一角獣の淑女たち(☆イラスト有り)
本日は第九十一話を投稿します!
今日は王都ギルド本部に叙爵するパーティーが集まり、何やらしています。そして新キャラ登場!
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「──では本日はここまでと言う事で。お疲れ様でした」
グラマス殿の執事であるファルトマンがそう言って席を立ち、部屋を出ていく。それを見送って俺は大きな溜め息をついた。
脇を見やるとアンがあからさまにホッとしている一方、ルアンジェは平然としている──まぁルアンジェは自動人形だしな。一度見聞きしただけでバッチリである。
『銀の林檎亭』に腰を落ち着けた翌日、ギルド本部でファルトマンを講師とした王宮作法の勉強会が開かれた。当然ながら参加者は爵位を授かるSクラス冒険者達で、今回は俺達を含めて25人6組の冒険者パーティーが集まっていた。
確か『竜牙』と『蒼の深淵』と『月明かりの梟』と『炎精霊』と『白の一角獣』……だったかな?
「やれやれ、つっかれるなぁ〜」
俺の後ろにいる黒髪の戦士が伸びをしながら大きな声でぼやく。
「仕方あるまい。何せ儂らは曲がりなりにも貴族の仲間入りを果たすのだからな。これからは国王陛下に会う機会を増えるだろうしな」
それに答えたのは立派な髭を蓄えた侏儒の戦士だった。
「しかし──そもそも私達は冒険者なのですから。その様な作法など簡単には覚えられませんよ」
侏儒の言葉を受けて青髪の魔法士が意見を言う。
「でもよぅ、こうして王城に入れて王様から爵位を貰えれば、更に俺達自身に箔が付くってもんだろ? 名声と金と女! これが手に入るんだったら少しぐらいは我慢しないとな!」
魔法士の言葉を受けて茶化すのは、目付きの鋭い赤髪の闘士。そして「違いねぇ!」とお互いのパーティーメンバー達と大声で笑い合う。因みに今話したのは順番に『竜牙』『月明かりの梟』『蒼の深淵』『炎精霊』のリーダー達だったな。
最初にこの部屋に集まったパーティ達に俺達の事をグラマス殿が紹介したら、やたら注目の視線を浴びた。まぁ大体はグラマスが「彼等は僕の直属だからね」と紹介した為であるのは間違い無いんだが。何となく妬みと嫉みの視線を感じるのは気の所為か?
『少なくとも気の所為ではありませんね。明らかにこちらを無視していますし』
肩の上のコーゼストが不満げに耳元で囁く。
『気に入らないわね〜! 御主人様! 私を出して! コイツら懲らしめてあげるから!』
うちの武闘派さんもやる気に満ちている。
『まぁまぁ、グラマスのあの言葉を聞いたら他のヤツらが妬むのが普通なんだし、大体ケンカする為にここに居るんじゃ無いんだからな。ヤトも我慢しろ。『銀の林檎亭』に帰ったら好きなの食べさせてやるから』
俺は念話でコーゼストとヤトを窘める。アンもルアンジェもそんな事は全く気にしてないみたいだしな。
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「ちょっと良いかしら?」
不意に後ろから声を掛けられ振り向くと青紫の宝石の様な瞳と目が合った。
「……すまないんだが、顔が近い」
「ん? ああ、済まなかったわ」
そう言って近付けていた距離を置き直しながら、長い金髪の髪を掻きあげ言葉を紡ぐ女性。
「私は冒険者パーティー『白の一角獣』のエリナベルと言うの。貴方達『黒の軌跡』とは一度話して見たかったのよ」
そう言いながら笑顔で握手を求めてくる金髪美女のエリナベル。
「あ、ああ、俺はウィルフレドと言う。よろしく」
差し出された手をしっかり握る俺。それにしても随分明朗だな…… 。そんな疑問が顔に出ていたらしく笑顔で答えてくれた。
「不思議がるのも当然ね。私達はシグヌム市から来た、と言えばわかるかしら?」
「すると……ネヴァヤさんの所の?!」
「ふふふ、私達冒険者は皆ギルマスには敬意を払うんだけど、「自然体で付き合ってくれる貴重な冒険者だ」とネヴァヤ様が仰っていた通りの人ね。それに『紅霞』の子達も世話になったし」
俺の反応にくすくす笑いながら楽しそうなエリナベル。そして自分の後ろにいるメンバー達を手招きする。
「改めて、私は『白の一角獣』リーダーのエリナベル・セルウィンよ。職業は魔法騎士。因みに今年で22歳よ、よろしくね」
そして隣りに立つメンバーに目配せする。
「私はベルタ・シトリンと申します。剣士を務めさせていただいてます。20歳です」
「私はユーニス・モリッシー。同じく剣士を熟してます。20歳です」
「あ、私はフェリピナ・ラスです! 魔法士をやらせてもらってます! 18歳になったばかりです!」
「えっと、私はマルヴィナ・ティレットと言います。女神官を務めています。19歳です」
なんと『白の一角獣』は5人全員女性だったのだ! しかも前衛が3人と言う攻撃偏重型のパーティ編成でだ。さっきの作法の勉強会の時にはちっとも気付かなかった…… 。
『恐らくはエリナベル様が身体強化か補強系の魔法を行使されるものだと推測しますが』
