53話 ピュアヒールに挑戦したいストア 冒険者養成所 57日目
今日で3日連続で光魔法の教室へ行くストア、相変わらず女の子だらけで教室に入るのに躊躇してると元気良く声を掛けてくる女の子の声がする。
「ストア君だぁ」と言って手を握ってくる、よくみるとダコタとブロッサムだった、二人は同じように手を掴み上下に動かしてくる、そんなキャラだったかなとストアは不思議な気持ちだった。
「あれから部屋に戻ってからもブロッサムと練習してたらピュアウォーターができたのよ」
「本当? おめでとう」
「ストア君がここに来てから 2つも魔法を覚えられるなんて信じられない」
「俺はそんなに凄い事をしてるつもりないんだけどね ブロッサムが頑張ったんじゃない」
腕を腰にあて、よくわかってらっしゃるとおおきくゆっくり何度もうなづくブロッサム
そんな話をしていると後ろから抱きつかれた、プニュプニュした触感が背中にあたる。
「もう カトリーヌ 離れてよ」とソフィー
「あら みんな たのしそうだから 私も乗っかっただけなのに」
そういえばこの感覚は近所の家で小犬がたくさん生まれて囲まれた時に似ていると思ったストア、美女とか美少女とかそんなこと関係が無くなってしまっている。
「ストア君もされるがままにならないで」
「みんなそろそろ教室に入ろう」
「もう ストア君 反応が薄い」とカトリーヌ。
「カトリーヌのイタズラ好きはもう知ってるし」
「2度目は効果がなかったわね」
そんなことを言いながら教室に入るストア達、必要な道具を集めて、いつもの場所へ行くのだった。
「カトリーヌは授業が終わった後にソフィーと練習したの?」とストア。
「ストア君ののろけ話ばかり聞かされてそれどころじゃなかったわ」
「もう カトリーヌやめてよ」
ストアはカトリーヌの発言に一喜一憂しているとキリがなくなると思い、華麗にスルーする。
「じゃあ 今日はカトリーヌとピュアウォーターの練習だね」
「やっと一緒にできるわね」
「残りの人はブロッサムにピュアヒールを習ってね ブロッサム頼むね」
うなづく三人。
昨日と同じように今度はストアが先に魔法を掛ける番だ、その前に昨日、うまくいったことをカトリーヌに話す。
「俺が成功した感じだと聖なる水が魔力を通して森の葉からこぼれでてくるというイメージなんだ」
「乙女の涙じゃないのね」
「それなら覚える必要ないよね」
「さりげなく 言ってくれるわね」
「それから 手はなるべく同じ形になるように密着させるとイメージがしやすいよ」
「それソフィーに聞かされたわ 私もしていいのかしら」
「かまわないよ ソフィーには突然して怒られたけど」
「そういうところがカワイイよね ストア君」
「エッ」と少しドギマギするストア。
「うふふ」
気を取り直してコップを前に置き、呪文の前の溜めに入るストア、まだまだ使い慣れていない魔法だけにイメージを固めていく、そしてコップに手を近づけ呪文を唱える、カトリーヌもしっかりストアの手に手を密着させる。
「聖なる光の水よ 悪しきものを洗い流し給え ピュアウォーター」
昨日よりは少し速いペースでポタポタとこぼれ落ちる水がコップに入り、黒い液体が透明に変わっていく、カトリーヌも真剣に指先から出る水に集中していた。
「どう? イメージを固められた?」
「う~ん 自信はないけど」
「大丈夫 カトリーヌは魔法の才能があるんだから」
「そうね やってみるわ」
カトリーヌは呪文前のイメージを固める為に目を閉じ瞑想を始める、そしてしばらくするとゆっくり目を開けると呪文を唱え始める、ストアもカトリーヌの手に手を合わせた。
「聖なる光の水よ 悪しきものを洗い流し給え ピュアウォーター」
水が出る気配がない、最初からできるとはストアも思っていなかった。
