第二十二話 『ファフニール』を殺した男:竜殺しの英雄【ジークフリート】
千年前、「善の神々」と『悪の神々』による大きな戦い(アルマゲドン)があった。
結果として「善神」たちが勝利を収めたが、その代償は大きく、力を使い果たした彼らは各地へと散り、やがて【石】となって眠りについた。
人間たちは世界を救ってくれた「善神」たちを敬い、その【石】を神聖なものとして祀り、再び目覚める時まで守り続けることを誓った。
現在、ここ聖霊都市にも三つの【石】が存在する。
都市中心部にある大聖堂、その地下最下層――誰も立ち入ることを許されぬ聖域において、それは厳かに安置されている。そしてその守護を担うのが、聖霊都市の象徴たる六つの騎士団である。
騎士団はそれぞれ異なる使命を持ち、【石】を守り、人々を守り、都市を守り続けてきた。その圧倒的な実力と気高き誇りは多くの者の憧れの的であり、特に若者にとって騎士団入りは最大の夢とされている。
*
入学してから一週間が経った頃、学校にいる人間のほとんどが騎士団に入団するため、この学校に入学したという情報を得た。
その入団試験を受けるためには、一定以上の学力を修め、試験に合格し、実績を積み、上位クラスという肩書きを手に入れる必要があるらしい。
我は知識を得るため、更なる力をつけるために入学した身。騎士団など端から興味はなく、試験に合格することにも一切の関心を抱いていなかった。ただの娯楽として試験を楽しむつもりだったのだ。
しかし、ある授業にて、我の考えが変わった。
…………
授業の題材は――今から二十年前、聖霊都市を突然襲った猛毒竜『ファフニール』についてだった。
鋼の如き鱗を持ち、猛毒の息を吐くその竜は、都市の守りである光の結界を易々と突破し、たった一瞬で都市の三分の一を毒の海へと変え、多くの人間を死に追いやった。
そんな惨状の中で竜の前に立ち塞がった一人の男がいた。名は【ジークフリート】。
彼は一本の剣と多彩な魔法をもって、『ファフニール』を討ち果たしたという。 わずか16歳にして竜を殺し、最年少で騎士団長となり、今なお都市を守る英雄として君臨している。ここまでが話の内容。
この『ファフニール』は我の血がつながった眷属であり、千年前の(アルマゲドン)で共と戦った後輩だった。とはいえ、愛想も悪く、さして親しい仲でもなかったため、生きていようが死んでいようが、正直どうでもいい。
その話を聞いて、興味をそそったのは、我が強者と認めたあの『ファフニール』を殺したと言われている「ジークフリート」の方だ。一体どれほどの強さなのか、我を屠ることができるのかと、かなり気になった。
*【一対一で殺し合いをしたいものだ】*
その考えがふと、脳裏に浮かんだ。
*我はこの学園で試験をこなし、実績を積みながら鍛錬を重ね、やがて入団試験とやらを受け、ジークフリートの騎士団に入団する。そして、奴と一対一で殺し合う機会を得るのだ。*
これが*楽しみ*となった。
もちろん、最終目標は変わらぬ。いずれ竜の姿へと戻り、世界を破壊する。それは揺るがぬ意思だ。だが、その過程において、我が実力を確かめる意味でも、この男との戦いは必要だと感じた。封印を避けるためにも、我が“力”を把握しておく必要がある。
我は、この*楽しみ*のため、試験に真剣に取り組むことを決意した。騎士団へ入団するために。
結果、第一次試験に見事合格。
第二次試験を待ち望んでいた。
………………
クルサの家で一晩を過ごしたあの日から、一か月が経過していた。もう六月である。
我はクルサに魔法を教え、クルサは我を支える――その関係は変わらず続いていた。互いの存在を秘密にしながら、周囲に悟られぬよう、慎重に学園生活を送ってきた。
そんな中、第二次試験が目前に迫っていた。実施までは、あと一週間。
その日の授業、我に説教を垂れたあの筋肉ダルマ教師――【ハルク】が教卓の前に立ち、いつもの大きな声で試験内容を告げる。
第二次試験
【ルール】
① 三対三のチーム戦。一対一の試合方式。
② 合格条件:合計三チームに勝利すること。
③ 勝利条件:制限時間内に相手を戦闘不能にする。決まらなかった場合は残りの魔力量の大きさで決まる。二回試合に勝ったチームが勝者。
④ 制限時間:各試合ごとに10分。
【禁止事項】
・殺害、および致命傷を負わせること。
試験会場は、学園近郊に展開された結界空間。障害物あり。
戦場の地形や天候、視界条件は、試合ごとにランダムで変化する。
そしてその日、チーム編成のための“くじ引き”が行われた。
結果、我は【マイラ】という女と、【ローゼ】という女と同じチームとなった。
その瞬間、隣にいたクルサの目が、なぜか不自然なまでに光っていた……。
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次回:第二十三話 チーム戦に大苦戦!巨乳女子二人に困る「アジ・ダハーカ」




