レンとの訓練 2
「正直、ここまで動けるのならば、この動きに魔力を込めればかなり効果的かと」
レンは腕組みをしながらそう告げる。
「騎士の中にはあまりいないのですが、体に魔力を纏わせて肉弾戦をする方も1人くらいはいらっしゃると思います」
「アインズビルでは見たことありません」
「………そうですねぇ、影の騎士はどちらかと言うと、そういう戦いをする方が多いかもしれません」
レンは顎に手をやりながら話す。
「リディオノーレ様は剣を使うのでしたか?」
「はい」
「では、この木剣を持って、私に向かってきて下さい。剣との戦い方をお教えしましょう」
この前の小さい木剣ではなく、普通の大きさの木剣を渡された。
リディオノーレは木剣を握り、振りかぶる。
「大振りすぎるのと速度がそんなに無い為、この初撃は躱される可能性が高いです」
レンはそう言って軽々とリディオノーレの剣を避ける。
そしてそのまま、柄を握る彼女の手に向かって拳を繰り出すと、彼女の指が折れた。
「〜〜っ!!」
「………という風になります」
レンは申し訳ございませんと謝る。
「すいません。私がとろいばかりに」
リディオノーレはすぐはま杖を出して、魔法陣を描き出す。
「ケネス様、レンさん、私の体押さえておいて下さいね」
レンが魔法陣から手を離さないように彼女の折れた方の手を固定する。
ケネスは彼女が暴れないように体を絞める。
「グアテムハイン」
べき、ぺき、ぴき、と音を立てながら、折れた彼女の指が治っていく。
「〜〜っ!!!」
リディオノーレは物すごい歯を食いしばる。
やはり、普通の魔法陣の方が痛い。精霊魔法も痛かったが、これほど痛くはなかった。
「はぁっ、はぁ」
リディオノーレは荒くなった息を整える。
折れた指を動かして治ったかどうか確かめる。
「問題ないですね。またお願いします」
リディオノーレは脂汗を拭うと、木剣をまた構えた。
「本当にその意気には感心しますね」
レンは嬉しそうに笑っていた。
リディオノーレは縦に剣を振るうのではなく、今度は横に薙ぎ払ってみた。
「攻撃の形を変えるのはいいですね」
レンは褒めながら、後ろに飛びすさりそれを避ける。
彼女はそのまま前傾姿勢で彼が飛びすさった距離を詰める。
今度は下から斜め上に払うように剣を振るおうとした。
だが、下から上げる前に剣身を靴で踏まれてしまった。
「では、どうされますか」
ぐ、と剣を踏まれたら、全く動かない。
むしろ剣が地面に埋もれていく。
「ちっ」
リディオノーレは早々に剣を手放し、足払いを仕掛けた。
「あぁっ!本当にいいですね!」
レンは嬉しそうである。
「武器が使えないなら躊躇なく手放すところ。本当に面白い」
レンは笑顔で接近戦を迎え討つ。
結局のところ、背中から地面に放り投げられ、リディオノーレは降参した。
リディオノーレの手を引っ張ってレンは立たせてあげると、彼女を褒め称えた。
「これに魔力を纏わせて戦えば、同年代で敵う者はいないと思いますよ」
「今これだけ負けてばっかりなのに、ですか?」
リディオノーレは目を瞬いた。
「ええ。これだけ戦えれば充分かと思われますよ。あなたは相手が誰でも恐怖しない所が良いですね」
レンはにこりと微笑んだ。
「ここにいる間はいくらでも付き合いますので、いつでもどうぞ」
「ありがとうございます」
リディオノーレは頭を下げる。
「治癒魔法が使えるのならば、いくらでも出来ますしね」
「っ」
その言葉にリディオノーレの顔が引き攣った。
「ま、まあ、また明日よろしくお願いします」
リディオノーレは引き攣った顔のまま、ケネスとディールと共に城に戻った。
そして、もう夕食の時間だったので皆で席に着くのだが、疲労でまた食欲がないリディオノーレ。
「……お腹空いてないの?」
グレティアーナが心配そうにリディオノーレの顔を覗く。
「最近は疲れていて、お腹があまり空きません」
リディオノーレは苦笑して答えた。
「そうなの。無理しすぎも良くないわよ。……その動作は美しくないわ」
グレティアーナがさりげなく注意する。
なかなかに厳しい教育をするグレティアーナと、アンとレンの訓練に食らいつくリディオノーレに感心しているアブストールは、苦笑しながら口を挟んだ。
「まあ、毎日疲れているのは知っているからな。夜はゆっくり休むといい」
「ありがとうございます」
リディオノーレは席を立つ。
ディールもついて行き、ケネスとバルデミアンもそれに続く。
「今日はこのまま休みます。バルデミアン様も休んでくださいね?結界かけておくから大丈夫だと思いますので、寝てください」
リディオノーレは扉を閉めて、結界をかける。
ケネスは人化を解き、ディールと共に床に座る。
リディオノーレはぐったりと寝台に寝そべった。
「師匠に会いたいです…」
ぼそりと呟く。
「知ってる。だが、毎日会ってるだろう?1日くらい我慢しろ。学院にいる間は寮生活で普通は帰れないんだぞ?お前だけだ、転移してる奴は。皆にバレたら厄介だぞ」
ケネスが咎める。
「ですよね……。はーい」
リディオノーレはそう返事して、そのまま目を瞑る。
疲労のせいか、すぐに意識は何処かにいった。




