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143話 最後の授業 それぞれの成果(2) 冒険者養成所88日目

 おだてに弱いトーマスはストアが教えた圧縮と激熱熱湯に取り組んでいた。


「トーマスよう やっぱ 俺もポーションも熱い魂を持ってるからな やっぱり根性入れないと熱湯は出せないぜ」


「ポーションみたいな馬鹿なことはできないよ」


「口惜しくないのか 魂がないのか」


「とにかく気持ちをいれろや」


 普段は温厚なトーマスもそこまで言われると腹が立ってきた。


「わかったよ 気持ちをぶつければいいんだね」


 ムカムカしながら魔法を唱えるトーマス。


「水よ燃えよ 熱く熱く ホットウォーター」


バケツに湯気の立つお湯が出た、すかさず指を入れるクリストファー。


「結構熱いぜ」


「本当」


 そう言いながら指をお湯に入れるトーマス。


「本当だ 少しいつもより熱い」


「はっはっは やっぱ熱い魂が熱湯を出すんだ」


 それからは気持ちを奮い立たせ魔法を唱えるようになり、クリストファーやストアよりは低いがそれなりの熱湯を出せるようになった。


「これなら十分消毒に使えるな」


「本当 やったー」


 こうして不十分だったホットウォーターもサマになるようになった。


「あとはウォーターカッターだな」


「圧縮はできてるってポーションが言ってたんだけどなかなか切れないんだ」


「俺も生木を切るのにはまだパワー不足みたいだ」


「全然 レベルが違う話だよ」


「まぁな 節目があるとよ そこだけ残ったりするんだぜ」


「へえー 強さによって残るし加減で残したいものは残して切ることもできるね」


「おお そんな考え方もあるのかトーマス頭いいじゃねいか」


「えへへへへへ そんなことないよ」


「やっぱ あとは気合と魂で切るしかないな」


「僕もかな」


「トーマスが怒るとか少ないからな 足りないのはやっぱそこだぜ」


「熱湯みたいに気合い入れて頑張るよ」


「おお気合を入れて頑張れ」


 こうして魔法を使うときに気合を自然に入れれるようになったトーマスはウォーターカッターができるようになり合格した。


 ついでに剣の腕もあがった、気合を入れる効果が出たみたいだった。


 クリストファーは日々より大きな木や石にも挑戦し続けている、どこまでできるのかは本人もよくわかっていない。





クルトとカルステンの場合



 オリアンティの熱意に押され一緒に練習することになったクルトとカルステンだが実質残された時間は2日しかなかった。


 これまでもトレース・プロダクションに挑戦していた二人だったが穴は埋まってもポロリを繰り返していた。


「この前話した通り、埋めるのではなく周りから出てきてふさがっていく感じなの」


「話を聞いてもなんか実感できないんだよな」


「一度やって見せて できれば完成した状態じゃない方がいいな」


「すべてを埋めてしまわないようにって感じなのかな」


「それそれ」


「じゃあ やってみる」


 魔力をためず、左手はレンガをつかみ、右の手で穴をふさぎながら魔法を唱えた。


「我が魔力に包まれしモノよ 形跡なく繋がれ トレース プロダクション」


 さっきより小さな穴になったレンガがそこにはあった。


 それを食い入るようにみつめるクルトとカルステン。


「おお こんなかんじか 本当にくっついている」


 そう言いながらレンガを振るクルト。


「本当だね 最初の穴の大きさを知らない限り最初からこうだったみたいにみえる」


「イメージしやすくなった」


「おお バッチリチリ」


「僕もイメージできたよ」


「本当うれしい 最初はコレからやってね」


 そういうと小さい穴の空いたレンガを二人に渡すオリアンティ。


「なんだよコレ」


「ストア君がね 魔力が少なかった時に小さい穴で練習したらできるようになったの それまでは変な形ばっかりだったのに」


「そうか ポーションもうまくできなかったんだ この方法でモノにしたんだ」


「僕たちも最初からこういう感じで練習できていればうまくいってたのかもしれないね」


