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第二十五話 破壊の残骸

 場所は、学園の敷地内にある広大な大広場。

 そこには、魔力によって構築された結界付きの決闘場が、いくつも設置されている。


 前日に対戦相手のチームが発表され、我らのチームは【F→E→Cクラス】の順で戦うことが決まっていた。

 三つの決闘ステージが横一列に並び、我々はそれぞれの結界内へと足を踏み入れる。


 対戦相手も反対側からステージへと入場すると、上空に浮かび上がるようにデジタルタイマーが出現し、試合開始のカウントダウンが始まった。

 我が立つのは中央のステージ。右隣ではローゼが、左隣ではマイラが、それぞれの戦いを開始した。



”第一試合” Fクラス


 ビッドン ビッドン ビッドン


 ローゼとマイラは、開始早々に自身へ強化魔法を付与し、障害物を使いながら立ち回っていた。とはいえ、ステージはそう広くはない。当然、敵の魔法が飛んでくる。


 その都度、初級魔法で相殺しつつ、時間稼ぎ──。作戦通りだ。これを繰り返していけば、逃げ切ることも可能だろう。


 だが、やや不安なのはマイラの方だ。元々身体能力に難ありの彼女は、少々余計なダメージを受けすぎているように見えた。

 

 ──しかし、それもすぐに杞憂となる。


【母性おっぱい、貴様……回復魔法が使えたのか】


 マイラの傷はすべて癒え、彼女は風魔法を巧みに使って空中を滑るように避け続けていた。ただし──服の方は癒せなかったらしい。服の所々が破けている。特に目立つのは、ローゼより、あのクルサよりも”大きいおっぱいの谷間”が見えていることだ。谷間から上の服はもうないに等しい。


 対戦相手は赤髪キノコ頭の男……あやつ、鼻血を出しながら戦って居る……が……あっ倒れたな。


 ステージ上空に「マイラwin」という文字が浮かび上がった。


 まさか、“おっぱい”という色気兵器で相手の理性を崩壊させ、鼻血による戦闘不能で勝利を収めるとは……さすがGカップ。Gクラスの意地、見せつけたな。──見事だ。


 ビッドン ビッドン ビッドン


 我はローゼの試合を観戦するため、視線を左から右へとずらすと、そのタイミングで正面から魔法が飛んできた。


 ビッドン ビッドン ビッドン


 だが、我は気にすることなく右隣りへと顔を向け、ローゼの試合を観戦する。


「コノッコノッコノッーー!!!」


 我の対戦相手は、先ほどから無数の初級魔法「雷光弾」を放っている。

 しかし、我の強固な体には傷一つ付かない。


「何で倒れない!こっち向けよクソが!!!」


 怒りに任せて、対戦相手は初級魔法《雷槍》を五発同時に叩き込む。先ほどよりも 威力は増していたが──やはり、我が肉体には傷一つつかぬ。


 ……ふむ、どうやらこれが奴の本気か。


 対戦相手は雄叫びを上げながら、ひたすら魔法を撃ち続けておったが──我はそんな努力に対し、ただ失望しつつローゼの試合観戦を再開。そしてそれすら終わると、静かにその場へ胡坐をかき、瞼を閉じた。


 ──そして時間が過ぎ、魔力判定により我の勝利が告げられた。

 ローゼも無事に時間を逃げ切り、我らは一勝をもぎ取った。



”第二試合” Eクラス。


 我の前に立つのは、ツルツルと光り輝く頭を持つ「ハゲ男」。太陽の光を見事に反射させながら、傲然とこちらを指差してきた。


「おいお前、魔力が60しかないそうだな」


 ほぉ、合っているな。第一次試験の合格者、それだけしか他のクラスには知られていないはず、なぜ我の成績が流出している……。

 我の成績を知っているのは、クルサ、ローゼ、マイラの三人だけ。……誰かが漏らしたのか? いや、この男に聞いたところで、答えるはずもあるまい。

 それに、成績など──正直、どうでもよい。


【そうかもしれんな】


「これは確かな情報だ。そして僕の魔力は75。君はGクラス、僕はEクラス。最初から勝負は付いていると思わないかい?」


【一ミリも思わん。戦ってみなければ分からぬぞ】


「ふん、自信だけはあるようだね。だが、その魔力ではせいぜい初級、中級魔法を数発撃てる程度だろ? 威力もたかが知れてる。僕は中級魔法でも、上位に近いクラスの魔法が使えるんだ。……棄権してくれれば、手間が省けるんだけどな」


 確かにこやつの魔力は我よりも大きい、魔力測定の結果も確かだ。クラスもEクラスと我よりも二つ上。

 だからどうした?……そんなもの、人間の価値基準に過ぎぬ。

 我は……竜である。


【ほぉ、我に自分から負けろと申すか。いい度胸だ。ならば……】


 ……その初級魔法一つで相手をしてやろう……


 ボッ   ボッボッボッボッ   シュワン


 我は人差し指に火属性の魔力を集中させ、正面に円を描く。

 その軌跡をなぞるように火が走り、やがて輪となって燃え上がった。

 火は外周だけでなく、内側にも一瞬で広がり、均一に燃える“火の円”が完成した。


 我は火円を前に、左に体を向けた。左手はポケットに突っ込み、右手の指先だけを円に向ける──


「なっ何だ、それは」


【貴様が侮っている初級魔法の応用だ。存分に味わうといい】


 右手の人差し指を火円へ“ツン”と押し込む。

 その瞬間──


 バシュッ!! ドン!!


