22話 リタ ストアにケンカを売る 冒険者養成所訓練開始 21日目
昨日の約束通りリックはクリストファーに剣の基本を教え始めた。
クリストファーは家の影響で包丁を使うのはプロなのだが武器を使うのはお話にならないレベル、しかしなまじ怪力があるのでそれで済んでいたのだった。
しかし怪力だけではどうにもならない相手が出てきた以上、クリストファーも強くならなければならないという自覚が出てきたのだった。
それに自分に対して剣を教えてくれる、教わってもいいと思える相手に出会えるのはこれから先にはないかもしれない、そう考えたのかもしれない。
「まず 攻撃したら 下がるだ」
「どうしてだ」
「クリストファーは特に大振りするだろ」
「ああ 気持ちいいぜ」
「大振りしたら次の攻撃はどうだ」
「間が空くな」
「だから下がるんだ 下がりながら次の攻撃の準備をするんだ」
「ああ わかったぜ」
「まずそれを練習して、それが当たり前になるようにならないとな」
リックは手本を見せ、ブーンと振った後に下がって元の形になった。
それをクリストファーも真似る、ブーンと振った後に下がった。
「もう イケる」
「ダメだ クリストファー 最低でも1週間は訓練しないといけない」
「つまんねー」
「強くなるには続けるしかないよ それに試合も禁止だよ」
「そりゃないぜ」
「身につくまでに試合に出すと直らないんだよ クリストファー」
「そうか オヤジみたいなこと言うな でも つまんねーよ」
「このままじゃ 子分達にも負けるよ」
「う~ん それは困るな」
「すべては君次第さ」
渋々納得するクリストファー、ボッチで素振りを繰り返す、いつにも増して凄い音を響かせていた。
クリストファーの子分達もリックに教えてもらいたいと言ってきた。
彼らも商家の息子で移動中に魔物や盗賊に襲われるかもしれない、護衛の者に守ってもらえばいいが、できるなら自分の身だけでも自身で守りたい、それに教えてくれるものがいれば、ちゃっかりそれに乗っかるという商人魂も持っていた。
クリストファーが教わる以上、遠慮する必要がなくなったのも大きい。
リックは基本的な型を教えて、あとはクリストファーと同じことをするように言った。
「僕らも自分自身を守るぐらいにはならないとね」とリック、
子分達もうなづくのだった。
それからしばらくして、リタが稽古している場所に来た、もちろんオリアンティも一緒だ。
「よう ストア」
「リタ 何の用」
「昨日、打ち込める武器を作ったって聞いて、気になって来たのさ」
「これだよ」と武器を手渡すストア
「へー こうなってるんだ」と色々観察するリタ、そして素振りを始める
「ブーン ブーン」と結構いい音が鳴っている、女性が振っているとは思えないほどだ。
回りにいる仲間たちの注目を集めていた。
「ストア 私と戦ってみないか 結構強いぞ」
回りの仲間がクスクス笑ってる。
「なんだ 弱いと思ってるのか」
「そうじゃないけど」とストア
「ストアぐらい簡単に倒せる」
「ハッハッハッ」とみんなが笑ってる
リタは回りを睨み、
「戦って実力をみせてやる 来い ストア」
どうしようという顔をするストア。
オリアンティがストアに「こうなったら 引かないよ」と言われて、
渋々、新しい武器を取りに行くストア。
「負けたら承知しねいぞ」とアレクシス
「手を抜くなよ」とリック
「わかったよ」ととぼとぼ歩いてリタの前に立つストア。
「リタ いつでも いいよ」
言った瞬間、リタの剣がストアを襲う、スルリとかわしてリタの手首にストアの剣があたる。
「バーン」
「痛い」とリタ、そして呆然とする。
駆け寄るストアとオリアンティ。
「大丈夫?」と二人同時に言った。
「ああ 大丈夫 しかしストア なんだい今のは」
「避けて攻撃しただけだよ」
「今まで稽古したり見てきたけど、ストアみたいな動きをするのは初めてみたのさ」
「ああ そうか 我が家代々の型みたいなものかな?」
「伝承してるのか?」
「う~ん 強制されてないけど 伝承といえば伝承かな?」
「まあいい もう一度 私と戦え」
「わかったよ」
リタは闘志を失わずにストアに向かって行った。
しかし何度、攻撃してもストアには当たらない、集中力が切れてきた時にストアの攻撃が決まる。
「バーン」横っ腹に剣が当たった。
「リタ 納得した?」
「悔しい ストア 生意気だぞ」
「そう くやしがるな みんな当てられないんだ」とアレクシス
「エッ」という顔をするリタとオリアンティ
「そうなんだ」
「家ではストアでも勝てないぐらい強い親がいるんだ そりゃ 強くなるだろ」
信じられないという顔をするリタ。
「薬師だったな」
「家では自分達で採取するから魔物と戦う事が前提なんだよ」
「戦う薬師ってか」
「そうだよ」
「ワッハッハッ おもしろいな ストアは いや ドラッグ家は」
「そうだよな ワッハッハッ」 一同笑ってる
何が面白いのかわからないストア、未だに自分の実力を測りかねているストア、この少年の未来も未知数なのであった。
この時も実は「ブーン ブーン」と音が鳴っていた、空気を理解していないもう一人の男、クリストファーの素振り音が鳴り続けていたのであった。




