表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
学院~下級生編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

251/912

バイルミングの忠告




「……久しぶりだな。いつ帰ってきたんだ?」

バイルミングは座りながらそう尋ねた。


「今日です、今日。この間はありがとうございました」

リディオノーレは深々と頭を下げた。

「この間と言うが、もうひと月くらい前だがな」

バイルミングは呆れたように答えた。


「あ、そうでしたね」

リディオノーレは頭を掻く。


「グレイには怒られなかったか?」

「はい、大丈夫でした。それより、先程のお話教えてください」

「?」


「伝記などのお話に書いてあるとか何とかのやつです」

「そのまんまだ。歴史の本にも魔獣の本にも載ってないんだろう?なら、そうだと思うのだが」

バイルミングは頬杖をついて答えた。


「魔獣の起源だろう?そんな千年以上も前のこと、何かの話として伝わっていることが多いと思うぞ」

「成程。思いついてなかったです」

リディオノーレは目を見張った。


リディオノーレとバルデミアンは、早速書籍を探す。


「ここらですね。私、右から見ていきますね」

「じゃあ、私は左からで」

2人は書籍を取って中身を読み始めた。


「これでもないですね」

「こっちも違いますね」

中身をぱらぱらと読んでは閉じて、また開いて読んで、の繰り返しの2人。


「これは?」

「私も!これ……ですかね?」

2人はある書籍を手に、図書室の机にそれを広げた。


「これだな」

バイルミングもそれを覗きこむと、頷いた。


リディオノーレとバルデミアンはそれをじっくりと読み耽る。


「………これは、確かに人間のせいですね」

読み終えたリディオノーレはそう呟いた。

「そうですね……」

バルデミアンも悲しそうな顔で呟いた。


要約すると、ある人間が使役獣を山に捨てたそうだ。でも、後悔したその人間が使役獣を探しに山にもう一度戻ると、その使役獣が変貌していたそうな。


主だった人間のことも忘れ襲いかかってきた為、やむを得ず殺すことに。

すると、石が採取できた。

そして、その石には魔力があり、それを媒体にして魔法を使うと魔法が扱いやすいのが判明した。

それから試行錯誤の末、杖に魔石を埋め込むことになったらしい。


それから魔石を採取したいが為に、使役獣を魔獣化させる方法を色々考え、色々な方法を試したとある。


「………これは……」

リディオノーレの顔が歪む。

方法が悪辣すぎる。非情で非道だ。


「魔石に代わる何かを見つけなければなりませんね」

リディオノーレは言った。


その発想にバイルミングは目を瞬いた。

「どうやって?先に魔獣化を戻す方法を試さなければならないのではないか?」

バイルミングは言う。


「それもそうですね。色々研究しないといけません」

「どちらも道のりは長いし、生きてる間に出来るかは不明だぞ」

バイルミングは怖い顔で彼女を見つめた。


「やりますよ。やらないと。気付いた人がやらないと」

リディオノーレは言う。


「第一、魔石がなくても術は発動するんです。魔石があるから扱いやすくなっただけで、私も頑張るので、もっと魔力操作の練習をすればいいのではないでしょうか」

「……魔石がなくても術が発動するとは?」

バイルミングは、周囲に誰も居ないか確認してから尋ねた。


「指先でも魔法は唱えられますよね?先生はグレイザック様の師匠なんでしょう?ならば、知っているのでは?」

リディオノーレはまっすぐバイルミングを見つめる。


「……他人を信用しすぎだ」

バイルミングはそう言って、彼女の額を弾いた。


「相変わらず危なかっしいな。そりゃ、グレイも隠しておきたいのがよく分かる」

バイルミングはそう言って頭を掻く。

そして、続ける。


「その指先魔法、規格外なのは分かってるな?」

「勿論です」

「ならば、おいそれと口にするな。馬鹿者が」

「ですが」

「グレイの師匠だからと言って、簡単に信じるものではない」

リディオノーレはその言葉に唇を少し噛んだ。


「その考え、国に知られたら厄介だぞ。他国にもだ。気を付けろ」

「どうしてですか」

「規格外と言うよりは、その考えは異端だ。異端はいらない」

「……異端、ですか」

「異端は恐怖であり、畏怖である」

バイルミングは彼女を見つめる。


「そういう者はどうなるか分かるか?」

バイルミングはバルデミアンを見た。


「………抹殺。粛清。暗殺。捕縛。………捕えられるか殺されます」

バルデミアンはゆっくりと答えた。

「その通りだ。もし、その研究をする時は我の部屋に来い。人前でやるな。我からグレイにも連絡しておく」

バイルミングはそう言って立ち上がった。


「分かりました。ありがとうございます。よろしくお願いします」

リディオノーレは頭を下げた。


バイルミングが図書室から去っていくと、バルデミアンは徐に口を開いた。


「頼りになる先生ですね」

「??バルデミアン様の学生時代からいらっしゃったのでは?」


「確かにそうなのですが、あんなに喋る先生の印象でもなくて……」

「そうなのですか?………あー、確かに。面談の時にもいらっしゃいましたけど、終始無言でした」

リディオノーレは思い出しながら言った。


「そうでしょう?自分からわざわざ話しかけてくるような方ではなかったものですから。私も話したことは少ないと思います」

バルデミアンは答える。


「弟子の弟子ですから、少し気にかけてくれているのでしょうか。帰領前、少しお世話にもなりましたし」

リディオノーレはぺろ、と舌を出す。


「……そのお話聞いても?」

「バルデミアン様は知らなかったのでしたっけ?」

リディオノーレは魔力漏れの事件のことを話した。


「………それは、それは…」

バルデミアンは険しい顔をする。

「リディは災難でしたね。周囲も、あなたの威圧に耐えられなかったでしょうし、被害は凄かったのでは?」

「正直、こう、ぶわっ!と感情のまま魔力を吐き出しただけで、量も程度も何も調整できなかったんですよね…」

彼女はまたぺろ、と舌を出した。


「………」

バルデミアンは苦い顔をした。

それはもう、想像するだけですごい光景だったんだろうなと彼は思う。


「まあ、大変でしたね」

バルデミアンは苦笑しながら彼女の頭を撫でる。


「戻りましょうか。もうすぐ夕食の時間です」

2人は図書室を後にし、食堂に向かった。





食堂にリディオノーレが足を踏み入れると、一瞬にして彼女に対して通り道が出来る。

さあ、と道が空き、さぁっと机も空く。


「………」

リディオノーレは苦笑いだ。

「そう言えば、あの事件以降食事は寮まで持ってきてもらっていました……」

「完全に腫れ物扱いですね」

バルデミアンも苦笑する。


「あーーー!リディーーーっ!!!こっち!こっち!!」

そんな空気をぶち壊すかのようなスティルナーデの声が響き渡った。


それにはリディオノーレとバルデミアンは顔を見合わせると、手を振る彼女の元に笑顔で向かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