 火球が放たれた。目にも留まらぬ速度で一直線に走り、ハゲ男の肩に命中する。


「ぐっ……! か、火球……!? これが……!? 馬鹿なッ!!」


【どんどん行くぞ】


 ツンツツツツツツツツツツ


 我は次々と火円を押し、連続して火球を射出する。

 一発、また一発。射出速度は加速し、火球はまるで機関砲のように相手へと襲いかかる。


 驚愕したハゲ男は、咄嗟に両手を前に出して叫ぶように基本防御魔法を展開する。


「バ、バリア!!」


 ボン、ボンバンババババババッ!!


 火球の連撃がバリアに炸裂する。

 防御魔法が辛うじて攻撃を弾くが、その衝撃に追いつけず、表面は次第にひび割れていく。


「くっ……こんな、初級魔法で……!!」


 ハゲ男は反撃の詠唱すらできず、防御に徹することしかできない。

 だが、それも限界だった。


 パキィィン……ッ!!


 甲高い音と共に、バリアが砕け散る。その直後──


 ズドン、ズドドドドドッ!!


 無数の火球が容赦なく彼の全身に直撃した。


「がぁああああああああああッッ!!」


 絶叫を上げ、彼は膝をつき、そのまま前のめりに地面へと崩れ落ちた。


 ──静寂。


 そして次の瞬間、上空に「オリオンwin」の文字が浮かび上がった。

 時間が経過し、二人もEクラスの生徒から逃げ切ることに成功し、勝利を収めた。これで二勝だ。あと、一勝のところまで迫っていた。


「やったやった!Eクラスの奴に勝ったー!!!」


『うんうん。信じられないけれど、逃げ切れた』


 二人は嬉しそうに向き合い、両手を合わせて軽くジャンプをする。

 けれど、その笑顔は長くは続かなかった。ふとした瞬間、どちらからともなく*違和感*を口にする。


「でもさ、マイラ。私、気になることがあるんだけど」


『うん。実は私も』


「*なんか」


『魔力、減ってないよね*』


 二人の視線が、休憩スペースで涼しい顔をしている我に向けられる。


【良かったではないか。さあ、次の試合だ。気を抜くなよ、このポンコツおっぱい共】


「あっ!また言ったー!アンタまた“おっぱい”って言ったぁー!!」


『うん。……エッチ』


 我はその抗議を軽く受け流し、両手をポケットに突っ込んだまま、ゆっくりと決戦場へと歩き出す。



”第三試合” Cクラス。


 我、ローゼ、マイラは結界内へと入った。

 これから最大の難関、Cクラスとの対決である。


………………………………………


 話は我が【破壊した第一次試験】に遡る。


 第一次試験が始まってから20分、Cクラスの計画を知った我は異形たちをまき散らし、ベルゼブブを解き放った。


 目的は二つ。


 *Cクラスの計画を阻止すること*

 そして最大の目的は──


 *Cクラス全員の戦闘データを手に入れることだった*


 今後、どのような形式の試験が待ち受けているかは分からぬ。

 だからこそ、他クラスとの戦いも視野に入れた。その時、情報こそが“何よりの武器”となると我は考えた。


 その第一歩として、我はCクラスの作戦を打ち砕きつつ、その全員の戦闘データを徹底的に収集することに注力した。


 我の体内に宿る異形たちは無限。

 一部はCクラスの者たちと交戦し、他の異形たちは戦闘の監視に回す。

 そして、特に実力の高い者が現れた場合は──ベルゼブブがその相手を引き受け、力を見極める。


 監視を担った異形たちの報告と、実際に交戦した異形たちの記録──

 ”魔法の種類、属性の傾向、戦闘の癖、思考のパターン”に至るまで。

 我はCクラス全員(一人を除く)の戦闘能力を把握することに成功した。


 異形たち、そしてベルゼブブに「殺すな」と命じたのは、このためだ。

 これから先の試験において、Cクラスとの戦いが発生したとき、圧倒的優位な状況から戦闘を始めるため──

 “勝ち続ける”ために、彼らの命は最大限に活用させてもらう。


……………………………………


 そう、もしローゼとマイラの実力がクルサと同じくらいだった場合、我が集めた対戦相手(Cクラス)の情報を教えさえすれば、真っ向勝負でも十分勝てる可能性はあった。

 だが、ローゼとマイラは我の予想よりも下。

 故に、10分間逃げるという誰でも考えそうな作戦を取ったが、それでも相手はCクラス。格上だ。逃げ切ることは、おそらく不可能だろう。


 だから今回、手を打った。


 前日、対戦相手であるCクラスの二人には──

 この瞬間に発動するよう、時限式の「大幅な弱体化魔法」を密かに仕込んでおいた。


 同時に、ローゼとマイラには、我の魔力を込めた“水”を与えていた。

 それを体内に取り込んだことで、二人の魔力の器は一時的に拡張。

 周囲から吸収するエーテルの量も増大し、

 結果、普段と同じ魔法を使っても、魔力がまったく減っていないかのような錯覚を得られるまでに至った。


 ──敵を弱体化させ、味方を強化する。

 逃げ続けるだけで、魔力差によって勝てるように仕立てた。それが我の策だ。


 さて、残り一勝。我は目の前の敵と、少しばかり“遊ぶ”としよう。



 ・・・


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 ・・・

 

ーーーーーーー

次回:第21話 竜の怒り


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