21話 安くてうまいゴロゴロ亭 冒険者養成所訓練開始 20日目
それからは変わりのない日が続き2回目の休日が来た。
「今日は武器を取りに行く日だね」
「ストアもくるか」
「俺も行くよ」
そういうことで朝食を食べて食堂を出るとアレクシスが待っていた。
「おはよう アレクシス」
「おはよう リック おっポーションもいるな」
「おはよう アレクシス」
「ポーションも来るのか?」
「俺もはやく見たいんだよ」
「そうかそうか みんな楽しみにしてんだな ワッハッハ」
そういうことで結局は稽古仲間全員で行くことになった。
「何本くらい注文したの?」
「30本だ 剣が15本 槍が15本だ」
「本当にはやくみたいな」
「じゃ~ みんな 行こうか」
アレクシスを先頭にガヤガヤ言いながら歩きだす。
ストアは見慣れない場所まで行くとキョロキョロと眺めている。
アレクシスはリックに色んな店の話を聞いているようだ 子分達も聞き耳を立てている。
クリストファーは昼食の店の話をしていた。
そんなことをしている内に防具工房についた。
ストアはどうして防具工房なのか不思議だった。
「すいません アレクシスです 親方いますか?」
「おっ アレク坊ちゃん いらっしゃい」
「坊ちゃんはやめてくれ」
みんなはクスクス笑っている。
「出来てますか?」
「できてやす 今 持ってこさせるんで」
職人たちが出来上がった武器を持ってきた。
「確かめてもいいですか?」
「はい もちろんです 坊ちゃん」
アレクシスの目が少し血走った。
アレクシスは剣を持った、剣の重さはちょうどいいか調べているみたいだ。
次々に持って丹念に調べるアレクシス、そこには仕事している顔のアレクシスがいた。
「重さもいいかんじだし 先の皮もいい感じに出来てる」
それを聞いて満足そうな親方。
「振れる場所はありますか?」
「はい では こちらへどうぞ アレク坊ちゃん」
アレクシスは我慢しながら中庭へ誘導された、みんなも一緒についてくる。
「ここを自由に使ってくださってかまいやせん」
「わかった しばらく使わせてもらう」
アレクシスは剣を一つ選び、素振りをする。
「ブーン ブーン」
と剣が唸る。
みんな、話すのをやめてアレクシスに注目した。
「リック 相手をしてくれ」
「わかった」
剣を持ってアレクシスの前に立つリック。
「攻撃するから剣で受けてくれ」
「いいよ」
アレクシスの剣がリックの剣に当たる。
「バシン バシン バシン」
アレクシスは剣をみる、リックもリックの剣を見る。
「まぁ なんとか持つぐらいの感じか」
「アレクシスとクリストファーは特別だよ」
みんなも各々剣や槍を持ち素振りをして確かめている。
「ストア ポーション持ってきてるか?」
「あるよ もしかして ここで試合するの?」
「まぁ そういうことだ」
「誰とするの?」
「おい クリストファー 俺とやろうぜ」
クリストファーはニヤリと笑って
「おう やっぱり一番がいいぜ お肉もよぉ」
クリストファーは槍を持っている、アレクシスは剣を2本の両手剣で対決だ。
「ハッハッハ やっと 打ち込める」
「俺もウズウズして たまんねい」
両者の血の気はクライマックスだ。
攻撃はクリストファーから始まった、槍を遠距離から力まかせに振り回す。
「オラオラオラ」
野獣のようなクリストファー、さすがに近寄れないアレクシス。
振り回すだけではダメだと気付いたクリストファーの槍が脳天直撃コースに来たが両手剣で受け止めるアレクシスはそのまま回転して剣をクリストファーの横っ腹に叩き込んだ。
「バシーン」
アレクシスの剣が当たった。
「それまで」とリック
「クリストファー 大丈夫」とストア
「薄い皮鎧でもなんともない」
「ホッ」みんな安堵のため息をつく
「クリストファーもそろそろ剣術を勉強したらどうだい?」とリック
「お前が教えてくれるのか?」
