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蒼い光のタンザナイト  作者: R.U.R.U.R
学院入学編
12/15

人、それを地雷原でタップダンスをすると言う

ヒロイン攻略編開始でございます(

 入学初日だからと言って、HRだけで解散などと言う事はない。

『文武両道』を校是とするロジュニア学院では新入生であろうと、容赦なく平日通りの授業進行が行われる。午前中の4つの座学を終え、ただいま院内は一時間の昼休み中。

 そしてこの時間尤も混みあうのは、「一食」と略される第一食堂だ。天井の高い平屋建ての店内は既に満席で、空いているのは外のテラス席という盛況具合だ。

 その一角に、ハルとセリヴィエットは居た。


「なんで私は貴方なんかと食事をしなければならないんですか」

「一人でご飯を食べるよりも、2人で食べたほうが美味しいよ」

「食堂の使い方が分からないからついてきただけでしょう?」

「そうとも言うね」


 ハルはちゅるちゅるとパスタを啜りながら、周囲を眺める。


「皆見てないで一緒に食べようって言えればいいのに」


 2人を囲むように空白地帯が出来ている。

 理事長の娘と、かつての雄姿の息子が(対外的には)仲睦まじく食事をする光景を遠巻きに眺めている。


「だから、私に関わると面倒なことになると言ったじゃないですか」

「この状況はディルメンスが云々ってだけじゃないと思うんだよね」


 ハルの視線がセリヴィエットの手元に注がれる。大振りのステーキ肉が鉄板の上で寝そべっている。パンやサラダの付け合わせはない。

 じゅうじゅうと美味しそうな音はかえって周囲を威圧している。


「お昼から随分と豪快な物を食べるんだね?」

「ここの食堂のメニューを拝見しましたが、炭水化物の品が多かったのです。たんぱく質を効率よく摂取するには、これが一番ですので」

「炭水化物はダメなの?」

「だめです」

「もしかして、太りやすいとか……ぁ」


 セリヴィエットは笑っていた。

 心臓を握られたような錯覚を覚え、ハルは大人しくスープパスタを味わう。


「私としては、貴方の食事量のほうが不思議ですよ。それだけで足りるのですか?」

「昔からそんなに食べられないんだよねぇ」


 力無く笑うハルの手元のパスタのサイズは標準サイズの半分しかない。食べ盛りの男子にしては余りにも少量であるとは、セリヴィエットの目にも明らかだった。


「村の皆は僕に食べてって色々お裾分けしてくれるんだけど、他にも食べて欲しい人とか居るからね。食べ易い様に調理だけして、その人たちに上げるってやってたらね」

「食が細くなる、と」

「でもこれだって十分に美味しいし満足だよ」


 ハルにとってはこの簡単な料理でさえご馳走なのだ。美味しそうに食べるハルの皿に、そっと一切れのステーキ肉が乗った。


「長年の食習慣を改善しなければ、破砕者(ブリンガー)足り得る体を作ることは出来ません。少しずつでも食べる量を増やす様にしてください」

「セリヴィエットさんってちゃんと優しいよね」

「ちゃんとって何ですか。第一、同情を誘ったのは貴方でしょうに」

「そんなつもりはないんだけどなぁ」


 ハルはステーキを口に放り込んだ。溢れる肉汁の旨味に、ハルの目が爛々と輝いた。


「いやいや全く、セリヴィエット嬢の言葉通りじゃあないか」


 横合いから賛同の声が割り込み、ハルらは揃って其方に視線を向ける。ハルを睨み付けていた、あのライオンの様な少年がそこに立っていた。


「何か御用ですか、アイリスベルさん。私たちは食事中なのですが」

「今日より学友の身、どうか親しくライリーとお呼びください」

「ご用件をどうぞ、()()()()()()()()


 セリヴィエットが不快さを露わにする。微かに頬をひく、と動かしたライリーが語る。


「なに、俺はこの男に勘違いするな、と釘を刺しに来たんですよ。このロジュニアに入学を認められた者は、すなわち人類の存亡を背負うべく選定された資格者だ。廃棄エリアに暮らしていたような()()()()()が居るべき場所じゃない」

