re.eighth level 〜目に見えた真実〜
本日、第六十五話を投稿します!
第八階層の守護者部屋でウィル達が遭遇する真実とは?!
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「ヤトが造られた魔物だって?」
俺はコーゼストの発した言葉を、つい反復して問い直す。
「それって、因子を弄って……ってアレか?」
『はい。共生化していた時にヤトの身体の因子の分析を行ったのですが、私の情報基と照合を行った結果、元のラミアの因子が強化されている以外に竜の因子を確認しました。これは自然界に存在するラミアには有り得ない事です。そしてそれこそがヤトが造られたと言う根拠です』
「まぁ確かに説得力がある説明だが……目に見える証拠が無いと俄には信じられないな」
『証拠になる物はこの柱にあります』
俺の疑問にコーゼストが自信満々に答える──何だ、その自信のほどは??
そんな事を話しながら俺は柱の中を調べる。すると内部にはごちゃごちゃと線やら管やら機械が散乱し、下の方に硝子で出来た半球状の箱らしき物が置かれていた。中には何やらグニョグニョしたものが入っているが、良く見るとどうやら肉みたいである。
「あぁ、それが私が食べてた物よ! まだ出てるんだ……」
いつの間にかヤトが傍に来ていて、俺の後ろから覗き込みながら言ってきた──そんなに耳元で叫ばないで欲しい。そう思いながら硝子の箱に手を近付けると箱が綺麗に2つに割れて開き、中にあった肉を取り出す事が出来た。
『──・・──分析完了。人造合成された肉で間違いありません』
「!? それって造られた肉って事か!?」
「そんな事良いから早く食べさせて!」
コーゼストの分析結果に驚いている俺から、引ったくる様に肉を奪うと一心不乱にかぶりつくヤト。生肉を食べたいとは思わないが──そんなに美味いのか、ヤト?
「はぐはぐ……んむっ、お腹空いてたのよね〜」
ただ単に腹が減ってただけかよ?!
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割れた柱の中には他にめぼしい物は見つからなかった。それにしても中の構造はルアンジェが封印されていた、あの繭とそっくりな感じがする。まぁココがコーゼストが示唆した通り生産設備なら多少なりとも似るのかも知れないが…… 。
「それにしても、何故ヤトは最初から名持ちだったんだ?」
『この柱の中に居た時にそう教育されたのだとと推測します。ある種の睡眠学習が施された形跡がありました』
そんな事を言い合いながら今度は柱の周りを注意深く調べると、柱の下の方に金属製の板が付いているのに気付いた。迷宮の床に長年積もった埃に埋もれていて見づらかったが文字が刻み込まれており、コーゼストに読み解いて貰うと『個体識別0**01・個体名イーヴィリアード』と書かれていたのだ! これでイーヴィリアード──ヤトがここで産まれたのはほぼ決まりだな…… 。
『恐らくこの部屋の何処かに管理端末が置かれている筈なのですが──』
一方のコーゼストはコーゼストでそう推測を言葉にするが、そんなに簡単に見つかる筈は────
「ウィル、こっちに何かある」
ルアンジェが俺を呼ぶ声がする──まさか管理端末が見つかったとかじゃないよな?!
