19話 ポーション完成 冒険者養成所訓練開始 7日目~
朝の稽古にリックが参加するようになった。
ストアの動きを見切りたいようだ。
一緒に稽古をして最後に試合をした。
リックは目を全開にして動きを捕えようとしてるけど、今度はカラダの動きがぎこちなくなっていた。
ストアも昨日の試合で空振りさせられて、いい練習になった。
より自然と溶け込めた気がした。
でも今日は試合にならなかった。
「リック 今日は体が硬いよ」
「そうだったか・・・ ところで今日は午後の稽古に来るのかい」
「う~ん 実は午後の時間はポーションを作る準備をしてたんだよ」
「そんなことしてたのか?」
「父さんと約束してたんだよ 家を出てもポーションを作るって だから 今度の休日が終わるまでは時間がとれないよ」
「休日返上かい ご苦労さんだな」
それからは毎日、変わりない日々が続いた。
そしてあっという間に最初の休みの日を迎えたのであった。
冒険者養成所の休日は0のつく日、10日・20日・30日となっていた。
リックと朝食を終え、外に出るとアレクシスが待っていた。
「おっ リック 行こうぜ ポーションもついてくるのか?」
「俺は別行動だよ」
「そうか 行こうぜ リック」
「ああ じゃあな ストア あとで作ったポーションを見せてくれよ」
「わかったよ」
リック達は特注の武器を作ってくれる場所を回って来るらしい。
リック達と別れたストアはビエラー薬師店へ向かっていくのだった。
いつものように店の裏へ行き声を掛けるストア。
「すいません」
「おっ ストア君 部屋を借りに来たんだね」
「はい トッドさん お願いします」
トッドさんは店の店員を呼んで場所を教えるように伝えた。
「ペーターについていけば空き家まで案内してくれますよ」
「ありがとうございます トッドさん」
「ペーター 頼みましたよ」
「ペーターさん よろしくお願いします」
「ついておいで」
ペーターはうなづくと空き家に向かって歩き始めた。
10分もしないうちに小さい倉庫のような場所にたどり着いた。
「ここだよ」
「ありがとうございます」
カギを開けて家にい入るペーター、それについていくストア、部屋は少しほこりっぽいが作業には十分な広さがあった。
「カギを渡すから、終わったら家のカギを閉めて店に持ってきてくださいね」
「わかりました」
「あとはよろしく」
「ペーターさん ありがとうございました」
そういうとペーターさんは家から去っていった。
ストアは部屋を見て窓を開けて掃除をしてポーションを作る環境を整えた。
「よし 今日中に終わらせるぞ」
ストアはリュックからきんちゃく袋を取り出し機材を並べていく、鍋に水を入れ火をつける、時々指をつけながら温度を測り、適温になったところで薬草を投入した。
温度によって、薬草から出る成分が違うので、手を抜くだけで低品質のポーションになってしまう。
温度を管理しながら別の鍋では布を熱湯に入れていた、この布はろ過に使うようだ。
薬草の色が変わると取り出し、別の薬草を投入した。
そして少し温度を上げた。
絞った布を樽に入れた、その上にきれいに洗った魔石クズを入れまた布を入れた、樽の下には注ぎ口がありろ過されたものが出てくるようになっている。
すべての薬草を入れ終え、すべてを取り出す。
部屋は湿度が高くなって、室温も上がってきた。
ストアは汗を拭き温度管理しながら薬草を入れた鍋の色の変化を観察していた。
作業から6時間が経った頃に火を止め、鍋から樽に注ぎ入れた。
注ぎ入れると樽のフタを閉じて、しばらくの間、時間があるので食事に出かけた。
「ああ お腹が空いた」
ストアは変な鳥の看板がある店をみつけて覗いてみた。
キジラという鳥の肉が売りの店らしい、おいしそうなのでストアは入ることにした。
店の人に案内され席に着くと注文を聞かれたのでストアはこの店のおすすめを注文し来るのを待っていた。
「おまたせしました」