「それは彼の入学を決定した私の母への侮辱と取れますが?」

「失礼、気分を害してしまったのならば謝りましょう。ですが、だからと言って公衆の面前で憐れみを誘っておこぼれを貰うような情けない真似は目に余る」


 そう言うと、ライリーは黙々と肉を噛み締めているハルを侮蔑を込めて睨み付けた。


「シティの一員になれたと思うなよ、劣等種(ネズミ)。セリヴィエット嬢も含め、お前が許可なく馴れ馴れしく接していい存在など居ないのだ」


 ライリーがテラスの生徒らを見渡す。同意するように頷く者らもいたことを眺めつつ、ライリーが満足げに頷く。


「アイリスベルさん、いい加減に」

「ごちそうさまでした。これだけ美味しいお肉は初めてだったよ、ありがとうセリヴィエットさん」


 目を細めたセリヴィエットが口を開いた瞬間、ハルがぱちんと両手を合わせた。立ち上がると右手で空になった食器を持ち、左手で自分の座っていた椅子をライリーへと近付けた。


「ライリー君だよね?立ち話は疲れちゃうから、よかったらこの席どうぞ」

「な!?貴様ァ……!いい度胸じゃないか!」


 胸倉を掴まれても、ハルは困り顔を浮かべるだけだった。


「俺は貴様に忠告してやってたんだぞ!それを無視するとは、随分と良い身分だな!」

「いやいや、無視じゃなくて空気を読んでたんだってば!」

「何を根拠に!」

「だって、ずっとセリヴィエットさんを見てたから。2人きりで話したいんじゃないかなぁって思ったんだけど、違った?」

「っ!?」


 さらりとした口調でハルに言われ、言葉に詰まったライリー。

 次の瞬間、くすくすとかみ殺すような笑い声があちこちで沸き起こった。


「ふたりで話したいから僕を何とかしたかったんだよね?教室で睨んでたのも、僕がセリヴィエットさんに近かったからだったんだね。ごめんね、僕ってそう言う機微に鈍くて」

「違う、俺は!」

「でも丁度ご飯食べ終わったから、やったね、存分にお話できるよ!あとはキミの頑張りだけだよ!それとアドバイスありがとう、ライリー君!僕、皆の足を引っ張らないように頑張るね!キミもファイト!」


