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133話 魔物の王国 冒険者養成所83日目

リックが珍しくアレクシスやクリストファーを夕食に誘って冒険者養成所を出たあとに行く腕試しの場所を提案してきた。


「帰り道ではないけれどジャアクイモ草原はどうかな?」


「超有名な狩場だな」


「暴れられるんだったら俺はどこでもかまわねえ」


「どんなところなの」


「ストアは知らないのか 有名な魔物がすべている場所だよ」


「ドラゴンとかもいるの」


「北に行けばいるらしい」


 アレクシスが割って話す。


「とにかく肉になる魔物が多くて その魔物目当てにいろんな魔物が集まってくる場所だ ただ北に行きすぎると帰ってこれない場所だぜ」


「帰ってこれないなんて危険じゃないの」


「ああ だから現地に詳しい冒険者を雇おうかと思っているのさ」


「リック 俺たちだけじゃねーのかよ」


「クリストファー 僕達は家の事も考えないといけない 安全を確保するから腕試しもできるんだよ」


「クリストファー 跡取りが死んでしまったら困るだろ 俺もおやじにちゃんと安全を確保するような考え方ができてれば本格的に剣術を習えたのかもしれねえ」


「そんなもんか 俺には兄貴達がいるから放置だったぜ」


「それなら剣術は習わなかったのか」


「それも放置だったぜ 暴れられればよかっただけだけどよ」


「はっはっは」


 クリストファーの天真爛漫さの原因がわかった他の三人だった。


「いつから行くの」


「ストア 週初めからにしようと思ってるけど なにか用事でもあるのかい」


「俺 リリーの護衛を頼まれてドレッサに行かなきゃいけないんだ」


 それを聞いて驚く三人。


「リリーと一緒にドレッサだと ストア リリーと婚約でも約束したのか」


「てめえ 許さねえ」


 そう言ってクリストファーは襟元を掴もうとするがやはりサッと避けるストア。


「外国へ行くんじゃないのかい」


「魔法医の学校に行くのはリリー一人だけだからハートビートまで護衛をしてほしいと頼まれたんだ」


「婚約はしてないんだな」


「してないよ」


 ニヤリとわらいアレクシスがけしかける。


「じゃ その旅行中に婚約しちまえ」


「馬鹿野郎 ストア 殺されるぞ」


「えっ」


「クリストファー どういうことだ」


「みんなリリーを狙ってんだよ 兄貴達もな」


「クリストファーがなぜわかるんだ」


「俺だってそれぐらいわかるぜ 若い男はみんな教会に礼拝に来るぜ 信仰心なんてあるように見えない奴らがよ」


「クリストファーも行ってたのか」


「ああ 何回かは行ったぜ 帰りはリリーの話ばっかりでよ」


「それはすごいな」


「俺もさすがにそこまで人気があるとは思わなかったな」


「教会で手伝ってる姿を見たらみんな惚れるんだ」


「うーん」


「ポーション どうするんだ」


「うーん」


「送ってすぐ帰れば問題はないんじゃないのかい」


「ドレッサの案内もしてくれるって言ってたんだ」


「ポーション それは最悪だぜ」


「そうだな カミラが見知らぬ男と一緒にいたらハンブイヒでも大変な事になるぜ」


「そんなことになるなんてリリーは知らないのかな」


「知らねえはずだぜ 男が勝手に思い込んでるだけだからな」


 あごを手に当て考えていたリックが思いついたように言う。


「リリーと二人っきりじゃなければいいんじゃないか いつも一緒のペギーもいれば」


「どうなんだ クリストファー」


「でもなぁ 学校ならイケると思うんだけどよ 町中は誤魔化しきれないぜ」


「そうだ クリストファーも付き合えばいけるんじゃないか」


「俺もか」


「三人でポーションの観光案内でならバッチリだな」


「しょうがねいな 付き合ってやるぜ でも腕試しはしてからだ」


「明日 ちゃんと聞いてみるよ」


「それがいいな みんなも親に手紙を書いて一応の了承をとっておいたほうがいいと思う」


「俺の親は反対するかもしれないが、リックの名前を出せば多分OKだろう」


「俺なんか書いても無視だぜ 多分」


「俺は父さんに会えるかもしれない」


「そういえばもう1月だな」


「俺は師匠に上達を見てもらいたい」


「そうだね チューン師匠に今の自分を見てもらうのもいいし相談もできればいいな」


「お前ら一回しか合ってねいじゃねいか」


「ストアを通じてみんなチェーンさんの弟子だよ」


「俺もかよ」


「父さんの弟子がまた増えた」


「はっはっは」


 こうしてジャアクイモ草原へ行くことが決まった。



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 この世界での人外魔境は魔の森と翼龍が生息している山脈がある場所でワイバーンが確認できる場所へは行っては行けないというのが人族の常識となっている。


 ベロニーニとハートビートの北には龍山脈が突き出している、それゆえ魔素が多いのだが北へ進むと人外魔境と呼ばれる場所へすぐにたどり着いてしまう。


 そんな危ない場所に首都や旧首都があるのは魔素が多いだけではなく、肉の確保が容易だったからだ。


 その場所こそベロニーニとハートビートの間の北にあるジャアクイモ草原、別名魔物の王国と呼ばれている場所がある。


 ジャアクイモとはジャガイモに似た植物で魔素と栄養価の高い土地に繁殖するが、ジャアクイモ草原はジャアクイモの大繁殖地で、人には毒があり食べられないが魔物には耐性があるらしく雑食魔物は好んで食べる、しかも一年中花が咲き実がなる、ここに多く集まりそれを捕まえようとする肉食系魔物も集まってくる。


 魔素の分布がジャアクイモ草原を囲むようにFランクの魔物からAランクの魔物まで多種多彩が勢揃いする特別な場所だ。


 ここではゴブリン・オーク・オーガはもちろんハーピー・サイクロプスなど人族系の魔物が跋扈し棲み分けがなされている。


 雑食系もディア系ボア系ラビット系ラット系と多数生息が確認されている。


 陸系のドラゴンもわずかながら確認されている。


 人もまたボアやディアを狙って集まってくる。ジャアクイモ草原から溢れ出たボアなどを狩ってベロニーニやハートビートの冒険者ギルドに売って稼いでいるのである。


 またベロニーニやハートビートに魔物を来れないように南の部分には長い壁が建設されている、昔は権力闘争に負けたゴブリンやオークが南下して住民を苦しめたのだが壁の建設と冒険者の増加により被害は最小限になっている。


 ボアやディアの成体は1金貨から4金貨の間で相場になっているので4人から6人のパーティでも二三日で一匹でも倒せれば十分暮らしていける。


 ただいい場所はベテラン達に押さえられていて、新人達はより北へ侵入し、強い魔物に遭遇して障害を負ったり殺されたりして冒険者を辞めていく。


 ジャアクイモ草原で効率のいい狩りをして金を貯め、三十歳頃には店お抱えの冒険者になって護衛任務をして45歳頃に引退し、悠々自適に過ごすというのが理想的な冒険者と言われている。


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