149話 卒業記念のパーティー舞踏会5 冒険者養成所89日目
リタは最後に直接的に口説きまわったがオリアンティはこの日までにちゃんとクルトとカルステンと仲良くなる努力をしてきた、今日は成果が出る日かもしれないがどう切り出すかが問題だった。
とにかく遠い、みんな東側に住んでいるのは利便性がいいからだ、ど田舎のコットブス村に来るにはそれ相応のメリットが必要だ。
オリアンティにはそれがあったのだがそれで来てくれるかどうかはやはりオリアンティの魅力次第かもしれなかった。
今日のオリアンティはドレス姿もキレイだが胸をわざと強調して着てみたのだ、美女軍団最大のバストは乙女の武器だ。
今日は活躍して魅了してもらわねばならない。
最初に声をかけてきたのはクルトだった。
「オリアンティ 一緒に踊りませんか?」
「クルト君 私が最初でいいの」
「うん 一番落ち着けるから」
「うれしい」
「服似合ってると思う」
「うんうん すごく素敵だよ」
「オリアンティもすごく似合ってるよ」
そう言いながら少し胸に視線を送るクルト。
「恥ずかしいけど頑張ったんだよ」
「そうなんだ」
少し頬を赤らめるクルトだった。
いつものようにオリアンティをエスコートするクルト。
今までと同じだが今日は貴族のお屋敷だ。
いつも励ましてくれるオリアンティは今も僕の目の前で微笑んでいる。
せっかく仲良くなったのに今日でお別れなんてさみしいと感じるクルト。
オリアンティはさみしくないのだろうか?
「クルト君はこれからどうするの?」
「親と同じ職業になろうと思ってるんだ」
「たしか耐火レンガとか作ってるんだよね」
「そうだよ」
「もっとトレースの技を磨いてみたいとは思わない?」
「うーん 磨いたら何かいいことでもあるの?」
「私の父さんは使い物にならなくなった名剣を修復して100金貨で売ったりしてるんだよ」
「ええ 100金貨」
「トレースで何年もかけて修復してたりするの」
「すごいね でも 難しいんじゃないの」
「私もそんなことやったことないけどクルト君やってみない」
「ええ どういうこと」
「コットブス村で修行すればいいのよ」
「修行って今ここで決めれるの」
「来たい人がいれば歓迎するっていつでも言ってるの でも 才能がないとダメでしょ クルト君 トレースをマスターしたから資格あるし やってみたらどうかな?」
そう言って覗き込むようにみるオリアンティ。
「うーん 今すぐは決められないな」
「興味は持ってくれたんだね」
「うん 名剣を直すとか夢があるし」
「じゃあ 住所を交換して手紙でやり取りしようよ」
「うん」
「でも できれば来て欲しいな 私 待ってる」
「えっ あ うん」
おとなしいクルト君がコットブス村まで来てくれるか心配だが手応えは感じたオリアンティだった。
それからは慣れない同士和気あいあいと踊った二人だった。
次に踊ったのはカルステンだった。
カルステンはオリアンティと今日で最後になるのが嫌だった。
こんなに女の子と仲良くできたことがなかったし会えばいつも積極的に関わっていつも応援してくれる。
カミラやポーションを特別だと言ったのを否定してトレースを覚えるのを成功するまで手伝ってくれた。
それが自信につながったしこんないい子はいないとカルステンは思った。
どうにかしてつなぎとめたいがどうすればいいかわからない。
そんな事を考えながらカルステンはオリアンティの手を取り踊り場に向かった。
この手を放せばもう会うこともない。
カルステンはいつもの陽気さはなく思いつめた表情をしていた。
「どうしたの カルステン君 いつもと感じが違うけど」
「今日でみんなと別れるなんて辛いなって」
「私もそう思ってたよ」
「本当」
「うん」
「オリアンティ」
「何」
「なんて言えばいいのか」
そこから言葉が続かないカルステンいつもの元気いっぱいの姿とはあまりにもかけ離れていた。
オリアンティは今こそ言うべきときだと話しかけた。
「トレースに興味ない?」
「トレース」
「父が自分の技を次世代に伝えたいっていつも言ってるの」
「お父さん凄いんだ」
「使い物にならなくなった名剣を直したりしてるんだよ」
「へえー」
「でも私のところ田舎でしょ いい人材がみつからなくて」
「そうなんだ」
「もし よかったら コットブス村に来て技を継承してほしいの」
「えっ 俺にできるかな」
「できるよ トレースもすぐ覚えたじゃない」
「オリアンティも来て欲しんだな」
「うん」
「わかった 親を説得してみる」
「本当 うれしい」
それからはいつものカルステンに戻り陽気に踊った二人だった。
そして最後にストアと踊るオリアンティ。
リックの時はいつものオリアンティで妄想を繰り広げたが今回はストアには妄想モードには入らなかった。
カルステンのオリアンティも来て欲しんだなという言葉に感激して浮かれていた。
「なんだかうれしそうだね」
「そうかな」
ストア君は忙しい、やりたいことが多くて自分には振り向いてもらえないだろうなと思った。
今はカルステン君やクルト君がいる、たぶん二人は自分と向き合ってくれるに違いない、やっぱり妄想より本物の恋がいい。
でも今は最後の思い出にストア君との踊りを楽しもう、初めてキスした人はこんなに素敵な人だったと焼き付けよう。
「ふふっ」
「オリアンティ やはりうれしそうだよ 何かいいことがあったの」
「秘密だよ」
「秘密ね でも 落ち込んでいたオリアンティが元気で卒業できてよかったよ」
「ありがとう」
二人の踊りはカルステンやクルトと踊るより華麗だった、かわいくてなんでも吸収してしまうストア君はこれからも女性を惑わすに違いないと思うオリアンティ。
そしてオリアンティの妄想のかわいい悪魔としてストアキャラができあがった瞬間だった。




