5話 ハートビートまでの旅 2日目
日の出と共に起きたストア親子は、宿の中庭に出て稽古に汗を流した、そして朝食を終え、宿屋を出た。
「ストアよ 町を少し出たら森に少し入る」
「えっ どうして」
「どうもこの辺りが盗賊の縄張りらしいからな」
「ふーん」
町から離れて少し歩いてると森が見えた。
チェーンは街道を外れて森に向かった、そして森に入ると。
「よし ストアよ 今から背負子バージョンに切り替えるぞ」
「あれ本当に使うの?」
「当たり前だ 使わないのに作るわけがないだろう」
親子はリュックから大きなきんちゃく袋を取り出すと背負子を出しリュックをきんちゃく袋に入れて、背負子を背負って街道に戻り歩みを進めた。
「ストアよ 大人数の気配を感じたら 俺に教えろ 正解だったら森の方向に進むから着いて来い」
「最初から森じゃダメなの?」
「大事なのは実戦で気配を感じることだ」
「戦うの?」
「戦わない 討伐は親子ですることじゃないだろう」
「・・・」
2時間ぐらい歩き続けていた時にストアは大人数の気配を感じた。
隠れられる場所が多く、木が生い茂っていて少し暗い場所だった。
「いるね」
「正解だ ストア」
チェーンは何気なく森の中へ向かった、もちろんストアも続いた。
いつも森を歩いているチェーンには不自然さがまったくなかった。
「気配を感じるか ストア」
「う~ん もう 感じない」
「正解だ しかし相手の方がうわての場合もあるからな みつかっても村人にみえる背負子バージョンなんだよ」
「それ もしかして気に入ってるの?」
「ワッハッハ わかるか ストア」
「わかるよ 親子だもん」
今度はチェーンが先行して森を歩くことにした、さすがに森達人のチェーン、盗賊の気配を感じながら迂回して街道に戻ってきた。
本来チェーンの力なら盗賊に密かに近づいて、盗賊を倒せるのだが、戦わないで済む相手とは戦わないというのがドラッグ家では家訓の様に守られている、一人または少人数で森深くまで行くことが多いので自然に培われた家訓であった。
ボス戦を想定した場合はボスまではできるだけ戦わないで体力や魔力を温存するのが鉄則なのと同じだ。
ドラッグ家の場合は手に入れたい薬草になる。
「もう盗賊は出て来ないの?」
「いや わからない 出てこないとは思うが」
「じゃ 気配がしたら教えるね」
それからの道中は何事もなく次の宿場町に到着した。
「今日は魔物がでなかったね」
「討伐部位がないから野宿だな」
「ええ 野宿するの?」
「ワッハッハ 冗談だ」
今日もチェーンの定宿に泊まることになった、もちろん割引もしてくれる。
盗賊に始めて出会ったストア、戦いはしなかったが初めての経験だった。
人を殺してでも奪う行為を生業とする人たちを実感したストアであった。