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苦労少女の英雄伝  作者: 疾 弥生
カルムクラインの生き残り
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カルムクライン領への視察

 


       




年に一度、国の領地を統括している最大領地が各領地の視察に訪れる。1年間の収支報告を聞き、来年の予算などが決まる。

故に、どれだけ上手に報告して予算をもぎとるか、が各領主の課題である。



ここはカンナビーティア国、小領地、カルムクライン領。

商才に優れたカルムクライン領主夫妻が一代で築いた領地である。


まあそれも先代の話だ。

カルムクライン領主夫妻は不慮の事故により、1年前に逝去。現在は、領主の弟が継承し、領地を盛り立てていこうとしていた。


統括している最大領地、アインズビル領主一行が視察のためカルムクライン城に宿泊。

まずは、歓迎の宴を開く。


叔父に代替わりしてからというもの、叔父は全く商才が無いので、貧困になっていく一方だったが、見栄を張るため、カルムクライン城では豪奢な飾りつけが行われた。


(どこにこんなお金があるのよ……)

カルムクライン先代領主夫婦の長女、リディルレーネは飾りを見て、心中で呟く。


とりあえず見栄えだけでも繕わないといけない為、必死なのだろう。

無駄なのに。


言いたいことはたくさんあるが、彼女は口を噤む。

進言できるような立場じゃないのだ。両親が死んでから、叔父家族がカルムクラインを乗っ取り、それからというもの冷遇されている。


今年10歳なのだが、恐らく同年代の子どもたちよりは完全に痩せこけていると自分でも分かっていた。


そんな自分のことは頭から払いのけ、視察に来るというアインズビル領主一行のことを考える。


今回は、領主の弟も来るとのことだ。魔術学院で常に首席を取り続け、私生児と侮蔑された中、実力を確実に示し続けた優秀な人らしい。




「今回は我がカルムクラインまでご足労いただき、誠に有難うございます。アインズビル領には劣るでしょうが、少しでも楽しんでいただきたく、趣向を凝らしておりますので、ごゆるりとお過ごし下さいませ」

現カルムクライン領主は跪きながら嫌な笑顔で述べた。


「これは私の長女、ジュリエーレでございます」

領主夫人が自分の娘を紹介する。


ジュリエーレは恭しく頭を下げるが、作法がなっていない。

アインズビル領主弟であろうと思われる青年が眉を少し上げるのが見えた。


「先代領主の子息たちに挨拶したいのだが、どこにいる?」

眉を上げた青年の少し前に立っていた精悍な男性が口を開く。


「長男のバイリムートが病で伏せっているので、会わせられません。長女のリディルレーネが看病をしていますので、病が移っては困りますので今回の宴は欠席をさせております。ご容赦くださいませ」

領主夫人が頭を下げる。


「あい分かった。では見舞いの品を贈ることにしよう。グレイザック」

アインズビル領主は弟を呼ぶ。


やはり、弟で正解だったようだ。

領主は紺色の髪色だが、弟のグレイザックは輝く金髪だ。そして、美青年。


「かしこまりました。サムエルと品を選んでおきます」

グレイザックはすぐさま自分の側近を呼び、話をする。


「アインズビル領主さま、良ければ、ジュリエーレが城を案内します」

カルムクライン領主はそう口を開いた。

その言葉にアインズビル領主、ライリルムントは眉を少し上げる。


意図が見え見えである。

学院を首席で卒業した優秀な弟、グレイザックとあわよくば、などと思っているのだろう。


ジュリエーレはうっとりとグレイザックを見つめている。

分かりやすい。

確かに彼は見目だけは完璧なのだ。


「グレイザック、そちの判断に任せる」

ライリルムントは面倒ごとは頼んだ、という感じで彼を見つめる。


「………初の視察なので、お願いしましょう」

グレイザックは嫌そうなのもおくびに出さず、笑顔で答えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです! [一言] 追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!!!
2023/07/09 10:46 退会済み
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