8話 ハートビートまでの旅 5日目6日目
大興奮したグリーンフラワーを出ると運河と麦畑が延々と続く大穀倉地帯だった。
「どこまで畑なんだ」
「これも運河のおかげだよ、水の心配もないし いくら作っても売れるからな」
「運河すげえ」
運河に沿って道幅が6メーターもある並木道が続いている、そこを親子は歩いている。
たえず馬車が見える歩く人の姿も多い、この国一往来の激しい場所のようだ。
「こんな広い道も初めてだ」
「往来が激しいし、それと魔法部隊の迅速な移動の為だな」
「魔法部隊?」
「王都のハートビートは魔素が多いところだ」
「魔素?」
「魔力の元」
「ふ~ん」
「魔力を回復するには魔素の多いところの方がいいんだ」
「わかるけど、わかんない」
「他の国が攻めてくる場所がグリーンフラワーなんだよ、魔法使いが魔法を使うと魔力がなくなって次の攻撃ができなくなるんだよ」
「うんうん」
「魔力が無くなった魔法使いをハートビートに移動させて回復したらグリーンフラワーへ送り出すんだ」
「忙しいね」
「だから立派な道路が必要ってことだ」
「そうなんだ」
ストアはこの国の重要な事を聞かされた。
魔素というのが重要ということその為に大きな道路まで作るということ。
しかしこの魔素分布が世界を形作っていることまではこの時はまだわからなかった。
「なんか、馬糞臭い」
「そろそろ町に着きそうだな」
そうこうしている内にインタグレートに到着した。
大きな厩舎と倉庫群が目立つ町だ、穀物の集積と移動のための馬がたくさんいる。
ストアが臭いといったのも競馬場の近くで臭う匂いに反応したみたいだった。
「明後日は王都のハートビートだ」
「たのしみだな」
平地なので二人のペースでははやく着いてしまう、なのでストア親子は町を散策したが必要なものが必要なだけあるコンビニみたいな町だった、稽古もした、お腹が空いたので宿屋に戻って食事をして眠った。
次の日、今日も昨日と同じような道が続く。
「そうそう 冒険者養成所って何をするところなの?」
「冒険者養成所は一応、冒険者を養成する場所とは言っているが身分保障のための冒険者カードを利用して戦争になった時に強さの基準や得意なものがすぐにわかるように国が作った施設なんだよ、それが結果的に国力をあげることにも貢献したんだ」
「戦争の為なんだ」
「徴兵はないけどイザとなったときに便利だろう」
「父さんはB級だよね」
「素材を売ったりするから自然とクラスもあがるんだよ」
「素材を売るだけでクラスが上がるの?」
「BやC級の魔物の素材を売ったりするからな」
「B級ってどれくらい強いの?」
「人口比でいえば上位1%、冒険者なら上位10%ぐらいだ」
「強いんだね 強いけど 真面目に冒険者してないのにB級って」
「何を言っている 私こそ本物の冒険者だ」
「へー」
「いつも薬草を持って帰ってくるだろう」
「それがどうしたの?」
「貴重な薬草を専門に集めてきてくれる冒険者がいないし、新しい薬草なんか自分で探すしかないんだよ」
「そうだったのか やっぱり、健康丸ってすごい薬草使ってるんだね」
「健康丸と究極のエリクサーの為だな」
「こだわりすぎだよ のろいだ 呪われた薬師だ」
「ワッハッハ そうかもしれん」
「何をするところか全然、言ってないよ」
「ワッハッハ そうだな 適性を調べたり冒険者生活に必要なことを教えてくれるそして訓練をする場所だ、それとパーティーを探す場所でもある」
「適正?」
「魔法使いの素養があるかどうか? 俊敏性・力持ち・器用さ なんかで適性をみてくれる」
「父さんはどんな適正があったの?」
「力持ち以外はすべてよかったよ」
「どんな職業が向いてるって言われたの?」
「暗殺者か盗賊って言われたよ」
「僕は暗殺者か盗賊に毎日 訓練を受けていたのか」
「ワッハッハ そういうことだ」
「それとパーティーって?」
「冒険者の仲間集めだよ 同年齢の仲間を養成所で生活しているうちに探すんだよ」
「ふ~ん」
「普通は地元の子同士でパーティーを組むものだけど 能力があるもの 他の場所で活躍したい人同士が仲間を見つける為にもあるんだ」
「父さんはパーティーを組んだの?」
「組んだよ 最強パーティーって言われたよ」
「どんなパーティーだったの?」
「前衛の戦士 前衛の僧侶 前衛の暗殺者だったよ」
「全員 前衛?」
「僧侶のやつが全然、活躍できないって 先頭に立って杖で殴りまくるようになったんだよ それからは魔物が出たら早い者勝ちってことに」
「狂犬だね」
「なぜ パーティーのあざなを知っている」
「ぐえ~~~~ 本当にそう呼ばれてたんだ」
狂犬と呼ばれたパーティーを組んでいたのを知りショックを受けるストア、自分はちゃんとしたパーティーを組みたいと思ったのであった。
まだまだ聞きたいことはあったが明日も一緒なのでその時に聞こうと決めたストア。
「んっ また馬糞くさい」
「そろそろ着きそうだな」
目の前の町は前の町とそっくりだった。大きな厩舎と倉庫群がそこにはあった。
目的が同じ為に似たような配置になってるんだろうとストアは思った。
「親子の旅も明日で終わりだな」
「刺激があってあっという間だったよ 父さん」
「ワッハッハ これからは刺激だらけの毎日が待ってるぞ」
こうして旅の最後の夜は色々なことを知る旅になった。