010 水道橋1──買い物
──終業式が終わり、夏休みが始まった。
総武線に乗り、水道橋で降り、改札へと続く階段を降りる。
“環”の地元だ。
今日は彼女の家で、一緒に勉強をする約束をしたのだ。
あの日、国分寺のマクドナルドで、彼女から差し伸べられた手を、わたしはしっかりと掴んでいた。
◇
「た、環、待たせてごめん」
なんだか、まだまだぎこちないけど、最初の一歩だ。
そんなわたしに、しかし、環はジト目で声を投げ掛けた。
「ちょっと、葵? 何なのその格好?」
そう言う環の格好は、細身の黒のジーンズに、ピンク色のワンピースっぽい丈の長いTシャツ。足元は黒のミュール。
オシャレの才能が皆無のわたしに、詳しい解説は出来ないが、一言で言って女の子らしく、可愛いかった。
まるで雑誌に出てくる女子高生の読者モデルのようだ。
対するわたしは、ダボっとしたジーンズに、どうしようもなくセンスのないTシャツを着ていた。足元は学校指定のローファーだ。
髪はまとめることもなく、無造作に肘の下あたりまで垂らしていた。
珠綺を前にすると、Tシャツの胸に描かれている意味不明な横文字が、急に恥ずかしくなってきた……。
「……はぁ」
環は半眼でわたしを見た後、溜め息を一つ。
「勉強の前に、今日は葵の服を買おう?」
「これじゃ、ダメ?」
「ダメ」
「……はい」
環の冷たい声音に押し込まれるようにして……わたしは承諾せざるを得なかった。
「取りあえずユニクロ、行くよ」
「うん……」
そんなこんなで、二人は東京ドームに併設されたショッピングモールへと足を運んだ。
◇ ◇ ◇
わたしの服選びは、トントン拍子に進んだ。
これにこれを合わせて~とか言いながら、環が服をいくつか見繕ってくれた。
わたしは、言われるがままに試着して購入し、その場で着替えた。
環が選んだのは黒と白のボーダーTシャツと、ロングのギャザースカート。
うん。さっきに比べて、かなり野暮ったさが薄れたような……。
聞けば、環が今着ている服は、すべてユニクロなのだそうだ。
わたしと違って、高級ブランドのように見えるけど……。
履物は隣の店で、環と同じような黒のミュールを揃え、涼しい感じに仕上がった。
「あと、葵は化粧だね」
『葵は』とはどういうことなのだろう。
ジト目で環を見返すと、環はしまった! というような表情に変わり、目を逸らしながら、もごもごと何か言い訳めいた言葉を並べ立てた。
「環くらい可愛いと、化粧の必要がなくていいね」
「え、えっと、そんな変な意味で言ったんじゃなくて……一般的な話として……もう高校生なんだし、メイクくらい覚えておいた方が、いいかなって思って……」
そんな環のまごまごとした気まずそうな仕草が、なんとも可愛い。やはり美少女は特だ。
「冗談だって。服、選んでくれてありがとう。メイクも良かったら教えて」
そう言うと、環は気まずそうな表情から、ホッとしたような表情に変わり、最後はニコッとした笑みを作った。かわいい……




