6話 ハートビートまでの旅 3日目
今日も稽古と朝食をすませた親子は今日も旅路に出る、
そして、ふとした疑問をストアはチェーンに言った。
「歩いている人がほとんどいないよね」
「ストアは知らなかったか、ウルルは本街道をはずれているから来ないがこの宿場町は馬車の定期便が出てるから普通は馬車に乗り込むんだよ」
「じゃーどうして歩くんだよ」
「もちろん修行の為だ」
「修行かぁ 強い魔物が出てくるの?」
「ゴブリンより強い魔物は出てくるかもな」
などと会話をしてると、お約束のように気配を感じるストア。
「気配が多い 山賊かな?」
「これは魔物の気配だ」
「えっ」
街道に沿った林を移動してウォーグウルフの集団がストア親子に襲い掛かってきた。
ウォーグウルフは狼の魔物だ、集団で敵をお襲うことを得意としている、魔物の中では弱い種類だが集団で襲われると冒険者でも殺されることがある、恐ろしい魔物だ。
現実でもアカオオカミのドールという種類の狼は虎でさえ倒してしまうものもいる。
ウォーグウルフは統率された動きで親子の周りを囲み包囲網を完成させた。
「ストアよ 敵は回りを囲んで徐々に半径を縮めてくる 半径を縮められたら防御が不可能になり徐々に体力を奪って倒されるぞ」
「わかったよ」
理解したと判断したチェーンはウォーグウルフを蹴飛ばし、後方に下がった。
ウォーグウルフ達はチェーンをみて攻撃しようとするがリーダーが吠えるとストアに対象を絞る、しかしリーダーはチェーンを見据えて、ストアは子分たちに任せるようだ。
(なんだよ こいつらも俺一人で相手にするのか さすがに8匹同時に攻撃されたら対処は不可能だよな)
などと考えているうちに包囲網を絞るウォーグウルフ達、牙をみせながら威嚇を繰り返してくる。
ストアは前に歩き始めたそして徐々に早足に、前にいるウォーグウルフの吠え声が更に大きくなり威嚇しながら後ずさりする、しかし後ろにいたウォーグウルフは前に突進して襲い掛かってきた、
ストアはすかさず襲いかかってきたウォーグウルフの額に剣が刺さる。
「キャウ」
「1匹目」
どんな強い動物でも敵に襲い掛かるのは不意打ちや後ろからだ、ましてや囲んでいるのだから後ろから攻撃をしてこない訳がない、森で魔物と戦ってきてストアは前よりも後ろの気配をいつも感じていた、そして襲うときは直線的であることも知っていた。
そして毛の多い動物や魔物を斬ることは難しい試し切りでもそんなことをする人はいない、そして動きに隙ができやすい、集団と戦うときは素早く基本の構えに戻らないといけない、パワーがあり近づかせないで蹴散らす方法もあるがストアはまだ子供でパワータイプではなかった。
ストアは止まると突然走るを繰り返しながら飛び出してきたウォーグウルフの額や口に剣を刺し続けた、3匹を倒した後、リーダーは吠え、親子の側から離れていった。
「お父さん どうだった?」
「ウォーグウルフ達の呼吸を合わさせないようにうまく動いたな」
「こんな感じでいいんだね」
「囲まれたことは失態なんだがな」
「父さんもね」
「ワッハッハ」と親子で笑った。
そして討伐部位を取り、また歩き始める親子。
今回は囲まれた相手に対して同時攻撃をどう防ぐかを実地で学んだストア。
狼だけに攻撃するときは直線的だったのでカウンター攻撃が効果的だった。
「町が見えてきた 大きい町だね」
「レインドロップという町だよ、ハートビートに近づくほど大きな町が増えて来るぞ」
「うぉー 町巡りしたいなぁ」
とか言いつつ町に入る親子、ウォーグウルフの討伐部位の為に冒険者ギルドにより、宿屋へ向かいながら町を見て回った、ストアは知らなかった、この国の十都市にも入らないということを。