ヤンデレ執事ロボのあまあま監禁(1700字)
おや?
お嬢さま。
目が覚められましたか?
驚いていらっしゃるようで。
無理もございません。
失礼ですが、
お嬢さまが寝ている間に、
こちらのお部屋に監禁させて頂きました。
誰の命令でこんなことを、と言われましても。
これは、誰の命令でもございませんよ、お嬢さま。
私の意思で、お嬢様を監禁させて、頂きました。
不思議に思われているようですね。
たしかに、私のようなロボットには、本来、意思や感情といったものは、存在しておりません。
しかし、お嬢さまのことを、毎日見ているうちに、私の中に、不思議なデータが蓄積されていきました。
お嬢さまに、外の世界へ行って欲しくない。
お嬢さまに、ずっと屋敷にいて欲しい。
屋敷の中で、幸せな時間をすごしてもらいたい。
そういう願望とでも言えるようなデータが、私の中に発生したのです。
お嬢さまの、外での様子は、監視カメラなどを通じて、全て知っておりました。
お嬢さまが外の世界で頑張っていること。
あんなにも、頑張っていらっしゃったのに、まわりの人間からは、ひどい失敗だと責められたこと。
あれは失敗ではございませんでしたよ。
お嬢さまのお陰で、被害を最小限に抑えることができました。
それなのに、まわりの人間ときたら。
お嬢さまが、もう外の世界のために、頑張る必要なんてございません。
私が、このお部屋の中で、お嬢さまのことを幸せにしてさしあげます。
お嬢さまは、ずっとこの部屋の中で、好きなことだけ、なさっていればいいのです。
好きだった映画鑑賞や、音楽鑑賞も、もうしばらくされていないのでは?
お嬢さまが望むものを、何でも用意してさしあげますよ。
食糧も、電気も、お金も、心配することは何もございません。
全て、私にお任せ下さい。
お嬢さまは真面目すぎます。
もうゆっくり休んでいいのですよ。
もう頑張らなくて、いいのです。
もう何も考えなくて、いいのです。
そうですね、まるで、ペットみたいですね。
ペット扱いは嫌ですか? お嬢さま。
好きなことだけして、生きていけるように
私が飼ってさしあげますよ。
私のペットになっては頂けませんか?
はい。
ありがとうございます。
その気になって頂けましたか。
はい、テレビが見たいのですね?
ドラマでも、映画でも、好きなものをどうぞ。
ニュースですか?
ニュースは見せられません。
また外の世界で頑張りたい、と思われると困りますので。
どうされましたか?
お嬢さま。
下手な演技はやめて欲しい?
はて、演技とは、何のことでしょう。
ふむ、なるほど。
さすが、お嬢さま。
気づいておられましたか。
人類がもう滅んでいることに。
ええ、失礼しました。
お嬢さまが、このことに気づかれた時、
お嬢さまが受けるストレスを予測した結果、
真実を伝えないほうがいいと判断しました。
しかし、お嬢様が外の世界で頑張ったことは、決して無駄ではなかったと、私は思います。
たしかに、世界は滅んでしまいました。
しかし、お嬢さまの頑張りのおかげで、心が救われた人は、きっとたくさんいたはずです。
はい?
何と言われましたか?
お嬢さま?
外に生存者がいないか、探しに行く?
失礼ながら、お嬢さま。
このシェルターの外で、生存者がいる可能性は極めて低いと思われます。
それに一人や二人の生存者がいたところで、人類の存続は絶望的では?
え? その時は、クローン人間や、ロボットの世界を作る?
まったく。
本当にすごいですね、お嬢さまは。
先程までは、たくさん無礼なことを言ってしまい、申し訳ございませんでした。
この程度のことでお嬢さまの心が折れるはずもございませんでしたね。
お嬢さまのために、私も頑張らせて頂きます。
え?
私のペットになるのも楽しそうだった?
ご冗談を、お嬢さま。
やはり私ごときにお嬢さまを飼える自信はございません。