アリウォーナと研究
夕食は双子と一緒に摂ると、リディオノーレはバルデミアンと共にアリウォーナの実験室に向かった。
「お待たせしました」
リディオノーレは部屋に入る。
相変わらず少々散らかっている部屋である。
「見せてもらってもいいですか?」
リディオノーレはアリウォーナが研究しているという回復薬を覗く。
「どうしてこれを入れて回復になるのか不思議なんですが」
「これの花に元々そういう効能があるじゃないですか。なら、その根や茎もいけるのではないかと」
「では、これは?これは、花が毒ですよ?」
アリウォーナは尋ねる。
「花が毒だからといって、茎や根もそうとは限らないじゃないですか」
リディオノーレは答える。
「そんなこと言い出したら、全部研究し直しじゃないですか」
バルデミアンが突っ込む。
「そうですよ?」
リディオノーレは何を言っているんだ?みたいな顔を向けた。
「当たり前じゃないですか。先入観は取っ払ってください」
リディオノーレは本当に当たり前のことのように話す。
「……」
バルデミアンは無言。
「私、この部屋片付けておきますので、お二人でどうぞ励んで下さい」
バルデミアンはそう言って、無言で片付け始めた。
何を口にしても意味ないと感じたためである。
そうして、アリウォーナとリディオノーレは研究に没頭し始めた。
バルデミアンは何も言わず、黙々と片付けをしていたが、粗方片付いたので一旦手を止めた。
そして、あまりにも女性2人が没頭しているので、バルデミアンはそろりと部屋を出て、グレイザックに手紙を出すことにした。
庭に出て、長い口笛を1回、手を2回打つと彼の肩に鷲がとまった。
「これをグレイザック様に」
バルデミアンはその鷲の足に手紙を括り付けると空に放った。
そう、彼の使役獣は鷲なのだ。
外はもう暗くなりつつあった。
「グレイザック様、バルデミアンの鷲です」
サムエルが遠くの空から鳥を見つけ、執務室の窓を開けて待っていると、鷲が部屋に入ってきて机にとまった。
サムエルが素早く手紙をグレイザックに渡し、鷲に食べ物をやる。
「………ほぉ」
グレイザックは中身を読んで感心した。
そして、サムエルに渡す。
「見つけたのですか」
サムエルは中身を読んで目を瞬いた。
何千年も前のことをどうやって探し当てたのか。
かいつまんでだが、バルデミアンが内容を書いてくれていた。
「よく見つけましたね」
「バイルミングが手伝ったようだな。リディからも夜に手紙が届くだろう」
「バルデミアンには何て返されますか」
「また何かあれば連絡を、と返しておけ」
グレイザックは返信の内容をサムエルに託す。
「アリウォーナ先生の所で実験をしていれば、とりあえずは心配ありませんね」
サムエルはもう一つの連絡事項を読んで安心した。
「どうだろうな。アリウォーナも集中しすぎたら、寝食忘れるけどな」
グレイザックは言う。
「………そうでしたね。どっちもどっちですか。本当にリディはグレイザック様に似すぎですよ」
「仕方ない。俺の弟子だからな」
グレイザックは乾いた笑みをこぼした。
「先生、もうそろそろお時間です」
バルデミアンが研究に没頭する2人の内のアリウォーナに話しかけた。
「え?もう?」
アリウォーナは顔を上げる。
「もうすぐ消灯の鐘が鳴ります」
バルデミアンは答える。
「先生は寮監ですよね?」
「あー……そうだったわ」
アリウォーナは面倒くさそうな顔をした。
「リディ……リディオノーレ様」
バルデミアンは愛称で呼んでしまった後、慌てて言い直す。
「リディオノーレ様っ」
バルデミアンはそう呼びかけながら、彼女が筆記している筆と紙を奪い取る。
「ぎゃぁっ!!!」
リディオノーレは物すごい怒った顔と声でバルデミアンを見た。
「………ん、すいません」
リディオノーレは1つ咳払いしてから謝った。
「はい、帰ります」
リディオノーレは素早く片付け、立ち上がった。
没頭していたせいか、髪も少しボサボサで筆の黒い跡が顔にいくつかついている。
バルデミアンは少し呆れながら、彼女の顔の汚れをハンカチで拭いてやる。
「寮に帰ったらきちんとお風呂に入るか、洗浄魔法をかけて下さいね」
「分かりました」
リディオノーレは答え、伸びをする。
そして、首を左右に振って鳴らす。
「帰りますか」
リディオノーレはアリウォーナに話しかけた。
「お2人一緒ですので、大丈夫ですね。リディオノーレ様、明日の朝食堂でお会いしましょう」
バルデミアンは頭を下げて部屋を去って行った。
自室に戻ったリディオノーレは手紙をしたためた。
転移陣に乗せて送り、それを受け取ったグレイザックは苦笑する。
今日バイルミングに手伝ってもらい、魔獣の起源が分かったこと。
それを読んで思ったことは、魔獣化を解除する方法を探りたいのと、魔石に頼らないようにその代わりの物をさがすか、魔力操作が上手くなって皆が指先魔法を使えるようになったらいいのではないかと。
相変わらず発想が斜め上だが、その研究をするのは面白いだろう。
あと、夕食後はアリウォーナの実験室で回復薬の実験をおこなったこと。
そして、文末には今日の研究はこれでお終いにして寝てください、と。
文末のこの言葉にグレイザックは笑ってしまった。
「お前もすぐに寝ろ」
グレイザックはそう書いて、手紙を転移させた。




