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プロローグ

そんなに長い話ではないです

 たぶん過労死した。


 徹夜明けでフラフラになりながら電車に乗って倒れるように帰宅し、それでも意地のように缶ビールを開けて呷ったところまでは覚えている。

 気が付けば殺風景な会議室のような場所で、ピシッとしたスーツを着た女性の前に座っていた。なんというか、就活の面接みたいな雰囲気だ。


「ここは?」


 尋ねるとスーツの女性が答えてくれる。


「ここは冥府、閻魔局過労死部門の面談室だ。これから君の処遇について相談する」


 帰ってきた答えはよくわからないものだったが。


「どういうことですか」

「これからいくつか君に質問する。君はそれにこたえるだけでいい」


 うわー、すごいビジネスライクだ。冷たい。


「お前は死んだ」

「あ、ッス」


 そうなのか。本当か?夢じゃない?大丈夫?


「どう考えるのも君の勝手だがこれは事実だ。これから君が次に行く世界を決める。何か希望はあるかね?」


 希望。

 転生先を選ばせてくれるというのか。ありがたい?

 できれば過労死はもういやだ。マジでここ何日かは死ぬほどキツかった。いや、死んだんだっけか。しばらく何も考えたくない。クラゲとかになったら何も考えなくてもいいのかな?


「クラゲでよいか?」

「あ、まって。待ってください。ちゃんと考えますから!」


 危ない。うっかりクラゲになる所だった。まさか思考を読まれているとは。


 しかし転生先?こういうの、アニメとかだと剣と魔法のナーロッパ世界に転生して現代知識で大儲けでハーレム構築、みたいなのが定番だよね。そんなのを選べるということなのかな?


「またか。お前らはそんなのばっかりだな。記憶を引き継げるような方法で移動するとなるとかなり移動先は制限されるぞ」


 その答えはつまり


「可能であると?」

「不可能ではない」

「であれば、魔法がある世界に、記憶をもって行きたいです!魔法は必須!!絶対!」


 つい熱弁してしまった。魔法、憧れるじゃないか。ほら、念の修行と化したことあるだろ、お前も。お前って誰だよ。


「わかった。他に望みはあるか?」


「チート能力も欲しいです」


 告げると、面接官の女性ははあ、とため息を吐いた。


「そういうのが流行っているのは知っているが、大した徳も積んでいないお前にそんなことできるわけないだろう。すぐに死なない程度には整えてやるからそれで我慢しろ」

「冷たい」

「そう感じるのであれば来世では徳を積むがよい」

「はー、わかりました。頑張ります」


「面接は以上だ。君の希望に沿った場所を斡旋しよう。右の扉を進みたまえ」


 面接官の女性は手元の紙に何かを書き込むとハンコをついて脇の籠に投入した。


「はい、ありがとうございます」


 こうして俺は若干の不完全燃焼を感じながらも、転生することになったのだった。来世では徳をためるぞー!現代知識で異世界無双だー!



 頑張るぞー!

 おー!


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