 何を勘違いしているのか、ハルは親指を立てて去っていく。人助けをした気でいるのか、彼の去り際は満面の笑顔であった。


「ちょっと待ちなさい、ハル=カルヴァード!」


 こんな空気に取り残されてたまるか、と残った肉を急いで平らげたセリヴィエットがその背中を追いかける。

 結果として、ひそひそ話と嘲笑が聞こえる真っただ中に一人ぽつんと取り残されるライリーという絵が完成した。


「この俺を晒し者にした代償は高く付くぞ、ハル=カルヴァードォ……!」


 掌を突き破らんばかりに握り絞めた拳を机に叩きつける。ライリーの声はハルらには届かなかったが、打撃音は聞こえた。

 何の音かとハルが振り返れば、食堂の出入り口からセリヴィエットが現れた瞬間だった。


「あれ!?ダメだよ、なんで来ちゃったのさ!?折角(キューピー)が気を利かせたのに!」

「余計なお世話です!」


 セリヴィエットは眉を吊り上げ、弓矢を射るような動作をするハルの手をぺしんと叩いた。

 そしてそのまま教室へと戻ろうとするので、ハルは小走りでその隣に並んだ。


「そんなにツンケンしなくていいじゃないか。彼のこと苦手なの?」

「苦手ではなく、嫌いなんですよ」

「うわ言い切っちゃった」


 セリヴィエットは少し肩をすくめた。


「ライリー=フォン=アイリスベルは私が社交界にデビューしたその日に出会いました。私も彼のことを覚えていましたよ。その目が人を見るような目をしていないことを」

「それってどんな視線なの?」

「コレクターに似ています。良い物は自分の手元にあって当然と言うような、まるで人をトロフィーか何かと勘違いしているような目です」


 セリヴィエットはもみ上げを指で撫でた。その横顔が大人びいて見えたのは、ハルよりも一足早く神算鬼謀渦巻く世界に足を踏み入れたからなのだろう、と思った。


「15にもなれば性格も落ち着くかと思いましたが、残念ながらそうでもなかったですね。ああも傲慢に振舞ってしまうなんて」

「言葉が強いなぁって思ったけど、僕はシティの外から来てるからね。他の人が気を揉むのはしょうがないんじゃないかな?」

「……もしや性善説を信じてますか?」

「人を悪人って頭から決めつけないようにはしてるよ。村で色んな人を見てきたからね」


 ハルは自信満々にブイサインをして見せる。

 呆れる様に目を細めたセリヴィエットは彼より一歩半前に出た。


「でしたら忠告をしておきます、ハル=カルヴァード」


 振り返ることもなく、セリヴィエットは固い声音で断言する。


「ライリー=フォン=アイリスベルには余り関わらない方がいい」

「関わるなって、そこまで言っちゃうの?」

「彼の様なプライドが服を着て歩いている様な人間は、貴方の様な身分の者を見下して嫌悪する傾向がありますから。貴方がどう思おうと、です」

「……」

「シティにはその手の類の人間が沢山いますよ。彼らの子息子女が入学するようなここは、そのるつぼと言っていいんですから」


 セリヴィエットは前だけを見ていた。その背中は150にも満たない、という数値的な問題よりも小さく見えた。


「じゃあセリヴィエットさんは?」

「え?」


 セリヴィエットは、いつの間にか隣に並んだハルのことを驚いた顔をして見上げた。


「だって、キミもいい御身分でしょ?じゃあ僕のことを嫌いだからってバカにしてるの?」

「――――」


 長い沈黙は、彼女にとって何を意味していたのか。ハルには分からないから、彼女の答えを待つしかない。

 そうして、不意にコバルトブルーの瞳は逸らされた。


「苦手です」

「そっかぁ、苦手かぁ」

「そうです、苦手なんです」


 本心から言っているのだろう。彼女の言葉に棘はなく、困惑が色濃く乗っていた。

 だから2人の話題は自然と午前中の座学についてに移っていって、それっきり追及されることはなかった。



 ₡



 シミュレーションルームに、1-Aの生徒らの姿があった。生徒らの前には討伐隊指定の軍服に身を包んだ老人が立っている。

 午後の授業は実技、それも2コマぶち抜いての濃密な授業である。


「総員傾注。私が貴君らの実技を指導するイーグレン=ベネトナシュである」


 〝鉄拳〟イーグレン=ベネトナシュと言えば、破砕者(ブリンガー)にとっては、かつてのマイケルジョーダンやローキ・ササキのような伝説そのもので、その男が自分たちの実技の教官になる、と聞けばセリヴィエットも、あの威張り散らしていたライリーにとっても同じことだった。


(この人が実技の先生になるんだね。おじいちゃん手前だよね……?)


