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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
半人半蛇の強敵編!
66/325

ヤト 〜なぜかラミアにも懐かれました〜

本日、第六十二話を投稿します!

第八階層の守護者(ボス)イーヴィリアードとの激戦を終え、地上に帰還したウィル達の話です。

今回はゆるく読んでくださいませ。

 -62-


「…………暇だ」


 迷宮(ダンジョン)「魔王の庭」の第八階層の守護者(ボス)との激戦を制し、文字通り満身創痍で地上に戻った俺はアンに懇願(こんがん)され(強制的に)、治癒院で1週間ほど療養(りょうよう)させられていた。

 怪我や骨折は上位回復薬(ハイポーション)と魔法で綺麗に治ってはいるが、流石に血を流し過ぎたので失った血が戻るまでとなっている。それにしても…… 。


「……する事が無い」


 武具は当然取り上げられ(預けてるとも言う)、4日は絶対安静と院専属の治癒師(ヒーラー)からキツく言われたので(トイレ)以外ベッドから動けずにいた──因みに今日で3日目であるが、俺にとってはまさに拷問みたいである。これならイーヴィリアードと()()()()()()()()()ずっと気が楽だった………… 。


『そんな事を言っていると、アンに心配されますよ?』


 ──そもそも話す相手が治癒師(ヒーラー)以外は()()()()()だしな………… 。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 トントントン──── 。


『ウィル、起きている?』


 おっと、アンが来てくれたみたいだな。


「ああ、起きているぜ」


 俺の返事に扉が開いてアンとルアンジェが入ってくる──当然ながらファウストはアンの胸に(かか)えられていた。


「ウィル、具合どう?」


 ルアンジェがベッドの(へり)まで駆け寄って来ると、心配そうに俺の顔を覗き込んで来た──今回も皆んなに助けられたな…… 。

 俺はルアンジェの頭の上に手を乗せ「大丈夫だ」と告げると、にこりと微笑んだのだ──何だかルアンジェが更にヒトっぽくなっているんだが?


「駄目よ、ルアンジェ。ウィルは療養しているんだから……ウィル、具合はどうかしら?」


 アンが優しくルアンジェを(さと)しながら、こちらに向かって微笑む。


「あ、あぁ。アンもありがとうな」


 その笑顔に思わずドキッとするが顔には出さない様にした───出てないよな?

 俺は話題をわざと振る事にした──照れ隠しじゃないからな?


「そういやギルマスには話してくれたんだろ?」


 そうなのだ、今回の件の顛末(てんまつ)はアンからギルマスに報告して貰ったのだ。決して押し付けた訳では無い!


「え、ええ、話したんだけど……」


 そう言いながら苦笑いを浮かべるアン。何でもイーヴィリアードの事を事細かに説明したら、ギルマスが椅子ごと後ろにひっくり返ったらしい──如何(いか)にも(もっと)もである。

 これで共生化(仲間に)したイーヴィリアードを見たら驚愕(ショック)で死なないだろうな…… 。


『そのイーヴィリアードですが、(ようや)

 調整が終了しました。何時(いつ)でも顕現(けんげん)出来ますが──どうします?』


 何故かこのタイミングでコーゼストが報告して来る。


「……お前、狙ってないか? 第一こんな所で顕現させる訳にはいかないだろが?!」


『それは当然──仮想体(アバター)ですので問題無いかと』


 しれっと(のたま)うな! でもまァ、何処(どこ)かで一旦は出しておかないと駄目……だよな…………はぁ。


 俺は渋々コーゼストに許可を出すと、ベッドで上半身を起こした状態の俺の足付近に光が集まり形を成していく! ──って何だ、この既視感(デジャヴ)は?!


 やがて光が収まると、そこには()()()()姿()()イーヴィリアードが現れた! 大体身長80セルト、ぐらいか? 下半身の蛇の部分も大体70セルト程しか無く、しかもややずんぐり体型。赤金色(レッドブロンド)の髪は胸辺りで、ひと言で言うと──だいぶ、いや、かなり可愛くなっている。

 ()()イーヴィリアードは大きな目をゆっくり開けると(しばたた)かせ周りをキョロキョロ見渡し、俺を見つけると突然飛び付いて来た!


御主人様(マスター)〜〜!!」

「おわっ?!」


 勢い余って俺を押し倒しながらも、俺に抱き着き胸に顔を(うず)めて来る()()イーヴィリアード──ヲイヲイ!


「ンン〜〜〜〜〜♡」


 どうでも良いが……頭を左右に振って顔をグリグリ擦り付けるのは止めろ!


「ア・ナ・タ・は・な・に・を・し・て・い・る・の!?」


「ん、駄目。次は私の番」


 アンが物凄い剣幕で、()()イーヴィリアードに食って掛かる──それはもう必死な形相で。

 そしてルアンジェ──次は私の番って、何の順番待ちなんだ?!