「ストア君は色々変化をさせてああでもないこうでもないってやっていて いつの間にかにモノにしちゃうんだよ」


「そうか 才能だけじゃないんだな 色々試してんだ」


「僕ら同じことばかりやってたね」


「しゃべってばかりじゃなくて練習しようよ」


 二人は真面目に繰り返し始めるが穴には変化がなかった、それを見て焦るオリアンティは大胆な行動に出た。


 時間がないし発動を待っていたら合格できなくなってしまう、それどころか・・・。


「どうなっているんだ イメージが悪いのかな」


「私と一緒にしよう」


 そう言って横に寄り添うオリアンティ


「えっ」


 温度を感じる場所まで接近されドキッとするクルト。


「集中してイメージして魔法を唱えてみて」


 ストアにはデレデレのオリアンティだったがここではお姉さん的に物事を進めた。


「わかったよ」


 目を閉じて集中するクルト、そして手をレンガに乗せると右手にオリアンティの手が重なる。


 ビクつくクルト、すかざずオリアンティは言った。


「女の子同士 応援したい時にこうするの だから集中して」


「おう」


 再度集中し直して魔法を唱えるクルト。


「我が魔力に包まれしモノよ 形跡なく繋がれ トレース プロダクション」


 そしてクルトとオリアンティが手をレンガから放すと、ほぼ穴の埋まったレンガになっていた。


「おお やった」


 そう言ってレンガを逆さまにして振るがレンガは落ちてこない。


「すごいすごい 今日一日で発動したね」


「オリアンティのおかげだよ」


「そんなことないよ すごく集中してたよ この調子で頑張ってね」


「おう 頑張る」


 嬉しそうな顔をしてカルステンに近づくオリアンティ。


「クルト君は発動したよ カルステン君も頑張ろう」


 そう言って横に寄り添うオリアンティ。


「うん」


 そう言って驚きはしないが頬を赤らめるカルステン。


「じゃあ 頑張ってクルト君に負けないようにね」と小声でつぶやくオリアンティ。


 一瞬、オリアンティの顔をガン見して、そしてレンガの方に向き直してから目を閉じて集中した。


 ポーション達が特別じゃないとオリアンティは期待している、それに答えなくてはとカルステンは思い、気合を入れてレンガに手に持つとオリアンティも手を合わせてきた。


 より気合が入り魔法を唱えるクルステン。


 そして穴は見事にふさがっていた。


「あっ ふさがってる」


「あっ 本当だ」


 クルトも寄ってきて見る。


「俺よりすごい」


「たまたまだよ」


「たまたまでもいいじゃない 本物の穴をふさぐまで頑張ろうよ」


「そうだな 俺たち頑張らないとな」


「うん 時間ないしね」


「二人共頑張ってね 絶対間に合うよ」


「おう」


 こうして発動に成功したクルトとカルステンは最終日までにトレース・プロダクションが完全にできるようになり試験を受け合格した。


 この間カミラは三人から少し離れた所でプロダクションで新しい宝石を出せるように練習していた、付き合わなかったのはオリアンティの気持ちを知っていたからかもしれなかった。


「三人共頑張ったわね」


「クルトとカルステンが頑張ったんだよ」


「あら そうかしら 私はオリアンティが一番張り切っていたように感じたけれど」


「そうだよ ありがとうオリアンティ オリアンティがいなかったら俺達は多分できないままだった」


「うん 僕もそう思う」


「そんなことないよ すぐできるようになったんだもん やっぱり二人共 才能があったんだよ」


「あらあら 感謝してるんだから素直に喜べばいじゃない」


「もう 本当 カミラっていじわるなんだから」 


「本当にありがとう オリアンティ」


 そうカルステンは言い、クルトはカルステンの肩を抱いてオリアンティに近づき、そしてそのままオリアンティを円陣になったように抱くのだった。


「うれしい」


 そう言って涙ぐむオリアンティ、そこはもう三人だけの世界だった。


 カミラは一人蚊帳の外で一向に関係が進まない忙しすぎるリックやアレクシスの事を想いながら少しため息をつくのだった。

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