任務完遂とレアメタルとスリーサイズ
本日は第八十三話を投稿します!
迷宮『精霊の鏡』から帰還したウィル達『黒の軌跡』の面々。早速グラマスに報告に上がりましたが…… 。
そして久しぶりにあの人にも会います。
-83-
──コトン
執務机の上に片手に収まる程の魔水晶を置く。
「これが依頼された品物だ」
『マスター、その言い方だとイカガわしい取引に思われますよ』
コーゼストの至極真っ当な突っ込みに、思わずムグッと変な声が出てしまう。
「うん、確かに」
一方のグラマスは全く動じる事無く、相変わらずの笑顔で記録核を受け取った。頼むから突っ込んでくれないか?
「それで……どうだったかな? アソコは君達にとっては宝の山だったと思うんだけど?」
グラマスは為たり顔でそう言うと、ニッコリと笑顔を深める──その意味深な笑顔にコーゼストの予測が的を得ていた事を確認する。
『なかなか有意義な時間でした』
俺が答える前にコーゼストが答えた。
『私達それぞれに益があり全体としても戦力増強に繋がりました。またあそこに置かれていた魔道具類は粗方回収しましたし、現在は合間を見ながら解析していますので冒険者ギルドの益になるものは解析出来次第提供できるかと』
「──何だい、わかっていたのか」
コーゼストの爆裂魔法級の衝撃発言が飛び出したにも関わらず、ケロッとしているグラマス! もしかしたらこの2人は意外と気が合うのか?
「それってどういう事だ?」
『グラマス殿は、私達にあの部屋にあった魔道具の類をわざと回収・解析させて冒険者ギルドとして使えそうな物を還元させるつもりだったのです。勿論私達が使用しない部分においてですが。現にその為、ルアンジェが見つけた魔導小火砲やアンが見つけた腕輪やヤトが見つけた鎧についてはグラマス殿は話題にすらされていません』
「な、なるほど……」
「しかし良く気付いたね、僕は敢えて話さなかったんだけど」
俺はコーゼストの洞察力に納得しグラマスは感心する。
『それは──グラマス殿が何故私達にあの場所を見せたのか、その利益と不利益を考察した結果に過ぎません』
何となく偉そうに宣うコーゼスト。絶対いまドヤ顔していたろ、お前…… 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
グラマスに報告を終えてラーナルー市に戻った。回収して来た魔道具類はコーゼストにお任せするとして、俺はヤトの軽鎧を調整してもらう為にドゥイリオのガドフリー武具店にそのまま向かう事にした。
ドゥイリオにはヤトの武器の件もあり、事前に『精霊の鏡』に向かう事は連絡しておいたので、出来ているであろう武器の受け取りも兼ねてである。まぁ、改めて謝ろうとは思うんだが…… 。
「おぉ、ウィルか?! どうやら無事に戻ってきたらしいな!」
何時もと同じ様に店内のノッカーを鳴らすと、奥からドゥイリオが顔を出して大声で迎えてくれる。
「20日ぶりぐらいか──すまなかったな、ドゥイリオ」
「なーに、お前達ならちゃんと戻ってくると思っていたぞ!」
そう言いながら俺の背中をバシバシ叩いてくる! 軽鎧の上からでも結構痛い!
「それで今日はどうした? ただ引き取りだけって感じじゃないな」
「ああ、実はな──」
俺はヤトを手招きするとドゥイリオに説明を始めた。勿論『精霊の鏡』の施設の詳しい話は暈して、ただ単に未発見の隠し部屋を見つけ、そこで打ち棄てられていた魔道具を回収して来たと教えるに留まった。
ドゥイリオは黙って俺の話に耳を傾けていたがヤトの軽鎧が星銀と緋緋色金で出来ていると聞いた途端、「な、な、なんだって〜!!?!」と食い付いて来た!
「緋緋色金といやぁ、ごく稀に古代遺跡で見つかると言う希少金属じゃねぇか!!?」
そう大声で叫ぶとヤトが着込んでいた軽鎧に張り付く!
「なになに?! 怖いんだけど?!?」
そんなドゥイリオにヤトも思わず逃げ腰である。
「うむむむ、こいつは確かに緋緋色金! しかもこいつは星銀と交互に重ね合わせてあるのか!?」
「見た事があるのか?」
唸るドゥイリオに訊ねる俺。するとドゥイリオはヤトから外してもらった肩甲を捏ねくる様に眺めながら
「以前に一度だけな。緋緋色金はドワーフでも滅多にお目に掛かる機会が無いシロモノだ!」
ましてや半侏儒の自分なら尚更だとはドゥイリオの談である。それにしてもえらい喰い付きだな!?
「で、こいつの調整は出来そうなのか?」
ヤトの軽鎧を矯めつ眇めつしているドゥイリオに改めて質問する。そもそもドゥイリオに出来なければお手上げである。
「うん? 幾らかの緋緋色金と多少の時間が有れば出来ない事は無いが……」
『それでしたらこれをお使い下さい』
そう答えるドゥイリオに対しそれまで無言だったコーゼストが不意に話し掛けると、その目前に『精霊の鏡』で回収して来た魔道具の残骸を無限収納から転送させて来た!