出された料理はローストしたキジ肉とキジのスープにパンとワインだった。
「う~ん いい匂い」
ストアはローストされたキジ肉を食べると鳥にしては濃厚な味で、すごくおいしい。
スープもいつもの野菜スープより濃厚な味で若いストアにはたまらない味だ。
あっという間に食べて、そろそろ出ようとした頃に隣の人の会話が聞こえてきた。
「最近 北の森に柴刈りに行く連中が帰って来なくなってるらしい」
「北の森は管理が行き届いているんじゃないのか?」
「見回りしても怪しい魔物や人物は出てこないらしいんだが」
「モンスターといえばゴブリンすら見ないしホーンラビットかキジラかオオネズミぐらいだろ」
「あいつらは人を見たら逃げるからな」
「だから最近は集団で行くようになったみたいだ」
「そいつらは被害にあってないのか?」
「合わないらしい 一人で集めてるヤツらが被害者になってるみたいだぞ」
「これからは北の森でも一人では行かないようにしないとな」
ストアはこの話が少し気になった。
ストアはほどなくしてお金を払い店を出て借りた家に帰った。
温度も冷めていい感じになって来たと思ったので瓶を並べて注ぎ口の栓を抜くと透明感のある赤色の液体が出てくる、ストアはスプーンに液体を入れて味を確かめる。
「う~ん いつもの味だ」
納得すると並べた瓶に出来立てのポーションを入れる作業を繰り返した。
「40本か まずまずかな」
最後にストアは大きな瓶を注ぎ口に前に置き布を木の棒で巻き、絞り出すと大きな瓶に残りのポーションが注がれる、これは売り物ではないが不純物が沈殿したら売り物のポーションと同じになるみたいだ。
その上澄みを小さな瓶3本に入れた、どうやら試供品にするらしい。
作業が終わり片づけをしていたらこの家に来て12時間は経っていた。
「ふう 終わった」
ストアは家のカギを閉めビエラー薬師店へさっそうと向かった。
ストアは店の裏口に行き声を掛けた。
「すいません」
「おっ ストア君出来たのかい?」
「あっ はい これ 家をカギです」
「おっ 確かに」
「一応 40本ほど出来ました」
「ほう 40本も」
「これは試供品です」
そういうとストアはトッドさんに小さい瓶を渡した。
トッドは瓶からポーションを出し味を確かめる。
「いつも通りだね」
「はい そうだと思います」
「40本はいつもの値段で引き取りますよ」
「ありがとうございます」
「ただこのポーションはお客さんに使ってもらって結果を見てからドラッグポーションとして売らせてもらうよ」
「はい それで構いません」
「40本出してください」
言われるまま40本のポーションを出すストア。
「確かに これ代金ね」
「ありがとうございます」
ストアは金貨20枚を受け取る、初めて受け取った金貨は重かった。本来は季節ごとの薬草取りから初めて、色々な手順を踏んで最後に抽出するものだ、ストアは少し親に申し訳がなかった。
「これからも必要があれば空き家を使っていいからね」
「ありがとうございます トッドさん」
「期待してるよ 頑張ってくださいね」
「はい」
ストアはお辞儀をして店を出た、辺りはもう薄暗くなっていた。
せっかくの休みなのに一日中仕事だったけれど充実した気分をあじわっていた。
帰りは屋台でパンにソーセージを挟んだ軽食を食べながら冒険者養成所へ帰るストア。
少し暗いのでライトの魔法を使う、
よくみると月が出ていた。
ストアはライトも上にあればお月様かな?と思い、
実験してみた、明るさを最大にして「飛べ ライト」と言いながら投げたのだった。
するとライトの魔法は飛んで行く、ある程度の場所まで飛んで行くと消えたのだった。
魔法ってこんなこともできるんだとストアは魔法の可能性を知るのだった。
これ以後、暗くなったらライトの魔法で遊ぶようになった。
このなんでもない発見がのちに仲間すべての魔法を開花させるのであった。
わかりにくい場所・感想・ブックマーク・評価などもらえると筆がすすみます。 よろしくお願いします。




