自分の在り方と迷宮での邂逅
本日第八話投稿します。自己確認は重要な事ですよね。そしてまたトラブルの予感が…… 。
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転移陣で第四階層に来た俺達は、準備を確認して探索を開始した。迷宮を進む道中、コーゼストに質問するとしよう。
「コーゼスト、質問が有るんだが?」
『何なりと』
「お前が言ってた『共生化』について、もう少し詳しく聞きたいんだ」
『どの辺りをでしょうか?』
「うん、まず共生化の効果なんだが……仲間にした魔物との意思の疎通? は何とかわかったんだが、その先の話が──」
『──つまりマスターの理解出来る様に掻い摘んで話せ、と言う事ですね』
「──ハイ、ヨロシクオネガイシマス…………」
このあと本当に掻い摘んで話してくれたコーゼスト先生の言う話では──── 。
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先ず俺自身の能力に関わる事だと──ファウストの素早さや筋力等の戦闘能力が一部付与されているらしく、今の状態だと魔法付与された武具の能力+ファウストの能力の一部+俺自身の能力=今の戦闘能力になるそうである。
事実、ダンジョンに出没するホブゴブリンやハイコボルトの類と闘った時、やたら身体が軽く感じたし素早さも上がっていた。お陰で以前より楽勝だったのは間違いない。
それとハイコボルトの群れに横薙ぎに剣を振るった時、剣の軌跡に沿って光が飛び出し群れを纏めて両断したのには魂消た! コーゼストが言うにはコレはファウストの技能『爪撃破』と言う技能らしい。
そんなのオレと闘った時にはファウストは出して無かったが? と思いコーゼスト先生に質問したら『ファウストとマスター双方は共生化により格が上昇しているから』との事だった。
つまりファウストはレベルが上がった為、新しいスキルを使う事が出来る様になり、それを俺も使えるんだと。
それもこれもコーゼストの特殊技能『共生化』が極めて重要なのだそうだ。細かい事はサッパリだが大体言いたい事はわかった。つまりは便利なスキルを労せず手に入れられたと言う事だな!! と一人無理矢理納得していた。
因みにここで言うレベルとは、倒した魔物の魂から受け取り自らの魂に刻まれる、言わば経験値の総量の事である。経験値が一定値まで貯まると、レベルが1つ上がるのだ。
現在の俺とファウストのレベルだが……俺が40、ファウストが49だそうだ(コーゼスト発表)。何でも共生化した者同士で魂の並列化とやらと、レベルの補完とやらが働いているだと言っていたな……言ってる意味はサッパリだったが。
大体、俺のレベルの3割の値がファウストに付与され、ファウストのレベルの3割が俺に付与されている感じなのか? ややこしいが…… 。ともかく俺自身も随分上がったんだなぁ~、とぼんやり感じていた。何か狡い気がするがな………… 。
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それとすっかり忘れる所だったが、この世界のレベルの上限は120だそうだ。因みにギルマスみたいなSクラス冒険者だと大体80前後になるらしいとはコーゼストがギルマスを視たらしく言っていた。尤もコーゼストの判断している数字の元ネタは、今から400年前のモノだからあまり当てにはならないけどな。
まぁこうしたモノは単なる目安に過ぎないんだが。何はともあれ、目安としては役立つ事には変わらない。これからも大いに活用させて貰おうと思う。
勿論、相棒になったファウストの能力も優れていたのは言うまでも無い。特にコーゼストより敵の感知能力に長けていて、ファウストがいち早く警戒→コーゼストが詳しく感知すると言う流れが出来て遭遇戦には非常に有効だった。
ただ他の冒険者達に出会った時に、ファウストは俺の使役魔物だといちいち説明するのが面倒ではあったが──まぁ普通に考えてヘルハウンドの成獣を使役しているなんて俄には信じられないのは良くわかるんだけど──── 。
因みにその時出会った冒険者達のレベルは、コーゼスト先生がしっかり測って念話で教えてくれた。何でもデータを多く集める事により計測の精度が上がるから──とはコーゼストの弁だ。他人にバレない分には構わないと思うので許可はしておいた。
気が付けばファウストが相棒になったのでとりあえず単独では無くなったのだが、しかし欲を言えばやはり人間とパーティーを組みたいなぁ~と切実に思う。だけどなぁ………… 。
今の俺とファウストのコンビはパーティーには組みづらいだろうし、何と言っても俺は目付きが悪い……らしい。
現に店屋や市場で子供に出会うと、10人中10人が泣く──果てはルピィからも『ウィルさんは目付きが怖いから』と散々な評価を受けた。
人付き合いはそうした事もあり苦手な方である──まぁそれだけが原因では無いのだが。喋る分には問題無いのだが、気の利いた話が出来ない……仕事絡みの事なら話せるがそれ以外、特に自身の話は大の苦手だ。
これもルピィが言うには『コミュ障』とか言うのだそうだ──ほっといてくれ!!
