遭遇! ブラコンシスター
本日は第九十四話を投稿します!
前回からの流れで今回はウィルの異母兄妹アドルフィーネが巻き起こす嵐をお楽しみ下さい!
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俺の胸に抱き着いて離れないアドルフィーネ。アンもルアンジェもあまりの出来事で硬直している。
「お、おい、アドル?」
「ん〜、はぁ♡何年か振りにウィル兄様の感触を堪能致しましたわ♡」
顔を擦り付けていたかと思ったら、ガバッと身体を起こしそんな事を宣うアドル。そこは変わらないんだな、と思いながら兎に角何とかアドルの両肩を持って引き剥がし
「……元気そうで何よりだな」
と改めて声を掛ける俺。暫く会わないうちに随分と成長したみたいで、すっかり淑女と言う台詞が相応しい大人になっていた。
「随分と背も伸びたな」
「それは当然です、私ももう22歳ですわ。何時までも小さいままではありません♡」
そう言って紅い瞳をキラキラさせながら、グイグイ迫って来るアドル。その仕草と言い態度と言い、未だに俺に対し恋愛感情を持っているのは明白だ。これだから会いたく無かったんだが…… 。自分の運の無さに思わず溜め息をつく俺。
「そう言う兄様こそ、ご壮健であられるみたいで何よりですわ」
当のアドルは俺のそんな思いなど気付く事も無く、とても嬉しそうに話し掛けて来る。
「今日は共同墓地に何か用事があるのか?」
このままズルズルと話をしている訳にもいかないので、アドルにここに来た用件を尋ねると
「はい! マリアネラ母様に献花する為に訪れた次第ですわ」
とこれまたハキハキと答える。だがちょっと待て?! 何でアドルがここに母さんが眠っているのを知っているんだ?!?
驚愕する俺に対しアドルは「そこは勿論、伯爵家の情報網を駆使致しましたわ」とあっけらかんと話す。そんな事に伯爵家の情報網を使うな!
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このまま逃げる訳にも行かず、仕方なくアドルに付いて再び母さんの墓まで戻る俺とアン達。
アドルは持ってきた花束を俺が捧げた花束の脇にそっと置くと、俺と同じ様に跪き左手を胸に当て黙祷する。やがて祈りを捧げ終えると立ち上がるアドルに俺は礼を述べる。
「ありがとうな、アドル」
「いえ、マリアネラ母様は私にとっても掛け替えのない方でしたので……」
そう言ってこちらを振り向くアドルには滅多に見れない憂いが垣間見えた。だがそれも一瞬、すぐさま笑顔でアン達に
「お2人には御挨拶が遅れまして──ウィルフレド兄様の妹でヴィルジール伯爵家現当主のアドルフィーネ・フォン・ヴィルジールと申します。お見知り置きくださいませ」
と綺麗なお辞儀を執り挨拶をする。
「は、初めましてアドルフィーネ様。私は世界樹の森精霊の一氏族である涅森精霊のアンヘリカ・アルヴォデュモンドと申します」
「初めましてアドルフィーネ様。私はルアンジェと申します」
アンもルアンジェも勉強会で学んだ作法を早速実践して頭を下げて挨拶を返す。
「アンもルアンジェも俺の冒険者仲間なんだ」
それを受けて俺も2人との関係を告げるとアドルは
「兄様は本当に冒険者になられたのですね……」
と何やら感慨深げに言葉を漏らすが──
「本当にって何なんだ?!」
「はい! そこも伯爵家の情報網で調べ上げましたわ!」
これまた花が綻ぶ様な笑顔で元気良く答えるアドルに、ガックリと脱力する俺。
こんなので大丈夫なのか、伯爵家!?!
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俺がひとりで悶々としているとアドルが俺の肩の上に居るコーゼストに気が付いた。
「あら!? 可愛い妖精様ではありませんか兄様!」
『お初にお目にかかります、アドルフィーネ様。私の名はコーゼストと申します。以後お見知り置きを』
宙に浮かんだまま器用にお辞儀を執るコーゼスト。
「はい! こちらこそよろしくお願い致します、コーゼスト様♡」
コーゼストに笑顔で答えると俺の方を向き直り
「兄様には妖精様の御加護もお有りなのですね! 素晴らしいですわ!」
1人で興奮するアドルだが……アドルよ、コーゼストの正体は妖精じゃ無くて態度のでかい有知性魔道具だ…… 。
『言わぬは言うに勝るとも言いますし』
コーゼストの奴が耳元でそっと囁く。お前が言うと説得力があるんだが!?
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流石に伯爵家の当主を何時までも立ち話させる訳にも行かず、仕方なく『銀の林檎亭』に連れて行く事にした。勿論アドルの乗って来た馬車に同乗してであるが。
頼むから銀の林檎亭に行っても大人しくしていてくれ、アドル!
「こ、これはアドルフィーネ様! この様な所にようこそおいでくださいました!」
案の定オリヴァー達が傅こうとして、やんわりとアドルに止められた。
「オリヴァー、イグリット、お久しぶりですね。今日はお忍びなのでその様な対応はしないでくださいませ」
「は、はい、申し訳ございません」
そそくさと香茶を淹れに奥に引っ込むイグリットと、帳場に戻るオリヴァー。
とりあえず食堂のテーブル席に腰を落ち着けると、イグリットが香茶を淹れてきてアドルが口を開く。
「本当に……9年振りですわね、兄様。まさかマリアネラ母様の墓参に訪れて兄様に再会するとは夢にも思いませんでしたわ。これはきっとマリアネラ母様のお導きかと!」
そこまで言うと急に気分が高揚になるアドル。そんな導きとかは要らんのだが?!
