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再起する黎明、ニコ

 ぱちんと目が覚めました。手探りで時計を探しまして、現在時刻は夜の2時。

 こういう時って案外寝ぼけないもので、私は素早く行動を開始します…現在地は山小屋、元々纏めてあった荷物をひっつかんで出発です。今だ明かりのついている宿の軒先を通り過ぎ、暗く暗い道に出ます。名残惜しいような気がしましたが、よく考えれば帰りにも寄るので問題なしってことで。


 さあ、いよいよ旅も佳境に入ります。何と言ってもこの山の頂上で日の出を見るってのが今回の目標ですからね、力みの少しもありましょう。

 それに何も私だけじゃないみたいです。下を見て驚きました、驚くべき数のヘッドライトが蠢く様、まさに都会の街頭のよう。日の出を見たい仲間が沢山です。


 こと今に関しては混雑はいいこと、何せ迷いませんから。前の背中を追って林を抜けていきます。

 木の根と石のコラボレーション、でこぼこと複雑な道。踏める所をライトで探し、きっちり踏み抜いていきましょう。

 歩きにくい場所ですが夜ならではの楽しみもあって、それがこの「レク質石」、足場になる石のいくつかがこれでして、踏む圧力でぼんやり青白く光ります。昼だと光が見えないんですよ。


 山小屋を出てから1時間ほどで林を出て、これ以降は木が全く無くなります。段々と寒くなり風も吹いています、吹き付ける空気が美味しいとはいえ夜中、そんなこと言ってられません。塩飴と乾パン・エネルギーで耐えます。羊の獣人であることが最も役に立った瞬間です。

 ここからは石、石、石。殺風景ですから登り続ける意思が必要です。既に頂上が遠くに見えていますが、勝利を目前にした時ほど注意が必要。一歩ずつ、一歩ずつ。


 まるで足が木の棒のよう、機械仕掛けの人形みたいに動かします。思えば長かった……と今までの自分を振り返ろうとしますが大した走馬灯がありません。

 だって私あんま羊生経験ないですから。ここはむしろ逆説的に考えましょう。




 何でも無いように話してると思ってますね?

 いや私だってめちゃんこ疲れていますよ。体だけじゃない、簡単には辿り着けない場所に1人で来てしまったとひしひしと感じております。

 けどね、けどね。今私には凄く自信がある、絶対に登れるって思ってますとも。

 そして自信はもう1つ! 今日の事、私は一生誇りに思うだろうって自信です!

 

 皆様方には見えますか、この景色。

 鳥の声も木の騒めきも無い、あるのは足音と自分の息づかい、そして吹き付ける風。

 最後は階段のように石が積み重なっています。今までと同じように1段、1段……


 これにて、登頂完了です。










 やー、長かった、と言う前に。もうすぐ日の出です、山小屋で貰った朝ご飯を待機させて待ちます。そぼろご飯とお魚です、美味しそうですね。

 所で私の昔からの疑問なんですけど、太陽って神様みたいに扱われてますよね。神様って普通天から降りてくるものだと思うのですけど、でも日の出は下から出てきます。太陽が天に昇って消える日、あってもいいと思います。


 朝食と共に日を迎えましょう。水を飲んで一呼吸、モチモチのご飯の感触を楽しみながら魚の濃いタレの味、そして甘いお肉が絡みます。ついでに乾パンも食べまして、カッチカチを歯で千切って。昨日から長い付き合いです。気に入ったので降りてからのおやつになると思われます。


 そうして食べていると、もうお日様の端が見えていますね。先ほどから段々と明るくなってきた気がします。


 不思議と神聖さは感じません、むしろ友達と一晩泊まってから朝一緒に起きた、そんな感じ。他の登山者の皆さんから色々と声が上がりまして、なんだかとっても仲間みたいな気分。


 清々しくて、さっぱりしていて。

 もう少ししたら、私はこの山を下り始めます。夜になれば、この山の麓の駅に着き列車にでも乗っていることでしょう。登山用一式を片付けて、次の日には何食わぬ顔で町を歩いているでしょう。実に普通な旅のひつじ。






 だけど今日は、今日ばかりは……ふふふ、私はとっても特別なひつじですとも。

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