今まで黙っていたコーゼストが自身の推測を口にすると、それを聞いたエリナベルは驚いた顔をして
「貴方が噂の妖精殿ね! それにしても良くわかったわね?! そうよ、私は身体強化魔法を使えるのよ!」
と蘊蓄を傾ける妖精コーゼストに感心する。他のメンバー達も興味津々である。
「ああ、紹介が遅れたな。コイツはコーゼスト、知性ある魔道具で最近身体を手に入れて図に乗っているから気を付けろ」
俺はコーゼストを指差しながら、また注意喚起と言う名の紹介をする。
『この前も言いましたが、その紹介は如何なものかと思いますが? 初めましてエリナベル様、以後お見知り置きを。それとエリナベル様が話された御自身の職業が私の推測の根拠になります』
コーゼストが抗議の声と挨拶と説明を同時に熟すと言う器用な真似をした後、今度はアン達をこちらに手招くと『白の一角獣』のメンバーの視線がアン達に集まった。
「初めまして皆さん、私は『黒の軌跡』のアンヘリカ、見ての通り涅森精霊です。弓士……と魔法士と剣士を熟します。年齢は現在400歳だけど森精霊では若年者なの。よろしくお願いしますね」
アンの自己紹介に皆んな「噂の黒の美姫に会えるなんて……」と何やら盛り上がっている。そういやそんな二つ名が付いていたな。まぁ俺もだが。
「私はルアンジェ。パーティの中では遊撃を熟している。こう見えてもヒトじゃなくて自動人形。一応設定された年齢は13歳。よろしく」
続いてのルアンジェの自己紹介に今度は皆んな一斉に「エッ?!」となった。まぁ見た目は唯の美少女だからな…… 。何やら驚きが部屋の反対側に居る他のパーティーからも聞こえて来たのは気の所為じゃ無い筈だ。
「あーっと、改めて。俺はウィルフレド・ハーヴィー、『黒の軌跡』のリーダーをしている。職業は戦士と斥候と魔物調教師を熟している。こんなナリだが25歳だ。よろしく頼む」
最後に俺が挨拶を終えると『白の一角獣』のメンバーから「よろしくお願いします」と声が掛かり、リーダーのエリナベルが顔を少し紅潮させて話し掛けてくる。
「へぇー、ウィルフレド殿とアンヘリカさんは2人共に三重職なのね! それにルアンジェちゃんは自動人形ですって?! そんな風には見えないわね♡」
そんなエリナベルに俺達は
「俺の事はウィルで良いぞ」
「私の事もアンで良いから」
「私は──ルア?」
と好意的に話し掛けると、パァーっと破顔し「では私もエリナと呼んで!」と言ってくる。他のメンバー達も「自分の事は気軽に呼んでください」と言ってきた。
何とも心根の良い連中である。だがルアンジェ、ルアって何なんだ!?
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俺達とエリナ達の話はまだ続いていた。部屋の反対側から浴びせられる何人かの視線が痛い。多分まだ10代ぐらいだろう『竜牙』と『蒼の深淵』と『炎精霊』からだと思うんだが…… 。片や『月明かりの梟』の侏儒達は静観を決め込んでいるみたいである。
「しかし、エリナの職業は魔法騎士か……聞いた事はあっても実際の保有者には初めて会ったな」
「私も三重職の人に2人同時に会えるとは思わなかったわ」
俺の台詞に柔らかな笑みを浮かべるエリナ。そんなエリナに頭に浮かんだ疑問を聞いてみる──魔法騎士の職業を取得する為の条件をである。
快く受けてくれたエリナが言うには、先ず基本の職業に「騎士」若しくは「戦士」を持つ事が前提条件で、尚且つ最低2つの魔法の技能の保有とその行使が常に可能であるかとの事だった。その条件さえ揃えばギルドでの職業の焼き付けの時に「魔法騎士」として統合されるのだそうだ。
そこまで話を聞いていたら教会の鐘が3つ鳴り昼時を告げる。話の続きを何処かで食事をしながらと言う事になり、一旦部屋を出る俺達と『白の一角獣』の面々。他のパーティ達もぞろぞろと部屋を出ていく。
さてと、折角なので皆んなで『銀の林檎亭』で昼飯を食べるとするか…… 。
ここに来て美女軍団の登場です! エリナベル達「白の一角獣」は今後ウィルと絡みまくります!
他のパーティーは……モブです、多分(笑)
*エリナベル・セルウィン…………22歳。魔法騎士を熟す。冒険者パーティー『白の一角獣』のリーダー。見事な金髪の腰まである長髪。灰簾石の様な青紫色の瞳。
*ベルタ・シトリン…………20歳。剣士を熟す。パーティーの副リーダー。暗金髪の肩までのセミロング。淡褐色の瞳。
*ユーニス・モリッシー…………20歳。剣士を熟す。灰金髪の胸元までのロングヘア。茶色の瞳。
*フェリピナ・ラス…………18歳。魔法士を熟す。蜂蜜色のショートヘア。琥珀色の瞳。
*マルヴィナ・ティレット…………19歳。女神官を熟す。緋金髪の尻までのロングヘア。蒼玉の様な青い瞳。
☆エリナベル・セルウィンのイラストをmanakayuinoさんに描いていただきました!manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