 とは言え、ハルはそんな伝説を知らない唯一であったから、父よりも年かさを増したイーグレンをなめ回す様に観察した。

 オールバックの白髪は隠せなかったが、服の上からでもはち切れんばかりに鍛え抜かれた肉体は彼が現役であることの証明であった。


「ようこそ、候補生たちよ。門を潜った瞬間から、人の命を守る責任が始まる。それには、出生も身分も立場すら関係ない。私は貴君らに戦う術を叩き込むだけだ」


 深いバリトンの声に、新入生の間に緊張が漂う。百戦錬磨のイーグレンからすれば、ハルも含めて全員大差のないヒヨッコなのだ。


「本日の訓練の前に、ハル=カルヴァードはいるか」

「え、あ、はい。います!」


 いきなり呼ばれて、ハルはとりあえず片手を挙げた。ここにいますと主張した彼に、全員がハルを見た。


「貴君に預かり物がある」

「預かり物……?」


 首を傾げながら、ハルはイーグレンの前に歩いていく。


「理事長より貴君へ渡す様に言伝を受けている。受け取るがいい」


 そう言って、胸元から取り出したカードを差し出した。恐る恐る受け取ると、何時撮ったのか、ハルの顔写真が張り付けた薄紅のカードだった。


「仮発行という形ではあるが、破砕者(ブリンガー)としての貴君の身分を証明するライセンスだ。無くすなよ」

「身分を証明って、学生証とはまた違うんですか?」

「違う。これが無くては、輝煌武装(レガリス)の個人所持は認められんのだ。それは理事長もそうだが、貴君の望むところではなかろう?」


 灰色の瞳が、ハルの腰のケースに注がれた。青白く点滅を繰り返すキューブをイーグレンは懐かしそうに眺めていた。

 ハルは思わず尋ねた。


「とうさ……父を知っているんですか?」

「問題児であったぞ、あの男は。奴ほど手のかかる男は2人もいまい」

「それはその……すみませんとしか言いようがありません。父が大変ご迷惑を……」

「フ……、貴殿の気にすることではない。話は以上だ。今後の成長に期待する」


 軽く会釈して、ハルは元の場所へと戻った。とはいっても、背の低いセリヴィエットに合わせているので、列の一番前なのだが。


「……どうしましたか?」


 まじまじとライセンスを眺めていたら、怪訝そうにセリヴィエットに見上げられてしまった。


「こんなうっすいカード一枚で、身分が証明されちゃうんだよね」

「セキュリティ対策はされていますよ。クレジット機能もあれば、制限もありますが公的機関への介入権限もあります」

「そうじゃなくて。……これ一枚で破砕者(ブリンガー)だってアピールできちゃうなんて、何だか可笑しくってさ」


 ハルがそう言って力無く笑う。


「父さんに教えられた心構えなんて、カードの持つ権威の前には要らないのかなぁって寂しくなっちゃってさ」

「それは……」

「本日のカリキュラムの説明を行う。心して聞く様に」


 イーグレンに覆い被されて、セリヴィエットは言葉を飲み込んだ。


「今日は、実力測定のため実戦形式の試合を行う。名前を呼ばれたものは中央に移動するように」


 実戦形式の試合。文言の剣呑さに、生徒らがどよめいた。


「おいおい、入学一日目から試合ってマジかよ……」

「流石はロジュニアだな。授業の内容もスパルタと来た」


 イーグレンは彼らの動揺を押しつぶす様にこう続ける。


「私は貴君らを平等に育てるつもりはない。強きものをより強くし、生き残らせる術を与えるのが私の役目だ。よって、見込みがないと感じたものには容赦なく落第を与える。覚えておくがいい」


 イーグレンの言葉が冷酷に響き、クラスメイトが蒼い顔をして黙り込んだ。一方で、普段通りのハルとセリヴィエットは顔を見合わせていた。


「僕、あの人好きかもしれない。良い先生じゃないかな?」

「同意しますよ。力のない人には去って別の道を見つけて欲しいという優しさが声に現れています」


 声を潜めてそんなことを話していると、イーグレンがハルを見た。


「まずは貴君の実力を推し量らせてもらおうか、カルヴァード。ライセンスを受け取るに値するかどうか、確かめさせてくれ」

「分かりました!」

「さて、そうなると相手は決まるか」


 そのまま視線をセリヴィエットに向けた。


「待ってください、ミスターベネトナシュ!」


 列を割って、イーグレンの前に現れたのはライリーであった。


「アイリスベルか。宜しい、進言を許可する」

「彼の相手は俺にやらせてくれませんか!ライセンスを持つ者同士ならば、実力が拮抗しているでしょう。俺にはまだ専用の輝煌武装(レガリス)はありませんが、互いに練習用を使えば条件も同じです」


