7話 ハートビートまでの旅 4日目
ストア親子の旅は続く、町から離れてしばらくすると大きな河が見えてきた。
「大きな河だね」
「マグナフルーメン川だ 大陸で一番長い大河だ」
「海まで続いてるの?」
「もちろん 続いている」
「海もみてみたいな」
「海を一度見るのもいいんじゃないか 海は見える範囲 すべて水なんだぞ」
「想像できないよ、全部が水だなんて」
その話を聞き、海の見える場所へ行くのを夢見るストアであった。
歩き続けるストア親子、山もなく丘もない大地になり魔物の気配もなくなった。
「魔物の気配を感じないね」
「この付近は国のメインストリートだから、魔物は寄り付かない 森も無いしな」
「そういえば人の往来も増えたよね」
「この次の町はこの国の2番目の大都市のグリーンフラワーだ 人口は20万人も住んでるんだよ」
「20万人も住んでるんだ」
「国中の物資が集まるところだよ 貿易港でもあるんだよ 大きい船もみられるぞ」
「やっぱり世の中は凄いんだね 陸のない水 大きな船 他の大陸にも行けるかもしれないな」
「ワッハッハ さすがに他の大陸には行ったことがないぞ ストア」
父のチェーンさえ行ったことのない場所があると知りワクワクするストア、しかしストアはどういう道を進むべきか決めてはいない。
「グリーンフラワーがここまで栄えたのはハートビートまで続く運河の出発点だからだよ」
「運河?」
「船の道路さ、馬車より多くの物資を楽に運べるんだよ」
「ヘー」
「この運河のおかげでこの国は繁栄してるといってもいいくらいだよ」
「どうして」
「穀物がいくらできても運べないとどうする?」
「作ってもしょうがないよね」
「そうだ 運べるから売ることができるんだよ 大きな河があれば他国にも売れるんだ」
「だからグリーンフラワーが繁栄してるんだね」
とストアにこの国の繁栄の理由を語った、しかしまだまだ語り足りないチェーンだった。
「大きい城壁が見えてきた あれがグリーンフラワー」
4階建てのビルの高さがある城壁がどこまでも続いてみえる。
「すごい、本当にすごい」とはしゃぐストア
「圧倒されるだろう ストア」
そうこうしている内にグリーンフラワーにたどり着いた。
港には大きな船が何隻も停泊している、そして大きな倉庫群、荷物を満載した小さな船が運河を行き来している、通りは石畳で舗装され大都会であることをいやが上にもわからせてくれる。
ストアは目をキョロキョロさせ田舎者丸出しでチェーンも苦笑するしかない。
「ストアよ 落ち着け スリに会ったらどうする?」
「だって観るものすべて初めてみるものばっかりなんだよ」
「私が一緒でよかったな 魔物にはやられなくても町では簡単に倒されそうだ」
しかし今日だけは子供のままでいさせてもいいかと考えるチェーン、自分の若いころを思い出して一人にはわからない赤面顔になって警戒を続けるチェーンであった。
興奮冷めやらぬストアをなんとか落ち着かせ、街の薬屋まで行くチェーン、そして裏口から店員に声を掛けた。
「おっ チェーンさん 待ってましたよ」
「久しぶりです」
「となりの子は?」
「息子です、冒険者養成所についでに連れて行こうかと思いまして」
「おや、そうなのかい、徴兵みたいなもんだからね」
「成人したということで」
「ところで今回は何本、売ってくれるので」
「300本ほど」
「もう少し回してくれないかね」
「家族経営なものでこれ以上は無理なんですよ」
「大銀貨7枚出してもいいんですよ」
「本当に無理なんです、すいません」
「ほかの国の人も欲しがる人が多いんですよ」
「いや~本当にすみません」
チェーンは謝ってばかりだ。
こんなにポーションが人気だとはストアは知らなかった、3割は自分が作ってると言いそうになって自分で口をふさいだストア。
「何本でも買いますからね」
「それでは失礼します」
親子二人で頭を下げて店を出た。
「大人気だね」
「ポーションだけはね」
「健康丸のこと何も言われなかったね」
「即効性に目がいくんだろうな・・・」
「病気になってもすぐ治るのにね」
お金が入ってホクホクのはずが微妙な空気になる二人。
その頃、ドラック家では、
「ほっほっほ ポーションの仕込みが終わったな」
「メインの健康丸を作りましょうか」
「うんうん」
とポーションそっちのけで健康丸の今後の改良について語り、製造するおじいさん達の毎日が続く。
どうりで増産できない訳である。
宿屋に着いたストアはなかなか眠りにつけなかった、なので外に出て無心になるまで素振りをして、ベットに入り眠りについた。
それをそっと見守るチェーンもそのまま眠りについたのであった。