魔物調教師 〜ラミアと増えた職業と〜
本日、第六十三話を投稿します!
めでたく退院したウィルを待ち受ける試練とは?(笑)
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ヤトに名付けをしてから4日後、めでたく治癒院を退院した俺はその足で、迎えに来たアン達と共に冒険者ギルドに向かっていた。
「…………はァ」
「どうしたの、ウィル?」
俺の盛大な溜め息を聞き付けてアンが尋ねてくる。
「いや……退院したばかりでギルマスに呼び出し喰らうとは…………」
「仕方ないわよ。ヤトの話なんだし……」
「わかっているんだが…………はぁ」
そう言いながらまたもや溜め息を付く。あの後アンが再度ギルマスを訪ねると、辛うじて復活していたギルマスから「ウィルが退院したら必ず来させろ!」と厳命されたそうなのだ。別に悪い事をしていないのだが、呼び出されるとつい憂鬱になる──悪い事してないよな?
『マスター、何事にも報告・連絡・相談は基本だと思うのですが?』
コーゼストがさも当然のように宣うが……お前がそれを言うか?!
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そんなこんなしている内にギルドに到着した。思わず引き返そうかとも思ったが、真顔のアンに促され玄関をくぐり広間に入った。受付帳場に向かうと
「あっ、ウィルさん?! 退院したんですね! おめでとうございます!」
目敏く俺達を見つけたルピィが帳場机から出てきて言葉を掛けて来た。
「ギルマスがお待ちですよ〜? もう朝からまだかまだか、ってうるさくて……」
……何をそんなに待ち焦がれている?!? ルピィの言葉に戦慄を覚えながら2階の執務室に向かう。何時もの如くルピィに抱きかかえられるファウスト──何だか悟った顔をしている。
──コンコンコン
「──開いてるぞ」
扉を開けるといつも通りの渋面のギルマスが、いつも通りに執務机に腰掛けながら出迎えた。ただ一点──いつもより顔色悪いけど…… 。
「……退院早々悪いが詳しい報告を聞こうか」
疲れた表情で尋ねて来るギルマス。かなりお疲れのご様子であるが……間違い無く俺達が原因だろうな…… 。これでヤトの事を話したら間違い無く驚愕死するんじゃないか?
何となく不安でいっぱいだが……言わない訳にはいかず、俺は口を開く。
「大体の事はアンから聞いた通りなんだが……」
「だがな、幾ら何でも俄には信じられん。だからお前の口から真実を聞きたい」
……成程、事が事だけにキチンと確認しておきたい……と言う訳か。
「それなら嘘偽り無く……第八階層で守護者の名持ちのラミアと遭遇して戦闘、これに勝ってラミアはコーゼストが共生化した。そして──」
俺はこの場にヤトを顕現させる事にした──その方が説得力があるからな。
「──これがそのラミアだ」
光が集まり形を成していく! やがて光が収まるとヤトが姿を表した──何故か元の姿で。
「──初めてお目にかかる。我が蛇麟族が半人半蛇のヤトだ」
あ……あまりの事態にギルマスとルピィが硬直していやがる…………やれやれ。
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──ベシッ!
「痛っ?!」
「ヤト……ヒトを威かすな」
俺はギルマス達をドヤ顔で威嚇するヤトの頭を、後ろから軽く小突く。
「はぁーい、御主人様。ごめん♡」
そう言いながらテヘッと笑うヤト……やれやれ。
「悪いなギルマス、ルピィ。ヤトには悪気は無いんだ(多分)」
俺が一応謝罪すると、自ら再起動したギルマスが
「待て! ヤトだって?! アンからの報告とは名前が違うと思うんだが?」
慌てたみたいに言ってきた。あぁ……あの時はまだイーヴィリアードだったな…… 。
「それは私が御主人様に新しい名をお強請りしたからよ〜。だから今の私はヤトなの♡」
ヤトが俺に抱き着きながらギルマスに言い放つ。だから胸を押し付けてくるな! そしてアンと共に何故かルピィの視線が凄まじく冷たい………… !
「そ、そうなのか……わ、わかった」
思わず頷くしかないギルマス──顔が引き攣っているぞ…… 。
「ゴホン、そ、それにしても本当にラミアなのだな……」
「アナタ達ヒトがどう思っているか知らないけど半人半蛇と言ったら私みたいのじゃないの?」
ヤトがやや不機嫌そうに頬を膨らまながらギルマスに難癖をつけると、ギルマスは「それは……そうだか……」と萎縮する。
──ペチッ
「あ痛?!」
「ヤト……そんなにギルマスに突っかかるな…… 。ギルマス、これでヤトがラミアだと確認出来ただろ?」
抱き着くヤトの額を指で軽く弾き、窘めると俺はギルマスに確認する。
「あ、あぁ……本当にラミアを使役したのだな……」
茫然自失気味に答えるギルマス。それでも納得はしてくれたみたいである。
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「それで……その……ラミア、じゃなくヤトは、お前がキチンと管理……出来ているみたいだな」
茫然としながらも何とか言葉を絞り出すギルマス。一方のヤトは弾かれた額を押さえブツブツ言いながらちびヤトに姿を変え、早速ルピィにモフられている──結局仮想体だったのか?! てかルピィよ、キミは本当に何でもモフるな!?