 ライリーが男子生徒の一人に目配せをすると、彼はハルに短い棒状の機械を手渡してくれた。片手で持つには丁度いいサイズのユニットを起動させると、光の刃が伸びる。


「練習用って言うだけあって、シンプルだね」


 展開された光の剣を数回振り回す。刀身は約1メートルほどで、いつもの銃剣と比較すると軽すぎるくらいに感じるが、練習用ならばこんなものだろうと納得した。


「どうでしょうか、ミスターベネトナシュ」

「ふむ」


 イーグレンは顎髭を摩りつつ、ハルを見下ろした。意見を言えと言わんばかりの視線に、ハルは首を縦に振った。


「僕は構いません。先生の判断を信じます」

「……承知した。ならば、双方準備せよ。第一試合はカルヴァードとアイリスベルでやる。他の者は下がる様に」


 イーグレンに指示され、クラスメイトがぞろぞろと壁際まで下がっていく。中にはどちらが勝つかのトトカルチョを始めている者すらいて、変わり身の早さにハルは思わず笑ってしまった。

 去り際、制服の袖をセリヴィエットが引っ張って、小声で警告する。


「念押ししておくけど、アイツには気を付けなさいよ」

「ありがと。でも、僕は強いから大丈夫」

「怪我をされたら迷惑するのは此方なのよ」


 フン、と鼻を鳴らすとすぐさま猫を被って去っていく。残されたハルとライリーは適度に距離を取って、向かい合った。


「始まる前に言っておいてやる」


 同じく練習用の輝煌武装(レガリス)を起動させ、ライリーは切っ先をハルへ向けた。


「ここはシティで、貴様の様な奴の居場所は一ミリもありはしない。田舎のごっこ遊びでライセンスを得たような奴に、フォンの名前の意味を持った俺がライセンスを持つことの意味を教えてやる」

「……あのさ、質問いいかな?」

「ほう」


 おずおずと手を上げたハルに、しゃべってみろと言わんばかりにライリーは顎をしゃくった。


「そのフォンって何なの?セリヴィエットさんも同じ名前してるけど、家族じゃないんだよね?」

「貴様は本当に無知で愚かだな。なら、退学前に教えておいてやる」


 得意げに口角を吊り上げた。勝ち誇っているとわかる笑い方だった。


「SQとの長い戦いの歴史の中で武勲をあげた家系に与えられる名誉ある称号だ。そして、この俺も栄光を与えられたアイリスベルの家名を継ぐ男なんだ。そして、彼女もだ」


 2人の視線が同じクラスでフォンを持つセリヴィエットに向けられる。


(うっわぁ、すっごい顔してる。嫌いって言ってたもんねぇ……)


 渋い顔をしているのは矛先を向けられた以上に、ライリーと同格に扱われることへの不満からだろう。

 シティについて一つ学びを得たハルは頭を深く下げた。


「ともあれ色々教えてくれてありがとうございます、ライリー君。勉強になりました」

「フン、無学とはいえ礼くらいは言えるらしい」

「でも、気になったんだけどさ」


 ゆっくり顔を上げると、ハルは疑問を口にした。


「フォンの名前はキミのご先祖様が貰ったものであって、血が繋がってるだけで直接貰ってないキミが自慢するようなことなの?」

「「「…………」」」


 瞬間、空気が凍った。ハルにとっては何気ない質問であっても、他者からすれば見事な煽り(カウンター)であった。

 当然、ライリーもそう受け取ったらしく、憤怒の炎を瞳に燃やす。


「貴様、言うに事を欠いて我が家名を虚仮にするか!いい度胸だ、屑!これ以上の会話は不要だ!ミスターベネトナシュ、合図を!」

「うむ、双方構え!」

「え、あ、待って待って待ってください!違うんだよライリー君、僕はバカにしたんじゃなくってね!えっと、何て言えばいいんだろうね!?」

「潰す!」

「試合開始!」


 テンパるハルを他所に、試合のゴングが鳴らされる。

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