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2話 家出前の最後の稽古

 今日もいつものように日の出とともに起きたストアはいつものように顔を洗い口をすすいで、木刀を持って庭に行くと男家族が全員集合していた。


「おはよう 父さん おじいちゃん達も」


「ほっほっほ 今日も寝坊せず来たようじゃな」


「ワクワクして眠れんのじゃないかと思っておったぞ」


「うんうん」


「ストアよ 今日でしばらくの間は家族みんなでの朝の稽古もできなくなる、稽古の最後に打ち込み稽古をして、今の実力をみんなに知ってもらう」


「わかったよ」



 ストアの父のチェーンは強い、冒険者としてBランクなのだが各地の森の中に入り込み、

新たなる薬草を求めて冒険者も踏み込まない未踏の場所まで行くことがあるのだ。


 この一族は健康薬の為ならなんだってするクレイジーな一族であった。


 その一族の元、6歳から真似っこをしながらストアは剣を振った、振り続けた、

しかも無駄な動きはしない、踏み込んでも音は出さないように注意を受けていた。


 滑らかに無駄なく静と動の狭間にストア家の極意がある。


 ストレッチをして素振りをし、確認する、そして素振りをし確認を繰り返し、体を整えてい心も体も定まったストアであった。



「ストア 試合用の剣だ」



 試合用の剣とは本気の一撃なら折れてしまう剣のこと、こんなものまで用意してるなんてさすがドラック家。



「ほっほっほ では始めるがよい」


「ストアよ 一度でいいからチェーンにあててみよ」


「うんうん」


「ストアよ いつでも来い」



 ストアは音もなく移動し始める、右に左に前に後ろに、よく見ないとわからない動きで、ドラッグ家では気配を消すことが重要視されている。


 森で魔物と戦う事が想定されていて、単独行動で森を移動する場合、できるだけ戦わず、戦うときは忍び寄り一撃で倒すのが理想とされる。


 すぅー息を吸い込み静かに吐く、強い風が吹きチリが舞う、その瞬間を逃さずにストアは飛び込み一撃をあたえようとした。


 打ち込んだ一撃は見事に空振りになり、チェーンの一撃があたる。


「バキッ 痛てーーーー」


「ストア、今から攻撃しますって、まるわかりだぞ」


 それから、何度もチェーンの攻撃をまともに受けてしまい、そのたびに折れる、このまま一度も剣をあてられずに旅に出てしまうのか?


そんな事を思いながら痛みに耐えるストア、みかねた、ひいひいじいさんのショップが声を掛ける。



「ほっほっほ チェーンよ 気配ありで攻撃してみぃ」


「どのくらい強くなったか わからんからなぁ」


「うんうん」


「では気配ありでいくぞ、ストア」


「はい」



 ストアはさっきの戦いとは別人のようにチェーンの一撃をかわした。


 スピードは変わらないのだが攻撃しようとする気配がある。


 目の動き、筋肉の動き、闘志、殺気、踏み込む音、これらはすべてサインだ。


 バッテイングセンターに行ったことがあるだろうか?


 もし音もなく玉が出てしかも球が黒かったら打てるだろうか?


 普通ならまず打てないプロでも打てない人はあらゆる情報にアンテナを張って対応しているのだから。


(これならイケる)


 気配の方向をかわし、打ち込む、しかし、かわされる、


 父はニヤリと笑う、そうだ、打ち込もうとするな、打ち込もうとすると読まれる、考え事をしてると打ち込んでくる、なんとかかわし続ける、再び強い風が吹きチリが舞う、その時、ストアは閃いた。


(俺は剣を持っていない、父の前で舞っているだけだ)


 そして再びチェーンの剣がストアを襲う、見事にかわすとストアの剣がチェーンの視覚から消えた。


 今までわからなかったチェーンの視覚領域が今のストアにははっきりとわかった。


 戦いを忘れた剣は殺気を隠し自然と一体化する。


 そして剣筋のわからないストアの剣がチェーンを襲う、チェーンはよけきれず当たってしまう。


 しかし剣は折れなかった、チェーンは見事に力を逃すように動いたからであった。


 ストアは初めてチェーンに当てられる領域に侵入したのだった。


 ただし気配ありで・・・。



「ほっほっほ ストアよ 何か掴めたようじゃな」


「わしの若い頃よりは強くなってるのかもしれん」


「うんうん」


「ストアよ 今の一撃はよかったぞ 自然すぎて打ち筋が見えなかった」


「父さん 今のでいいんだね 旅に出ても、今日の事は忘れずに毎日、稽古するよ」


「ほっほっほ ストアよ その心がけを忘れるんじゃないぞ」


「わしらは忘れてばかりじゃけどな」


「うんうん」



 こうして家出前の意義深い朝の稽古は終わった。


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