「その辺はな。少なくともヤトが不必要に暴れる事は無いから安心してくれ」
──多分だけどな!!
俺がそんな事を考えているとは知る由もないギルマスは、毎度の如くイスに深く腰掛けると大きく息を吐き
「ところでだ。ウィルには別の話が……まぁ今回の件に関係はあるんだが──お前、職業を増やさないか?」
等と突然飛んでもない事を言ってくる───職業を増やせって?
「いきなりどう言う事だ?」
「いやな。お前はファウストにデューク、そして今度はヤト……3匹の魔物を使役する事になるだろう? なのに何時までも取得している職業が戦士と斥候だけでは都合が悪くないか? だから「魔物調教師」を新たに付け加えないかと言う訳だ。勿論今回の件で色々と優遇措置はするし、副職業で構わないんだが」
成程……今の状況を鑑みてと言うより、今後冒険者を活動するにしても取っておいて損は無い、と言う訳か……だがなぁ…… 。
「そうすると俺は三重職になるんだが、問題無いのか?」
「特に問題は無いと思うが? 確かに三重職自体は珍しいだろうが、王都ギルド所属のSクラス冒険者にも何人かいるらしいしな。この前会ったオルティース・トリスタンも幾つかの職業を持っているらしいぞ」
「あ、でも普通戦士職持っている人で、魔物調教師も持っている人は殆どいらっしゃりませんねぇ〜」
……ルピィさん、それって物凄く目立ちません? あまり目立ちたくないんだが………… 。
『ですが、今後の活動を考えると必要な職種ではありますね』
今まで黙っていたコーゼストがさも当然のように言ってくるが──お前はまだ増やす気なのか?!?
「はぁ…………」
俺は深い溜め息を吐くと、覚悟を決める。
「……わかった。副職業に魔物調教師を付け加えて構わない。だが本来の意味での魔物調教師じゃないから、色々支援してくれれば助かるんだが……」
「あぁ、それは大丈夫だ。それじゃあ早速手続きを済ませようか──ルピィ!」
「は、はい!!」
ちびヤトを捏ねくり回していたルピィが跳ねる様に返事をする。解放されたちびヤトが、ぐったりして俺の方にどんより濁った目を向けて来るが──ファウストもデュークも一度は通った道なので我慢して欲しいものである。
「ギルドのウィルに関する管理記録を修正しておいてくれ! 大至急だ!!」
「わ、わかりました〜!!」
慌てて執務室を飛び出すルピィ。今にも転びそうである。そんなに慌てなくても…… 。
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「さてと……ルピィが戻り次第、引き続きお前達には頼みたい仕事がある」
ルピィがドタバタと執務室を出て行くのを見届けてギルマスが話し掛けて来た。
「……ギルマス、俺は病み上がりなんだが?」
俺が難色を示すとギルマスは疲れた顔で笑いながら
「そんなに難しい仕事じゃない。お前達が攻略した第八階層の守護者部屋の詳しい調査だ」
ギルマスから詳しい話を聞くと──現在、第八階層は閉鎖されているらしい。俺達が到達した守護者部屋は恐らく15年前にギルマス達『煉獄』が到達した遺跡で間違い無いらしいのだが──その詳しい調査の為、人に荒らされない様にとのギルドの判断なのだそうだ。
以前はとあるトラブルに見舞われ調査を断念した経緯があるのだが、勿論トラブルとはネヴァヤ女史の件なのは言うまでもない。
『確かにあの場所はキチンとした調査をした方が宜しいかと思います。ギルドにとってもマスターにとっても双方に利益があると思われますので』
何やらコーゼスト先生が意味深発言をしている。まぁ、俺もゆっくり調べたいとは思っていたし、何よりもコーゼストには色々聞きたい事もあるし……な。
「わかった。調査依頼、やらせてもらう」
俺の声にアンとルアンジェが頷く。
「よし、それなら第八階層へはお前達の一団だけ通れる様に手配しておくからな! 準備出来次第向かってくれ!」
こうして俺達『黒の軌跡』はヤトの居た部屋の詳細な調査をする事になった。ヤトは単純に古巣に帰れる事を喜んでいたが………… 。
まぁ、今度はヤトみたいのには当たらなくて済むのが幸いだけどな!
なんだかんだと言われ結局、魔物調教師と言う新しい職業を取ったウィル。結構流されています…… 。
ヤトは馴れ馴れしいと言うよりも、はっきり言ってウィルにデレてます! 今後のアンとルアンジェとヤトのウィルを巡る諍いに御期待ください!(笑)
それにしてもギルマスは人使いが荒いですが、決して出来ない事は依頼してないのが何よりですけどね。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。