「君がよければ 教えてもいいよ」
「肉をおごるぜ」
「ああ 楽しみにしてる」
クリストファーは最後は肉を食べさせて問題を解決してきた。
肉はうまくて期待を裏切らないのである。
「リック 俺としない?」とストア
「いいよ やろう」
実はストアもウズウズしていたのである。
リックも燃えていた、寸止め無し、これが本当の試合、ストアの本当の実力がわかるはず。
リックは先読みスキルを発動してストアの攻撃を待つ、ストアも上段に構えて動かないというか立ってるだけに見える。
ストアの目にはやる気や闘志が見えないというより空っぽに見える、リックとの戦いでより自然と一体化してきているのだ。
リックの先読みが剣が真上から来るビジョンが飛び込んでくる、受け流してのカウンターをイメージして防御しようとするが、ストアの剣の軌道や場所が変わり胴に打ち込んでくる。
先読みを駆使してもリックの気配が読まれ、軌道を修正してくるのだ。
リックも最初は簡単に負けていたが決まらない事を想定してストアの動きに対応するようになっていった。
傍から見るとやる気というか存在感を感じられないストアがえっいつの間に攻撃してたのという不思議な感覚を感じ、それをリックが必死で対応しているように見える。
お互い空振りの応酬が続いたが初めてストアの剣をリックが剣で防いだ。
「おお」と思わず声が出る仲間たち
そのまま受け流しカウンターを狙うリック。
しかしストアはそこにはいなかった。
気付いた時にはストアの剣はリックの手首を射程にとらえていた。
「バン」
「それまでだ」 アレクシスの声がする
ストアの目に生気が戻る。
「剣を受けて油断してしまった」
「そうだね」
二人の会話を理解できない仲間達。
「ストアは試合になると別人だな」とアレクシス
「自分ではよくわからないよ」
しばらく二人の戦いの余韻に浸る仲間たち、そして次は俺と名乗りだすと次々に戦っていく。
みんなが戦い満足したら、クリストファーのおすすめの店に行くことになった。
「この格好で行ける最高の店だ」
クリストファーの目はこの日、最高の輝きを見せた。
「最高級のゴロゴロ牛の内臓を卸してる店だ 腹いっぱい食べても銀貨1枚で足りるぜ」
ゴロゴロ牛は大人になると歩行をしなくなる牛だ、回転しながら進むのでゴロゴロ牛と呼ばれるようになった。
もちろん餌を探せないので家畜として飼われ最後はおいしい肉になるのだ。
ただ内臓は腐りやすく処理も面倒なので捨てていたのだが食べる方法をみつけた店が欲しいというので凍らせて冷凍馬車でハートビートまで輸送している、値段のほとんどが輸送代だが近年じわじわ値段が上がっている、マネをする店が増えてきてるからだそうだ。
「おっ ココか」
看板にはゴロゴロ亭と書いてある、店は客で一杯だ。
店に入ると店員に、
「1番のクリストファーだが予約してる席は空いているか?」
「これは1番精肉店のお坊ちゃん お待ちしておりました」
ストアは1番という言葉とお坊ちゃんという言葉に笑いをこらえて体が震えている。
クリストファーの仲間以外はみんな、そうなっていた、泣いてるやつもいた。
「うむ」
「こちらへどうぞ」
みんなクリストファーの後に続いた。
通されたのは少し広い部屋だった。
みんなは注文をクリストファーに一任した。
出てきた料理は炭火で焼いたゴロゴロ焼きやトマトと煮込んだリガトーニに香辛料をたっぷりつかってパンに挟んで食べるココレッチなどが出てきた。
昼間なのでワインで乾杯してみんなで食べた。
肉に甘みがあるなんてストアは初めて経験した、アレクシスの仲間もすげえうまいを連発して、クリストファーもご機嫌だ。
ストアも「やっぱりクリストファーは肉の事なら一番だね」
と当たり前のことをいい、それでもクリストファーはうんうんとご満悦だった。
みんな満足して養成所に帰った、そしてゴロゴロ亭は何かあるたびに訪れる場所になった。
