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56話 ストア ビエラー薬店へ行く  冒険者養成所 58日目

 魔法の授業が終わってストアは父のチェーンに養成所に来てもらうためにビエラー薬店に言伝てをお願いするために養成所を出た。


 人通りが多くなるまではもちろん身体強化でアシストして走る、傍からみれば坂道を下って飛んでるように見える、でも街中では5分も走れば人の多い場所になってしまう、仕方がないのでそこからは歩いてビエラー薬店へ行くのだった。


 結局、1回しかポーションを卸せなかったなと思った時にはもうビエラー薬店の前に来ていた。 


 いつものように店の裏へ行き声を掛けるストア。



「すいません」


「おや ストア君 今日はなにか用かい?」


「はい 実は今週ぐらいに父が来ると思うんですが来たらできるだけ早く冒険者養成所に来て欲しいと伝えて欲しいんです」


「大変なことでも起こったのかい」


「大変なことでもないんですが仲間が父に会いたいと熱望されてるんです」


「ハッハッハ チェーンさんに会いたがってるのかい」


「そうなんです 父が強いと話したら稽古をつけてもらいたいらしいんです」


「へー チェーンさんはそんなに強いのかい」


「養成所では負けたことがないですし父には勝てないですから」


「ふむふむ ストア君も強いんだね それで会いたがっているんだね」


「はい」


「若いっていいねえ チェーンさんにはちゃんと伝えておくよ」


「ありがとうございます」


「ところでもうポーションは作らないのかい?」


「養成所で魔法を覚えているので時間が取れないんです」


「それは残念だね ストア君の作ったポーションも好評だったよ」


「それはよかった」


「時間があればまた作ってくださいよ」


「わかりました それでは失礼します」


「ちゃんと 伝えておくからね」



 ストアは礼をしてビエラー薬店を出たのだった。


 ストアは街に来たついでにお菓子でも買って帰ろうと店をめぐっていると大声を出して走ってる人を見たのだった。



「捕まえてくれ 逃げている奴が俺の財布を盗んだんだ」


 

 追いかけている男が前を通る時に違う男に財布を渡す現場を見てしまったストア。


 盗まれた男がストアの前に来た時にストアは声を掛けた。



「逃げた男は財布をもう持ってませんよ」


「ええ どういうことだ」


「そこの大男に渡してましたよ」



 ギロリと睨む大男


 たじろぐ被害者



「本人しかわからない 財布に特長がありますか?」


「今買った ルイス商会の領収書が入っている」


「なんだ おめえ 俺が盗んだとでもいいてえのか」


「渡された財布を出してください」



 周りに悪そうな男たちが集まってくると周りで見ていた人たちが逃げ出していく、被害者も今にも逃げそうになっていた。



「いい加減にしろ 俺をスリ呼ばわりしやがって」


「コイツを人のいない場所に連れていけ」


「わかりやした」と悪そうな男たちがストアを捕まえようとする。


 

 ストアはもちろん巧みにかわして捕まらない、業を煮やした大男は命令する。



「殴ってでもとにかく捕まえろ」



 悪そうな男たちはついに殴りかかってきた。


 ストアは避けながら軽くアシスト身体強化した足で悪そうな男たちのすねを蹴り、次々に戦闘不能にしていく、そして逃げようとした大男にもすねを蹴り動けなくすると大男の懐から財布を取りだした。



「これですか?」


「本当に私の財布をこの人が持ってたんですね」



 悪い男たちの一人が剣を抜こうとしたがすぐさまストアの蹴りが手首にあたり剣を落として更なる激痛に苦しむ悪い男、涼しい顔をして、被害者との話を続ける。



「中身を確認しますね」というとストアは財布の中からルイス商会の領収書を見つける。


「確かにありました」と財布を被害者に渡すストア。


「ありがとうございます」


「あの この人たちはどうすればいいですか? 田舎者でよくわからなくて」



 そんなことを話していると走りながら二人の兵士が近づいてきた。



「あっ 君はゴブリン退治の少年ではないか?」


「えっ 誰ですか?」


「グンター隊長のお共でドアにいた衛兵だよ」 


「ああ あの時の」


「これはどういうことだ」


「この人の盗まれた財布を取り返そうとしたら襲い掛かって来たので撃退しました」


「ふぅー 軽く言ってくれるね 男5人だぞ」


「ウォーグウルフ達よりは弱いですよ」


「ウォーグウルフに囲まれたら普通は死ぬもんだが少年には朝飯前か」



 痛みでうめきながらその話を聞くスリ集団は顔を真っ青にしていた。


 衛兵同士話をすると一人が走っていった。


「あのぉ もういっていいですか?」


「もう少し話を聞きたいが被害者に聞けばいいか」


「ありがとうございます では失礼します」


「うむ」



 ストアは結局、前に買ったレモンケーキを買ってから帰る途中に早歩きで人通りが無くなる場所まで急いだが、薄い汚れた服装を着た10歳ぐらいの少年たちに囲まれた。



「俺に何か用かな?」


「よくも親方を」と少年たちは一勢にナイフを取り出し襲い掛かってきた。



 ストアは素早くかわすと少年同士がぶつかり合い、ナイフが刺さってしまう。



「痛って」



 それをみてビビる少年たち、その時ストアは素早く動いて手刀で手首にあてナイフを離させ回収していく、少年たちは手首を押さえ悶絶して転がっていく、その間にナイフで刺された少年に近づくと真っ赤になった衣服を外し具合を見ると傷口は小さく浅いようだった、痛みが薄れた少年たちがストアを殴ったり蹴ったりするが無視をしてポーションを取り出し治療すると傷口はふさがったのにまだ苦しんでいる。



「君達 ナイフに毒とか塗ってたの?」


「毒じゃねえ 痺れ薬だ」



 ストアに攻撃して疲れてしまった少年達はそう言うのだった。


 ストアは光魔法を思い出し試してみることにした。


 まずは刺された部分にピュアヒールを掛け、周りにいる少年たちに傷ついた少年の口を開けるように指示してピュアウォーターを口に注ぎ飲ませると苦しそうだった顔が安どの表情に変わった。


 ストアは実際に魔法を試して効果があってうれしかったのだがそんな顔をしてはいけないと顔を引き締めているつもりだったが実際はどうかわからなかった。



「行くところがなかったら教会に行って事情を話して助けを求めればいいよ」



 黙って聞く少年達、そしてストアはそれぞれに銀貨を渡してから、



「そのお金が無くなる前までにどーするか決めてよ」



 そういうとストアは少年たちの前から離れ冒険者養成所へ飛ぶように帰って行った。


 あっという間に去っていくのをみつめる少年の何人かはキラキラした瞳でストアをみていたのだった。




 帰ってからリックに事情を話したのだが外国からの難民の一部が首都のスラム街に暮らしていて犯罪集団もいると教えてくれた。


 そして少年たちは15歳になれば冒険者養成所で訓練を受ければ就職もできるようになるらしい、それまでの間に生き残るために犯罪の手伝いをして日銭をかせいでいるのだろう、大人たちは覚えも悪いし再就職もなかなかできないらしく今日生きるので精一杯で難民は苦労が多いみたいだった。



「まぁ そんなところかな」


「リックはなんでもよく知っていてビックリした」


「グリーンフラワーはそういうところさ」



 やはりストアは外の世界を何も知らないんだなと思った、どんな場所であっても一度は訪ねてみたいと思ったのだった。

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