『まだ全て解析出来ていませんが、とりあえず緋緋色金で出来ている魔道具の残骸を幾つか提供します。これで足りますか?』
コーゼストの言葉に一瞬目を剥くと、目の前に積まれた魔道具の残骸を手に取り
「い、いや、これだけ有れば問題ない! と言うかこの量だとお釣りが来るぞ!?」
と思わず声が上擦るドゥイリオ。どうでも良いがドゥイリオは普段でも興奮していても声がでかい。
『そこは余った分はドゥイリオ殿に無償で提供します──マスター、よろしいですね?』
何とも太っ腹な事を宣言するコーゼスト──そして相変わらずの事後承諾である。まぁ、構わないが。
「コーゼストが言う通り余った分は自由に使ってくれて構わないぞ、ドゥイリオ──うぉ!?」
俺がコーゼストの言葉を肯定すると、不意に両手をドゥイリオの岩の様な手で掴まれたと思ったら、えらい勢いでブンブン振られる! ちょ、ちょっと、腕が千切れる!?!
「すまん! ウィル、コーゼスト、恩に着る!」
早口で捲し立てるドゥイリオに「あ、あぁ」としか返せない俺──最近この展開が多くなって来ている気がする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「と、兎に角だ、やって貰えるなら調整は任せる。ヤト、軽鎧をドゥイリオに一旦預けるんだ」
腕を持っていかれそうになりながら俺がそう言うと、ヤトはブツブツ言いながら軽鎧を外してドゥイリオに預けた──「壊さないでよね!?」と言う台詞と共に。
ドゥイリオに噛みつきそうなヤトに前の胸当てを手渡しながら、宥めつつ確認する俺。
「大体どの位で出来そうなんだ?」
「そうだな……調整だけなら3日あれば大丈夫だな……あ、もちろん金は要らんぞ!?」
改めて聞いてみたら意外と早く出来るみたいで、しかも金は掛からないらしい。まぁあれだけ大盤振る舞いしたから当然といえば当然なのか? こっちは武具全般の専門じゃないから相場がわからん。
「わかった、宜しく頼む……そういや鎧の為の採寸はしなくてもいいのか?」
とりあえず納得して新たに浮かんだ疑問を聞いてみた。俺達は既製品を調整しているが、ヤトはそもそもヒトじゃないからわからないんじゃないか?
「ん? まぁ身丈とかはザッと見て判るんだが……」
いくらヤトが魔物とは言え女性の三位寸法を測るのは、ドゥイリオと言えども憚られるみたいである。するとコーゼストが
「ヤトの体高は⒈59メルト、蛇身部分は3メルト、胸回り85、腰回り60、尻回り89ですね」
またもや爆裂魔法をぶちかました!! そんな秘匿情報をほいほいバラすじゃない!
「ば、馬鹿野郎! そんな事を大きな声で言うンじゃねぇ!!」
あたふたとするドゥイリオの頬が心做しか紅いんだが? まぁ俺も少し顔が熱いんだけどな!
一方のサイズをバラされたヤトは「え? ナニナニ??」ときょとんとしている。
「コーゼスト……お前、何でそんなに詳しいんだ?!」
『ヤト達は共生化した際に全ての情報は取ってありますし、このパーティ全員の情報も収集してあります』
俺の詰問に対して、然も当然の様に宣うコーゼスト。とんだ収集癖である。
俺が何とも言えない顔でコーゼストと問答を繰り返していたらドゥイリオが「えへん」と咳払いをすると
「あ〜、兎に角だ! その寸法に調整すれば良いんだろ?!」
大声で話を纏めようとする──何だかヤケになっていないか?
「あ、あぁ、それで宜しく頼む」
答える俺も思わず声が上擦る。頼むからそんなに冷たい視線を浴びせかけないでくれ、アン!
何とか依頼を終えると俺達はガドフリー武具店をあとにした。外に出ると日が地の彼方に沈もうとしていた。
「よし……それじゃあ宿屋に向かうとするか」
当然いつもの『蒼眼の新月』なんだけどな。
「それじゃあ私は血塗れ牛のお肉食べたい!!」
俺の背中から抱きついて耳元で大きな声で肉を所望するヤト──お前は本当に元気だな?!
「まぁ、お肉は兎も角、まずはゆっくり休みましょう」
「ん、賛成」
アンはそんなヤトに苦笑しながら、ルアンジェは何時も通りに淡々と同意の意を示す。
そんなこんなしながら俺達は宿屋が並ぶ南区へと歩を進める。まだやらなきゃいけない事があるが、とりあえず明日にする事にして。
折角ドゥイリオに会ったのにヤトの武器を受け取るのを忘れていた事に気付いたのはベッドで寝る時だった──うっかりしていた!
久々の登場は半侏儒のドゥイリオでした!
ヤトの軽鎧の調整を任せられるのは彼しかいませんからね!
それにして……思いの外ヤトはスタイル抜群であります! バストはEカップですしね! そして意外と純情なウィルとドゥイリオなのでした!
いつもお読みいただき、ありがとうございます。