午後は女の子も一緒に芝居に行った、総勢30人近くに膨れ上がった。
真ん中に女の子を入れて男が囲む感じで歩く、リックとアレクシスが先頭を並んで歩く、その後ろにカミラやカトリーヌやペギーがリック達と楽しそうに会話してる、後方はストアとクリストファーが並んで歩いていた、その前にはリタやソフィーとリリー達がストアと楽しそうに会話している。
芝居の内容は庶民の美青年とお姫様の恋物語、今、都で一番の人気で女の子達に行きたい行きたいと言われてリックが席を押さえてくれたみたいだ。
ストアもリタ達を誘ってみたら行きたいというので連れてきたのだった。
「まさか ストアが芝居に誘ってくるとは ハッハッハ」とリタ
「ありがとう 観たかったんだよね」とオリアンティ
みんないつもの姿ではなく綺麗な恰好をしている、もちろんクリストファーもだ。
クリストファーはリリーが間近にいて、ちょっと緊張している、肉のこと以外は不器用なのだ。
回りを固めている子分達も近くにいる女の子と会話をしてる、愛の女神は微笑んでいるに違いないとストアは思ったのだった。
そして道中は何事もなく、劇場についたのだった。
さすがに首都の劇場は立派だった。
そして座る席も立派だった。
話し声も芝居の開幕と共に静かになった。
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お芝居の内容は、
お姫様が搭乗している馬車と護衛の馬車2台で移動中に盗賊に襲われてしまう、お姫様の馬車だけは先に逃したのだが、急ぎ過ぎたのか車軸が壊れて立ち往生してしまった。
そして応急処置をしているところにオークが攻めてきたのだ。
オークはなんと10匹で護衛の騎士は3人で馬車を守りながらの戦いでは劣勢で一人の騎士が致命傷の一撃を受けてしまう。
連携を失った騎士は全滅するかと思いきや、一人の美青年が現れオークを倒していく、騎士達も生気を取り戻し、オークをすべて倒してしまった。
お姫様はお礼を言うためにドアを開けて青年を見ると一目で恋をしてしまった。
青年もお姫様を見て一瞬で恋に落ちたのだった。
見つめ合う二人、そこはもう二人だけの世界。
しかしお互い恋し合っても叶うはずもないのだが、そのことでお姫様は恋煩いで寝込んでしまう。
それを知った王は青年を呼び青年に近頃、我が国の脅威になっている最強オーガを退治すれば姫との結婚を許してもいいと告げた。
そして青年はお姫様に会うことができた、そして必ず倒して結婚すると誓った。
お姫様は旅立った青年が無事帰って来ることを願い続けた。
国王はこの国の青年に合う武器を供与し手練れの諜報部隊に誘導するのように指示した。
青年は喜び勇んで最強オーガ退治に乗り出したのだが、最後には力及ばず殺されてしまう、そしてそれを知ったお姫様は悲嘆にくれ、周囲の者がどれだけ慰めても、お姫様の悲しみをぬぐうことはできなかった。
そしてお姫様は最後には尼になってしまうというお話だった。
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3時間の芝居もあっという間だった。
女の子たちは泣きまくった、お姫様がかわいそうすぎる、特にリリーの落ち込みはひどかった。
男はオーガはねえよ オーガはという感想だった。
リタも男と同じ感想だった
ストアは落ち込んでいた、ハッピーエンドになることを信じて疑ってなかったからだ。
帰り道はみんなで感想を言い合って、また芝居を見に行きたいと言い合っていた。
ストアとリリーはお互い慰め合った、みんな羨ましそうにみていたが落ち込んでいる二人に声を掛けるのをためらっていた。
「ないよね」「うん ないない」
しばらく二人は同じことを言い合ったのだった。
愛の女神はストアにも来るのだろうか?