「そ、そう言えばアドルは何で今日母さんの墓参りに来たんだ?」
有らぬ方向に話が行きそうだったので無理矢理話題を逸らす。すると胸の前で手を組んでいたアドルは姿勢を正すと
「はい、兄様が伯爵家を去ってからその足取りを追いましたら、あの共同墓地にマリアネラ母様を埋葬された事を知りまして……伯爵家のゴタゴタを何とか片付けてからマリアネラ母様の元に馳せ参じた次第ですわ。それから月に一度墓参しておりますの」
……今、何気に足取りとか……俺は犯罪者じゃないんだが?! と言うか俺の行方を捜そうとするとかなんつー行動力なんだ?! 兄妹恋慕も甚だしい!!
でもまぁ、それはそれとして母さんの墓に花を手向けてくれていたのはアドルだったと言う訳か…… 。
「そうか……ありがとうアドル」
俺が頭を下げると慌てた素振りで
「頭をお上げくださいませ兄様! 先程も言った通りマリアネラ母様は私にとっても掛け替えの無い方ですので当然ですわ!」
白い肌を紅潮させて掌を顔の前でブンブン振るアドル。こうした所も昔と変わらないな。
そんな事を話していたら2階からパタパタとエリナが降りてきて、俺の顔を見つけるとパァーっと笑顔になり
「やっぱり声が聞こえると思ったら帰って来ていたのね、ウィル!」
何か嬉しそうな声色で話し掛けてきてアドルを見つけた。アドルも同様にエリナに視線を向けると
「「誰、この娘は?」」
見事なまでに2人の声が重なった。
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エリナとアドルにそれぞれ説明すると、エリナはアドルが伯爵家の現当主と言う話を聞いて固まってしまい、一方のアドルはエリナに鋭い視線を向けていた。エリナの反応はまぁまぁ予想していた範囲だし、アドルの反応はこれまた昔と変わっていなかった。
実はアドルは昔から俺が他の女性と話すと相手を射殺すかと思う程のキツい視線を浴びせるのだ。
何故そんな事をするのか、以前問い詰めた時に「兄様に言い寄る女性は全て敵ですわ!」と言い切った程である。兄弟恋慕もここまで来ると病んでいるとしか言えない。
おかげで伯爵家に居た頃の俺は、若い女性とお付き合いは疎か話すら真面にした事が無かったのだ。
そう言えばさっきアン達と話していた時にはこんな視線を投げ掛けていなかったハズだが? 色々疑問はあるがとりあえず今は── 。
「アドル。そんな眼でエリナを見るんじゃない……エリナもすまないな。アドルも悪気がある訳じゃないんだ」
「え、ええ……ってウィルって伯爵家の出だったのね」
俺に窘められて少し不機嫌な様子のアドルを横目に、エリナが驚いた様に訊ねて来る。
「まぁ、三男だけどな。黙っていて済まなかったな」
「いや、それは聞かなかった私も悪いから……」
両手を顔の前に突き出してふるふる振るエリナ。
「兄様は悪くありません! 皆、兄様の優しき御心につけ込んで兄様の心を掻き乱しているだけなのです!」
いきなり過熱するアドルの頭を手刀で軽く小突く。お前はそんなに興奮するんじゃない!! エリナだけじゃなく傍に居たアンやルアンジェもびっくりしているだろうが!?
「兄様……痛い」
当のアドルは涙目で抗議してくるが、俺が視線を合わせるとシュンと縮こまる。
「いい加減落ち着けアドル。そもそもそんな喧嘩腰でどうするんだ?」
「申し訳ございません、兄様……」
俺に言われ更にシュンとなるアドル。ふと気が付くとルアンジェは驚いた顔のままだったがエリナとアンが引いていた。
「「伯爵家の当主様を小突くなんて……」」
2人の呟きが見事に重なる。確かに伯爵家現当主ではあるが、その前に俺の妹である──血の繋がりは半分しか無いが。
『これは──所謂修羅場と言う状態にある訳ですね』
俺の左肩に乗っていたコーゼストが1人で納得したみたいに頷きながらそんな事を宣う──何だよ修羅場って!?! そんな俺の抗議の思念を無視して、コーゼストが手をパンと打ち合わせると
『では折角なのでもう1名、関係者を招聘する事にしましょう』
言うが早い、俺達の目の前に突如ヤトが顕現された!
「御主人様の一の僕、ヤト参上──って何かあったの、御主人様?」
当のヤトは周りの状況を飲み込めずキョトンとしながら尋ねて来る。
エリナは兎も角、アドルは突然現れたヤトに紅い瞳を見開いて硬直していた。
何で火に油を注ぐ、コーゼスト!?!?!
アンのみならずエリナベルまで巻き込むアドルフィーネの嵐! かなりの暴走気味でございます。それにしても重度のブラコン……こんなので大丈夫か、伯爵家?!
今後しばらくはこのアドルフィーネが登場しますのでご注意ください(笑)
*アドルフィーネ・フォン・ヴィルジール…………22歳、プラチナブロンドの腰まであるロングヘア、紅玉色の瞳。
ウィルの異母兄妹の妹で重度のブラコン。ウィルの事を盲愛して偏愛している。
ヴィルジール伯爵家現当主でオールディス王国内務卿代理。領地経営と内政に手腕を振るう。
☆「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」も連載中! 地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師のルーツィアの2人が主人公の物語です。是非よろしくお願いします!
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