、おっぱいの谷間──ほんの数センチ上を掠めて通り過ぎた。


 だが、次弾がすぐに飛んでくる。

 落下するマイラの周囲に、幾重にも雷矢が迫る。


 ──ビュオンッ!ビュオンッ!!


 マイラは足裏に再び風を集め、推進力を得る。

 風を纏い、障害物を器用に利用しながら、雷矢をすり抜けた。

 右手を顎に当て、考える素振りをしながら、自分のおっぱいを見続ける。


【あの防御力は厄介そうだな。初級魔法だけの突破は無理か……直接喰らわるとしよう】

『風が傷に染みる……痛い……あと、いちいち胸を見ないでほしいかも』


 ニヤリと笑みを浮かべ軽やかに、宙を舞う。

 雷矢が髪を掠め、服を裂く。それでも、マイラの身体にかすり傷一つつかない。

 気づけば、女の真上の空中に立っていた。


【マイラ、敵に情けなどいらぬ。全力を叩き込む快感を教えてやる──中級魔法:双竜巻】


 マイラは両手を左右に大きく広げ、周囲の風を掻き集めた。

 一瞬にして、巨大な竜巻が左右に二本、地を揺らして立ち上る。


 ──ゴゴゴゴゴゴゴ!!!


 双竜巻は轟音を響かせながら、女へと襲いかかった。

 左右から挟み込むように迫り、女を囲い込み、ついには渦の中へと閉じ込める。


《雷魔法:雷障壁》


 女もすかさず防御を展開する。

 しかし、双竜巻の暴力的な風圧は雷障壁すら軋ませ、音を立てさせる。


【中級魔法:暴風斬】


 マイラはすかさず右手に魔力を集中させた。自身の拳に風の刃を纏わせる。


 竜巻の中心──そのぽっかり空いた穴めがけ、マイラは風の推進力を爆発させた。

 空気を切り裂きながら、一気に真下へ急降下。


 ──シュゴォォォォッ!!!


 女は即座に両腕を交差させ、雷鎧を厚く纏い、真っ向から迎え撃つ構えを取った。


 マイラ(オリオン)は一切迷わない。

 そのまま、拳に纏った暴風斬を──女の鎧へ、全力で叩き込んだ。


 ──ドガァンッ!!!


 衝撃が空気を爆ぜさせ、雷鎧に深々と亀裂が走る。

 直後、烈風が女の身体を包み、激しい爆音と共に鎧を吹き飛ばす。


 次の瞬間、女は耐えきれなくなり、地面に激しく叩きつけられた。


 ──ズドォォォォン!!!


 結界が震え、砂煙が立ち上る。

 風と雷がせめぎ合う中、マイラは空中で一回転しながら軽やかに着地した。


 土煙の中から、女がよろめきながら立ち上がろうとする──が、力尽きてその場に膝をついた。


……………………………………


 同時刻:オリオン(アジ・ダハーカ)対 C クラス男。


 二人を操りながら激しい戦闘を繰り広げる中、オリオンはというと──あえてギリギリの演技を続けていた。

 相手はCクラス、格上。だが、勝つこと自体は当然。問題は「"どう勝つか"」だった。


 目立ちすぎず、しかし「"死力を尽くして勝った"」と周囲に思わせるため──

 オリオンは意図的に損傷を重ね、骨を数本折りながら戦っていた。


 今や、全身は傷だらけ。呼吸ひとつ動かすたびに、軋む痛みが走る。


【──そろそろ頃合いだな。あの二人の戦いも終わりかけている……】


 オリオン(アジ・ダハーカ)は左手で中級魔法「爆炎弾」を放った。

 相手の男は、すかさず中級魔法を詠唱し、その火球ごとオリオンを吹き飛ばそうとしてくる。


【ちょうどいい……こちらも、幕を引くとしよう】


 男を正面に捉え──右手を前へと突き出す。

 掌を開き、獲物を掌握するかのように──そして、奪い取るように、指を一気に握り締めた。


 *バレない程度に……少し……本気を出すか*


……


【< 竜魔法:絶感葬送アブソリュート・レクイエム >】


……


 ゾン



 ドォン



 シーーーーーーーーン。


 【男の五感すべてが、闇に沈む】。

 視界が塗り潰され、肌は何も感じず、鼻も口も、生きている実感すら失った。


 ──シュウゥゥゥゥゥン


 最後に聞こえた音は、自らの感覚が喰らい尽くされる、かすかな「吸い込まれる音」。


 次の瞬間、男は、もはや詠唱すらできず──


 爆炎弾の直撃を、その身に受けた。


 ──ドガァンッ!!


 地面に叩きつけられ、男は動かなくなった。

 あくまで外から見れば、オリオンが必死に耐え続け、相手の魔力を消耗させ、最後に隙を突いて勝利をもぎ取ったようにしか見えない。

 それ以外の解釈は、誰にもできなかった。


 試験官たちもまた──判定を下すしかなかった。


 ──勝者、オリオン。


 全試合が終了し、オリオンたちの勝利の文字が浮かび上がる。その直後、魔法を解いた。


「何が──」


『起きて──』


 バタンッ。


 ローゼとマイラが、ほぼ同時に地面へと倒れ伏す。全身の疲れが急に襲い、魔力切れを起こしたせいだ。


 【よく耐えた。今は……ゆっくりと眠るがいい】


 オリオンは静かに、誰にも聞こえない声でそう告げた。



 ・・・


 ありゃ、やっぱりA、Bクラスの生徒は強いねぇ~。でも、収穫はあったかな。

 この強化魔法を使えば、A、Bクラスとも互角に渡り合える。

 もう少し鍛えれば──超えることも、できなくはないかもね~。


 他のクラスでも、何人かは負けちゃった。

 やっぱり「アルバート」君がいないのは大きいなぁ……。


 何より気になるのは──Gクラスの何人かが、強化人間に勝ったってこと。

 それに、あんな強力な「弱体化魔法」を仕掛けた奴が、この学校にいるってこと。


 正直、舐めてたなぁ~。全員分解除するのにめちゃくちゃ時間かかっちゃったのが今回は大きい。予定が狂った。


 強そう……男じゃないといいな。

 でないと──殺しちゃうかも。


 ・・・



 第二次試験合格チーム。


 A、Bクラス全チーム。

 C、D、Eクラス4チーム。

 Fクラス2チーム。

 Gクラス3チーム(オリオンのチームを含む)。


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