そんな事をしながらでも第四階層の探索はサクサク進んでいた。避難所で休んでいると必ずファウストが膝に乗りたがりそれを宥めたり、たまに他の探索中の冒険者達に遭遇しては、その度ファウストの件を説明してからお互いの情報を交換し合ったりしていた。
何となく感じていたのだが、俺達が迷宮を探索する速度はかなり速かったみたいだ。大体普通の2倍ぐらいか? 既にこの階層の中間付近なのだがダンジョンに潜って未だ17日目なのだ。本来ならひと月は掛かる筈の行程をである。そんな中──── 。
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「──グルルルル」
「ん? どうした、ファウスト?」
『──通路前方100メルト先の部屋で複数の反応有り。恐らく他の冒険者パーティーが魔物と戦闘中だと推測します』
ファウストはコレに反応してたのか、大したモンだ。それにしてもコーゼストの感知も段々上がって来ているな。
「何人ぐらいのパーティーだか判らないのか?」
『待ってください───確認しました。人間の反応は5名、魔物は3体。レベルは尚不明。もう少し接近した後、再度チェックします』
「5対3か……それなら楽勝なんじゃ──」
そう言いながらものんびりと歩を進める俺達。
『──・────おかしいです。今魔物の反応が一体消滅した筈なのに再度出現しました』
コーゼストは向こうの戦況を観測していてそう告げた。
「?! なんだそりゃ!」
『──再チェック完了。魔物の一体はオークジェネラルです。レベルは40。恐らくオークを召喚しているのでしょう。──再度オークを召喚した模様。パーティーの平均値は35、現状のままだと勝率は40パーセント──4割です』
「!! やべぇ! 急ぐぞファウスト!!」
俺とファウストはその部屋に向かって通路を駆け出した!
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急いで通路の角を曲がると何かと争う音と剣戟の音が聞こえて来た!
「──くっ?! またオークを召喚した?!」──「リーダー?!」──ガキーンガキーンッ! ──「おい、まだ扉は開かないのか?!」
「まだ解錠中です!!」──ガキーンッ!
「早くしろよ! このままだと──」
──ドカーンッ! ──「ま、魔力がもう切れそうです!!」──ドガッ、ザシュッ!
「?! リーダー、アンヘリカが突破されたッ!」──「くっそーッ!?!?」
こりゃ間に合わないか──?! 扉が──見えた!!
「ファウスト!! 構わん、ぶちかませ!!!」
「ヴォーーーン!」
ファウストが物凄い勢いで閉じた扉に頭から体当たりを敢行する!同時に扉の蝶番が弾け飛んで扉が部屋の中に吹き飛ぶ!体当たりの勢いのままファウストが部屋に飛び込む!
俺も続けて中に飛び込むと、突然の乱入者にオークジェネラルと相対するパーティー双方が一瞬固まっていた!そして続けて「へ、ヘルハウンドだ!!」と言う叫び声が上がる! それを無視する形でファウストに『命令』する!
「ファウスト! オークどもを押さえ込め!!」
「ヴォン!!」
3体に増えたオークを迎え撃つファウスト!俺はその隙にへばっているパーティに近付き声を掛けた。
「大丈夫か?!」
見ると5人の状況は散々だった。男が2人女が3人のパーティーは誰一人無傷な者は居なかった。長剣を握ったまま尻を付いている金髪の剣士と、槍の石突を床に付いて肩で息をしている茶髪の戦士は男だ。青い顔をしてへたり込んでいるプラチナの髪の魔法士と、扉の解錠をしていた赤毛の盗賊は女。
あと1人、パーティーとオークの間で盾を持ったまま左肩を負傷して倒れている女が一番重傷みたいに見えた。すぐさま駆け寄ると抱き上げて、腰のポーチから回復薬を出すと封を切り無理矢理飲ませる。
すると振り乱した白い髪がはらりと落ち、尖った耳が目に映った! エルフか?! ── ちょっと待て、何でエルフが盾役をしている?!
俺は唖然としながら回復薬で腕の中のエルフの傷が回復する様をただ眺めていた。
徐々に能力が発揮されつつあるコーゼスト。意外と出来る子かも?!そしてファウストも出来る子!このままでは主人公が埋もれてしまう気が……(焦)