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プロローグ:旅するひつじ、ノイ
最近仕事の同僚から杖を貰った。なんでも遠くに登山に行ったらしく、そこの有名な土産品とのこと。私は現在足の病に掛かっているため、リハビリに使ってくれと。
なんともありがたい話である。
ところで、私の家には住み込みの秘書がいる。
全身ふわふわもふもふ、巻き貝のような綺麗な角とぴょこんと撥ねた耳が可愛い、それでいて賢く頼りになる子。彼女の名前はノイ、一般的に羊娘と言われる獣人だ。
そのノイが土産の杖をじっと見ている。何かと尋ねると「私も登山というものがしてみたいのです、主人様」と言い出した。丁度いい、幾ら慕ってくれてるのとは言え、小さな羊娘に病気の世話をさせているだけというのも気が引けていた所だ。
「なら行っておいで。また楽しい話を聞かせてね」
「はい、主人様!」
……てなことなんで、見守ってやって下さい。