161話 ストアVSオーガ
ランベルト達はうまく戦った。
ランベルトは最初の一撃で棍棒を叩き切り、その隙きをついてトビアスが飛び込みオーガの右腕を切り落とした。
右手を切り落とされたオーガは痛さに転げ回っている。
近づいてくるオーガに対し突っ込み牽制するランベルト、しかし容赦なく棍棒を振り回してくるオーガ、仕方なくかわすランベルト、その間に力を溜めたトビアスがまた棍棒を斬る。
二人は牽制役と溜めの役割を果たし絶妙なコンビネーションでもう1匹のオーガを追い詰める。
イザークのメンバー達は戦闘の動きは悪くなかったコンビネーションも機能していたが苦戦をしていた、3対1という有利な条件にも関わらず、大ダメージを与えられないでいた。
身体強化して攻撃してもかすり傷程度でしかなかった。
それというのも鬼斬りをマスターしていても実戦の中でそれを出せるかどうかは別だったからだ。
一人でもやられてしまえば全員がやられるそんな雰囲気をかもしだしていた。
ストアは呼吸を整えた、強い敵に対する時は平常心が一番大事だと知っているからだ。
そして短槍を地面に埋めた、イザという時の保険のために、そして剣を抜きバッターがかまえるような構えでオーガを待った。
もう目の前にオーガがいる、なんという存在感、目に前にするとその凄さを肌に感じずにはいられなかった。
オーガはすさまじい殺気を放ちながら棍棒を振ってきた、一撃でもくらえば即死レベルの怪我を負うのは目に見えている、もちろん華麗にかわすストア、しかしオーガの攻撃は終わらない。
目にもとまらぬ速さだが突きがないのが幸いで距離さえ間違わなければかわすことができた。
しかしその速さと凄い音で間合いに入り込むことができなかった。
リック達はオーガ達が見えなくなって誰ともなくスピードを落としそして止まった。
普通の道ではなかったのでいつものようには走れなかったが疲れず走りきれた、これも訓練の賜だった。
「これからどうする」
「ここで待つのか 入り口で待つのか」
「さすがにオーガもここまでは来ないだろうな」
「待つといってもいつまで待つんだ」
「それは全滅するとでも言うのか」
「そうじゃないけどよ」
「それにしてもストアが心配だ」
ランベルト達に苦戦をしていたオーガは棍棒を半分にされ怒りの咆哮を叫んだ。
「ウォーガ」
そして棍棒を振り回すのかと思えばトビアスに向かって棍棒を投げつけた。
不意を付かれたトビアスだったがなんとか棍棒をさけたのだがバランスを失ってしまったところにタックルをくらってしまう。
オーガはそのままで抱きしめて全力で締め付け肋骨を砕こうとする。
トビアスは身体強化全開でそれを防ごうとした。
ランベルトがオーガを斬ろうと近づくとトビアスをランベルトの方向へ向け牽制する。
一瞬とまどうランベルトだったが気を入れ直し言った。
「俺を信じろ」
そういうとランベルトは鬼斬りを放った。
イザークのメンバーはこのままではじり貧になると焦っていた。
攻撃のスピードが変わらないオーガにこちらの体力が追いつかなくなると感じていた。
リーダーのイザークが叫ぶ。
「俺が仕留めるから棍棒を振らせないようにしてくれ」
「わかった」
そして3人の動きが変わる。
イザークのメンバーの一人のベルツが打ち終わりに全力で飛び込み棍棒を叩くがオーガはそのままバットを振るようにベルツの剣とベルツをふっとばす。
もうひとりのメンバーのバルベもすかさず飛び込み棍棒を叩くが今度は逆方向にふっ飛ばされた。
その間魔力を集中していたイザークが飛び込み剣を振るう。
ストアはいまだにさけていた。
死の予感を感じながらも初動がわかりやすいオーガの攻撃は身体強化に慣れ始めたストアなら簡単にさけられた。
しつようにオーガは攻めてくるが一向に当たらなかった。
オーガは突然攻撃をやめ、独り言をつぶやく。
そして大笑いをする。
「グエッグエグエ」
棍棒を構えたままストアを追いかけ始めた。
大きい体にも関わらず俊敏に動き、そして下がれない場所に追い込んでニヤリと笑い、棍棒を振るった。
ランベルトはトビアスを締め付けていた腕だけを斬った。
ボトリとオーガの片腕が落ちる。
その瞬間オーガから脱出するランベルト。
そしてランベルトが叫んだ。
「後ろからオーガが」
右腕を斬られたオーガが迫ってきていたのだった。
イザークの一撃が腕から胴を斬り、オーガに深手を追わせることに成功した。
そこからは傷口を狙い怒涛のラッシュをするイザーク。
仲間たちは肋骨を骨折して思うように動けなかった。
ストアは追い詰められたがしゃがんでかわし、そのまま横胴を決めたがオーガにはダメージらしいダメージを与えられなかった。
オーガは鼻を鳴らして振り向いてまたストアを追い詰め始める。
今度はしゃがんでかわすのは無理だろうとストアは思いながら、次の手を考えていた。
ランベルトに言われなくてもトビアスはわかっていた、そして振り向き際に胴への鬼斬りを放ちオーガを真っ二つにした。
そして残りの1匹をランベルトとトビアスで囲んだ。
あれほど迫力のあったオーガだったが哀れみを誘う目をした。
そして最後はトビアスが気迫の入った一撃は放ち、首を斬りオーガ達を倒したのだった。
イザークに斬られたオーガは最初は抵抗していたのだが動けば動くほど出血は止まらず、最後は落ち着いて魔力を集中させて鬼斬りでオーガの首を血まみれになりながら首を刎ね、イザーク達の戦いは終わった。
「やったな」
「やった」
ベルツもバルベも胸の痛みはこたえたが最後は笑顔になった。
ストアは追い詰められながらも埋めた短槍の場所へと移動していく。
オーガはオーガで逃げ道をふさぎながらも棍棒に力が入る、今度こそ決めてやる意志をみなぎらさせていた。
そしてオーガは逃げ道をふさいだと思うとほくそ笑み笑う。
しかもストアは短槍の場所まで行くと剣まで捨てた。
よけいに笑うオーガ。
「グエグエグエ」
しかしその時、ストアは魔法を放ったのだった。
魔力を集中するために剣まで捨て、身体強化もやめ、その瞬間は完全な無防備状態になっていたストアだった。
「熱き魂よ 更に集まり 更に交わり 解き放て イエローファイヤー」
ストアの隠し玉はイエローファイヤーだった。
それを大笑いしているオーガの顔に向けて放ったのだった。
いくら固いオーガといえども目だけは固くなかった。
毛という毛はこげ、強烈な痛みがオーガの目を襲う。
大きな口を開け叫ぶオーガ。
ストアはその瞬間を待っていた。
すばやく短槍を取り、口を開けているオーガの口に短槍を下から身体強化全開で叩き込んだ。
短槍は口を突き抜け脳にまで達した。
いくらオーガといえども内部は普通に柔らかかった。
オーガは目をやられ、脳まで突かれ痛みでめちゃくちゃに暴れまわったがしばらくすると動かなくなった。




