表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
内通者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
96/912

ウィスナビアへ




「本当に魔法が得意なのですね」

アラウィリア出立日、グレティアーナが見送りながらそう告げた。

「剣は全然ですけどね」

リディオノーレは苦笑しながら答える。


「ティア様、お忙しい中ありがとうございました。お手紙書きますね」

リディオノーレはグレティアーナと抱擁を交わす。

「こちらこそありがとう。お土産にまたお茶渡してあるから、なくなったら連絡してきてちょうだい」

グレティアーナは微笑む。


「是非!あのお茶とても美味しくて皆気に入ってるんです」

リディオノーレは満面の笑みで答える。

「グレイザック様も?」

グレティアーナがちらりとグレイザックを見て尋ねた。


「そうなんです!サムエル様や私の護衛騎士たちもお気に入りです」

リディオノーレは嬉しそうに答えた。

「そうなのね。良かったわ。また式の招待状を送るから待っててちょうだい」

「分かりました!楽しみにしてますね!」

リディオノーレとグレティアーナは最後にもう一度抱擁して別れた。

その後グレティアーナはムナグレークと話し始める。



リディオノーレはバルデミアンの元へ行き、荷物の整理をしながら、3回目の天馬合戦の話をしていた。


「全然、念話が飛んでこなかったですが、グレーク様やバルデミアン様は何処にいたのですか?」

「休戦しておりました」

バルデミアンは苦笑いで答えた。

「え?」

思わぬ返事にリディオノーレは目を丸くする。


「リディとグレイザック様がどれだけの魔法を放つか分からなかったので、じっとしていたんです」

「………」

リディオノーレは目を瞬く。

「だって、いきなり雷を落としたでしょう?当たったらやられてしまうのでじっとしてる方が良いのです」

バルデミアンは苦笑いで話を続ける。


「見境なく魔法を放っていたでしょう?リディとグレイザック様の魔力は段違いなので、当たったらひとたまりもないんですよ」

「………見境ないわけでは……」

リディオノーレは口ごもる。

確かにあまり周囲のことは考えていなかったかもしれない。


「しかもグレイザック様は炎で炙り出そうとして、広範囲を焼き尽くしたでしょう」

「……」

リディオノーレは、それに自身が助力したことは内緒にしといた方が良さそうだと判断して意見を言うのをやめた。


「焼け死ぬかと思いましたよ」

その言葉に彼女は心の中でたくさん謝っておいた。




グレイザックもアブストールと何やら神妙な顔で話をしていた。


「気を付けろよ」

アブストールが簡潔に告げる。

「分かっている」

グレイザックも簡潔に返す。


アブストールはちらりと遠くのリディオノーレを見てから、グレイザックに視線を戻し、また口を開いた。


「無理はするな。何かあったら呼べ」

「……えらく世話を焼いてくれるじゃないか」

グレイザックが唇の端を上げながら言う。


「グレティアーナと仲良くしてくれているしな」

「……」

グレイザックもリディオノーレを一瞥する。


「こっちもリディが世話になったな」

「本当にな。お前ら師弟が来る度に、素材が減っていくからかなわん」

アブストールはため息をつく。


「また取ってくればいいだろう。俺はそんな暇がないから、今回のこの素材は大変助かる」

グレイザックはにやりと笑う。

「愛弟子が学院に入学したら大変なことになりそうだな。お前と同じように片っ端から採集しそうだ」

アブストールは呆れた目を向ける。


「それの何がいけない?」

そのグレイザックの返答にアブストールはますます呆れる。

「お前たちは変わっているから常識は通用せんな。言うだけ無駄だからやめておく」

「常識はあるがな」

グレイザックは少し睨みつける。


アブストールは一度ため息をついたあと、ひとつの紙を渡した。

真っ赤な紙に魔法陣が描いてある。


「これは?」

グレイザックが怪訝な顔をして、彼を見つめる。

グレイザックでも知らないことがあるんだな、とアブストールは笑いながら呟き、説明した。


「一時的に指揮権を渡せるものだ。この魔法陣に血を垂らせ。そうしたら一時的にお前の命令で動かせる」

「……いいのか?」

グレイザックが真剣な顔で尋ねる。


「これは一度しか使えんから、使うときはよく考えてくれ」

「本当にいいんだな?今なら返せるが」

「良い。お前だからこそ、だ」

「……分かった。………礼を言う」

グレイザックはその紙を受け取った。


「………本当に気を付けろ」

アブストールはまた釘を刺す。

「分かっている。何かあれば、連絡する。………情報は頼んだ」

「ああ、任せろ」

「そっちも気を付けろ。油断するなよ」

グレイザックも注意し、2人は別れた。




アラウィリア領主とも挨拶を交わし、アインズビルの4人はアラウィリアを出立した。


アラウィリア城が見えなくなるまでリディオノーレは天馬車の窓から手を振った。

御者台にはグレイザックがいて、落ちるなよ、と注意される。


ムナグレークがもう一台の天馬車を引き、バルデミアンは天馬に跨り、最後の視察の領地であるウィスナビアに向かう。


「グレイザック様」

リディオノーレは御者台のグレイザックに呼びかける。

「何だ」

「手綱代わりますよ?」

「構わん。寝ておけ」

グレイザックは短くそう答える。


「本当にいいんですか」

「ウィスナビアに着いたら忙しいだろう。今だけでもゆっくりしておけ」

「……お言葉に甘えますよ?」

リディオノーレは天馬車の椅子に寝転んだ。


「ああ。着く頃に起こしてやるから寝てろ」

グレイザックにそう言われ、リディオノーレは素直に目を閉じた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