第十三遺構・隠蔽部隊、特務六課
大地。
幾層もの岩石と砂の下、遥かに500メートル。
土竜たちの棲み家を抜けた先。そこに、楽園はあった。
神代の人型兵器と現世の人型兵器が相食む戦場。
而して、亜人の一族と人間が共存できる小世界。
そんな、土地。それが
──第十三遺構
「積み出し、早くしろーっ」
「遅れるなっ。点検急げっ」
声が響き合う、作業現場。煤と雑多な品物に埋め尽くされた“搬出口”。第十三遺構に入るためには、
大小50ほどの通路のどれかを通らねばならない。その半数以上は屈まなければ通れない狭いものだ。広大な地下空間に対して狭隘な通路。必然的に大きな通路を確保することが、組織や国家の遺構における力を左右する。
“搬出口”のトンネルから品物が出てくる。今回の便は国の上層部からの圧力で、急遽割り込みで入ったものだ。たまに、犯罪組織による奪取を恐れて、直前まで輸送計画を伏せておくことはある。そういう点では、異常なところはなかった。──が、しかし
「何だよ・・・あれ」
トンネルを抜けてその姿を朝の日差しに晒したのは──
「神代の人型兵器・・・なのか?」
それは、巨大な腕としか形容できないものだった。五本の指を持ち、二の腕の半ばで途切れている。切断されているかのように。現在確認されている中では最大級の“搬出口”だが、腕の太さだけでトンネルの直径に迫る。
「聖国の紋章・・・型式番号2ーXJ・・・まさか、人造のタイタンっ」
そんなことしていると、タイタンが来ますよ──聖国に生まれた者なら誰しも親などから聞いた言葉だろう。人の形をし、人を殺し、町を焼く。神が人を作り給うたのなら、それは神の被造物たる人への冒涜か、人になれなかった泥人形か。とにかく恐ろしい存在として語り継がれてきた。魂を食らって動力とし、骨を取り込んで成長するという怪物だと。
腕に続き、足、装甲板、頭部とおぼしきものまで、続いた。そのどれもが、強化青銅で造られている。装甲板は象牙色の稀少白金。大質量の金属塊が次々と運ばれてくる。そのいずれにも天使の翼と直剣が刻まれている。ギレロール神聖国の紋章だ。
「聖国・・・悪魔に魂を売り渡したか」
“搬出口”の整備士に大な仰信仰心はない。しかし、この所業には苦々しいものを感じた。一体、上層部は何をするつもりなのだろうか。
・・・・・・最後にやってきたのは。
近衛兵の赤い軍服に身を包んだ、銀髪の男。颯爽と鉄道列車から降り立つ。
「貴公らの指揮を執る、ハイロウト=レコーダ」
襟に中佐の階級章をつけた男は、そういって周りを睥睨した。その赤い瞳と視線を合わせ、逸らさずにいられる者は無かった。
人造のタイタン、銀髪の戦士。
それは波乱の予感。戦闘のための力。