「出ないわね」
「ウォーターの時も最初はそうだったよ 今度は俺がするね」
「そうね 続けましょう」
それから3回しても出てこず5回しても出てこなかった、さすがにストアもこれには困った。
「出ないね」
「そうよね 出ないわ」
「今度はウォーターをやってみない?」
「えっ ウォーター?」
「みんなはウォーターでじゃぶじゃぶ出せるからね」
「そういうものかしら?」
今度はストアが先に水を出しそのあとカトリーヌが水を出した。
「やっぱり 水の量が少ないね」
「これぐらいじゃダメなの?」
「というより水の魔法も練習しないと安定的に出せないよ」
それからストアとカトリーヌは5回ほど水を出した後に再度、ピュアウォーターに挑戦することにした。
ストアは呪文を唱えるとピュアウォ-ターの水がポタポタからトトトトとい感じで水が出た、いい感じで量が増えている。
「出る量が多いわね」
「やっぱり練習を続けると効率が良くなって出る量も増えるみたいだ」
「私もできそう 頑張るわ」
水魔法で水を出す感覚を思い出したカトリーヌはより真剣に瞑想してから呪文を唱えた。
「聖なる光の水よ 悪しきものを洗い流し給え ピュアウォーター」
やはり水は出てこないと思った時に汗のしずくのような水がポタリと一滴、コップに落ちた。
「あっ」
「これってピュアウォーター?」
「一滴だけどピュアウォーターだね」
「ありがとう ストア君」
「ウォータとピュアウォーターの練習を同時にした方がいいみたいだね」
「そうね できたんだから あとは練習あるのみね」
それからもウォータとピュアウォーターを交互に続けると少しづつだがピュアウォーターの水の量が増えていったのだった。
最後の方はカトリーヌはちょっとフラフラしだしたので魔法の練習をやめることにした。
「魔力切れぽいね」
「私 こんなに続けて練習したことなかったのよ」
「一応 できるようになったんだし 今日はこれぐらいでいいよね」
「私は満足よ お礼にキスしたいけどソフィーが怒るからやめとくわ」
「ドキッ」さすがにこれには驚いたストア。
カトリーヌはスポーツで勝ったような高揚感に包まれていた。
ソフィーとダコタとブロッサムはどんな感じなのかなと近づいたら、順番をめぐって揉めていた。
「私に変わってよ」とソフィー
「ソフィー 呪文唱えるまでが長いのよ」
「でも交互にするのがルールじゃない」
「私なら2回唱えられるんだから私が2回でソフィーが一回でいいじゃない」
ブロッサムは困った顔をして二人の顔を交互に見ていた。
「ソフィー ダコタ ブロッサム 調子はどう?」
「ねえ ストア君 聞いてよ 交互に変わってくれないのよ」
「それはソフィーが遅いからって言ってたのよ」
「う~ん 困ったなぁ でも ダコタ 交互にしてあげてくれない? ダコタは終わってからも練習できると思うし」
「そうねえ ストア君がそういうなら交互でいいわ」
「もう ストア君が言えばすぐ納得するなんて」
「ストア君の言うことを聞いておけば魔法をすぐ覚えられるんだもの」
「いや ダコタ そんなことはないと思うよ たまたまだよ たまたま」
「たまたまでも あっという間に覚えられたんだから」
そんなことを言ってるうちに授業の終わりが近づいてきた。
「そろそろ教室に戻ろう」
「そうね」とみんなうなづく。
「ブロッサムもごくろうさま」
にっこり微笑んでストアの手を握り上下に動かすのだった。
満足げなカトリーヌ、不服そうなソフィーとストアとダコタに手をつないで御機嫌のブロッサムといつものダコタという感じで教室に戻るのだった。
結局、ストアはピュアウォーターの練習をして量が増えたけれどピュアヒールの魔法には挑戦できなかった。