「良いじゃない、涅森精霊(ダークエルフ)。別に減る訳じゃないんだし。それと自動人形、これは早い者勝ちなの!」


 一方の()()イーヴィリアードも負けじと、俺にしがみ付いたままアンとルアンジェに平然と言い返している。全く……女3人 (かい)すれば喧々(けんけん)たるものとは良く言ったもんである……はァ。


 ────コツコツコツコツコツ、ガチャ。


「(──治癒院内ではお静かに)」


「「「「(──はい、すいません)」」」」


 治癒師(ヒーラー)の先生に小声で注意された──やれやれ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「しかし……お前、本当に()()イーヴィリアードか?」


 注意された事で全員平静を取り戻し、俺はベッドの上──より正確に言うと俺の膝上を占拠している()()イーヴィリアードに尋ねた。


「間違いないわよ、私は蛇麟族(じゃりんぞく)半人半蛇(ラミア)のイーヴィリアードよ」


 ……確かにその物言いは間違い無くイーヴィリアードだが………… 。


「でも、喋り方が違う」


「あ? あぁ。あっちはそれらしく()()()()()()()。こっちがホントの私よ、自動人形」


 ルアンジェの疑問にあっけらかんと答える()()──めんどくさいからイーヴィリアードで良いな──それにしても随分と明朗(フランク)だな。

 まぁ俺達としてもまさか()()()()()()意思の疎通が出来るとは思っても無かったが………… 。


「そ・れ・よ・り・も! ねぇ御主人様(マスター)! お願いがあるんだけど?」


 ……お強請(ねだ)りとか、その辺にいるヒトの女の子と大差ないな! (もっと)もお付き合いした事なんか一度も無いけどな!!


「……お願いも構わないが…………ひとつ聴いていいか?」


「なに?」


 ──俺はこれだけは()()()()()聴かずにいられなかった。


「俺はお前を()()()()()()()()() そいつに使役されるのに抵抗は無いのか?」


 聴かれたイーヴィリアードは、ふむ……と小さく唸って一瞬思量(しりょう)すると


「……まぁ正直に言うと思う所はあるけど…………構わないんじゃない? 人はどうだか知らないけど、私達魔物と呼ばれる存在には『勝つか負けるか』しかないから。どんな時でも勝った方が正しいとしか考えないのよ。私は負けてアナタは勝った。つまり()()()()()()()()()だから強い者に従うのに別に躊躇(ためら)うとか無いわよ。アナタの所にいるヘルハウンドもゴーレムも、皆んな同じ様に考えてるわ」


 と淡々と答えた。ファウストやデュークの想いまで教えてくれたのは助かるが…… 。


『納得がいかないのは解りますが、彼等の思考思想は聞いた通り極めて単純(シンプル)です。イーヴィリアードがそう言っている以上、マスターにはそうだと理解して貰うしかありません』


 …………コーゼストに(さと)されてしまった。


「そんなのは良いから! 私の願いは?!?」


 いきなりムキーッと怒るイーヴィリアード──結構短気である。


「わかったわかった! 何なんだ、お前の願いって?!」


「えっとね、私に名前を付けて!」


 不機嫌な表情から一転、満面の笑みで答えるイーヴィリアード──って名前だって?!


「お前にはちゃんと名前があるだろ?」


「確かにあるけど……()()()()()()()()()()()()()()()、ファウストもデュークもウィルフレドから名前貰ったって言うじゃない? だから私も御主人様(マスター)から貰いたいの!」


 いやファウストは兎も角、デュークはアンの命名なんだが…… 。だが、わざわざ新しい名が欲しいものなのか? 一方のイーヴィリアードは目を輝かせながら俺を見詰めてくる…………はァ。


「……わかった。だがあまり期待するなよ?」


「うん!」


 だからそんなに目をキラキラさせるな! ちゃんと人の話を聞いていたのか?! 全く…… 。しかし名前、か…………名前ねぇ…… 。

 俺は変な既視感(デジャヴ)(とら)われながらもイーヴィリアードの名前を考える。半人半蛇(ラミア)だろう……ヘビ……蛇ねぇ…………強い蛇…………か………………それなら……………………うん。


「『ヤト』」


「ヤト?」


 イーヴィリアードは不思議そうな顔で聞き返す。


「うん、昔聞かされた御伽噺(おとぎばなし)に出てきた遥か東の大陸にいると言う蛇の神が『ヤトガミ』って言うんだ。その名前を(もじ)ってみた」


 それを聞いたイーヴィリアードは盛んに「ヤ……ト、ヤト、ヤト、ヤト…………」と繰り返し呟き


「うん! 良いわね、ヤト! 気に入ったわ! 今から私はヤトよ!!」


 今までで一番の満面の笑みで喜びを表すイーヴィリアード、改めヤト。こうした所は俺達ヒトと大差ないよな…… 。


「礼を言うわ! 御主人様(マスター)!!」


 そう言ってまたもや抱き着いて来た──どうでも良いが、胸を押し付けてくるな! その様子にアンさんの笑顔が凍り付いているんだが!?

 片やルアンジェは、またもやあるはずの無い尻尾がブンブン振られてる気が?!? その頭のは犬耳か……?


 こうして新たに1人(1体)、俺達の仲間にラミアのヤトと言う(にぎ)やかな奴が加わったのだった。



治癒院に叩き込まれた(笑)ウィル。そして案の定このメンバーが1箇所に集まると騒動が……(笑)どうでも良いが病院では静かにしなくてはいけませんね。

そして新メンバーの半人半蛇(ラミア)のイーヴィリアード改めヤト! 想像以上に賑やかなキャラでしかも無自覚でございます(爆笑)

ユルい話はまだ続きます。


*女3人会すれば喧々たるもの…………女三人寄れば姦しい



いつもお読みいただき、ありがとうございます。


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