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結果から言うとルアンジェが見つけたのは隠し部屋の扉だったのだが、その部屋の中にはコーゼストの予測通りに管理端末が置かれていたのだった。
水晶地図板追跡盤みたいな表示板に仄かに明かりが灯っており、まだ機構は生きている事を示していた。しかし、こうもあっさり見つかるとは………… 。
『間違いありません。これは管理端末──いえ、管理機構そのものですね。早速接続してみますので、その水晶表示板の脇にある水晶に左手で触れてください』
「こうか?」
言われるまま、水晶に手を触れると
『──*──**────接続完了。情報の読取開始────────**──****──*──因子改変プログラム及び生産リスト確認しました。これでここにある施設は生産設備だと確定しました。尚、ヤトに関する記述も見つけましたが──確認しますか?』
「見れるのか?!」
俺が驚くと水晶表示板に何やら見た事が無い文字と数字の羅列が表れ、それが忽ち俺達が使う文章に変わっていった。
『記述命令を言語変換しました。これで読めると思うのですが』
──コーゼストが読める様にしてくれたらしい。有難く拝見させて貰うと──── 。
ヤトは今から525年前、この生産設備で因子を改変して造られた人造の生物兵器と言う存在で、その完成体の一体なのだそうだ。
その完成体は全部で101体造られ、完成ごとに調整槽(俺達が見た柱群)に入れられていたらしい。そして500年前、『勇者』を迎え撃つ為に完成していた魔物は調整槽から出され戦闘に投入された──その数99体。
確か伝説では勇者が魔王城に攻め込んだ時に99体の一際強力な魔物と闘い、これを全て討ち滅ぼしたと言い伝えられているから一致する。文字通り既のところでヤトと1体は生き延びたのだ。
またヤトは初めて竜の因子を組み込む事に成功した成功例でもあった事も、最後まで使われなかった理由みたいである。そしてその後、この施設は活動を休眠し現在まで至った、と言う訳だ。
因みにヤトが目覚めたのは今から14年前で、切っ掛けはギルマス達のパーティ『煉獄』だったらしい。表示されている文章をそのまま読み解くと、『煉獄』がこの施設まで到達した事により眠っていた施設の防衛機構が目を覚まし、よりにもよって最高戦力である筈のヤトとあと1体を目覚めさせた──と言うのが真相らしい。
あとの1体についてはヤトが目覚めるほんの数日前に目覚めた事以外、めぼしい記述は無かったが。
「なるほどねぇ〜。私はここで産まれたのか」
「それにしても……勇者との戦いにも出さなかったヤトを、何で生産設備の防衛の為に目覚めさせたんだ?」
『それはここの管理機構の制御水晶が劣化した影響かと。誤作動による過剰防衛ですね』
「すると、ここに並んでいる柱の数々は全てその──調整槽とかと言う物なのよね? じゃあまだこの中には──」
『ここの施設の情報によるとまだ試作品の魔物が数体保存されているみたいです。私達が第四階層で遭遇した鬼族もここの産まれみたいですよ、アン』
「コーゼスト。私にも情報を回して欲しい」
『わかりました。これから情報を圧縮してそちらに送信します、ルアンジェ』
「…………どうでも良いが、何で皆んなここに居るんだ?」
いつの間にかヤトが背後から抱き着いてきていて、背中越しに表示板を眺めているし、アンは恐る恐るコーゼストに聞いているし、ルアンジェに至ってはコーゼストと情報のやり取りをしているし……ヤトは兎も角、アンとルアンジェは周りの調査と宝箱の回収は終わったのか??
『とりあえず今、言語変換出来るのはここまでですね。あとは記録水晶の劣化が激しく解析は難しいかと。時間を掛ければ修復出来ると思いますが──マスターの許可さえいただければ直ぐにでも取り掛かりたいと思います』
一方のコーゼストは飽くまでマイペースである。
「とりあえずそっちは普段に支障が無い範囲でやってくれれば構わない。寧ろこの施設をどうするかが重要だと思うんだが……」
『そこはマスターが憂慮すべき事では無いと思います。まぁ必要な情報は全て転写しましたし、こちらから何時でもこの生産設備を稼働させる事は可能ですが』
「……コーゼスト、お前が全権掌握をしたら俺がやらざるを得ないンじゃないのか?」
『いえ、そこはマスターお得意の丸投げで宜しいかと』
「……ヲイ」
何で俺は何時もいつも面倒事に巻き込まれるんだ?! まるで呪われているみたいであるが、原因がコーゼストなのは間違い無いのは確かである……はぁ。
「と、兎に角だ。宝箱の中身も粗方回収したし、これで見落とした点が無ければ一旦戻って報告しようと思うんだが」
俺は痛む頭を押さえながら、アンとルアンジェに確認する。
「ん、大丈夫。問題無い」
「私の方も問題無いけど……地上に戻ったら大変よね、ウィル」
ルアンジェは何時も通り淡々と、アンは苦笑しながら答えてくる。
「大丈夫! 御主人様に仇なす敵は私が全て駆逐しちゃうから!」
うちの武闘派が息巻いているが、大人しくしていて欲しいものである。
俺は大きな溜め息を吐くと、地上への帰還準備に入った。
ギルマスの顰めっ面が目に浮かぶ様だ………… 。
調査の結果、明らかになった守護者部屋=生産設備を巡る新事実とイーヴィリアード誕生の秘密!
ですがこれらは「魔王の庭」の謎のほんの一端にしか過ぎないのです。
その謎は今後話が進むに連れて明らかにしたいと思います!
いつもお読みいただき、ありがとうございます。




