決着 〜生と死を分かつモノ〜
本日、第六十一話を投稿します!
守護者のイーヴィリアードに対しウィル・アン・ルアンジェ・ファウスト・デュークそしてコーゼストの本気が出ます。
そして遂に決着が!
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『それなら試したい魔法があるの。精霊魔法なんだけど──』
俺の考えを念話の連絡網で皆んなに話した所、アンからそういう風な申し出があった。今回の作戦にうってつけの魔法なのだそうで、効果があるのなら一向に構わないので了承した。
何でも詠唱はもとより、魔法が発動するまで時間経過が必要なので使いどころが難しい魔法なのだそうだが、かなり強力らしい。どうでも良い事だがアンの口調が随分明朗になっている気がする。
『ウィル、私も封印解除してもいい?』
ルアンジェからもまさかの申し出である。
『ルアンジェもか──って、封印解除って何だよ?』
『私の武装を使う為にはマスターであるウィルの了承が必要──駄目?』
『なんか物騒だが……了承する』
『ん』
ルアンジェに答えると俺はコーゼストに指示を出す。
『コーゼストは例の準備をしつつ、このまま防御に徹してくれ。』
『わかりました』
『ファウストもデュークも手筈通りにな……それじゃあ、やるぞ!!』
極僅かな時間に皆んなの意思の疎通を図ると、俺達は一斉に動いた! 先ずルアンジェの頭の上に光輪が浮かび上がると本来の姿に戻り、続けて何時か聞いたあの抑揚の無い声が響く!
《個体識別番号──Ω1000ーZ99──固有名称:ルアンジェ。全武装封印解除。全機構作動開始》
その台詞が終わるや否や、ルアンジェの光輪が一段と輝き、眩い光が収まると先程より髪が伸びたルアンジェの姿があった。いつの間にか右腕が小型の大砲みたいになっている………… 。そんな事をしている内にアンの詠唱が始まっていた!
『エスプ・デュ・アラバス・シルヴォスプレト──樹の精霊よ、お願い………………』
アンの周りに濃密な魔力が纒わり付くのが視える!この間もイーヴィリアードからの攻撃が続いているが、いよいよ反撃開始である!
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「よし、ファウスト、デューク! 思いっきりやっていいゾ!」
俺の掛け声に2体が動く! 先ずデュークが3メルトの天井に届く程の巨体に変わり、幾本もの巨大な金属槍をイーヴィリアードに向けて生み出した! それを見た俺は全力の空裂斬を重ね掛けで放つ! 同時に放たれる金属槍! それに合わせる様にファウストの破滅の咆哮が放たれた!
「射程距離射入──魔導火砲、弾種:魔力弾。最大出力発射」
更にルアンジェの右腕からタイミングを合わせ光が溢れ放たれた! それ等はデュークの金属槍を包み込み、激しい攻撃の奔流になって再びイーヴィリアードに迫る!
「うぬッ!?」
それを見たイーヴィリアードは即座に攻撃を止め、自らの目前に手を翳すと魔法障壁を張る! 俺達の攻撃は虚しく奴の魔法障壁の表面で爆散したのだった。
「……先程より威力が増していたが…………何度やっても我が盾は貫けぬぞ!」
イーヴィリアードが自慢気に言い放つ! が、そんな事は分かっている!
「『アラバ・ドゥンビィ・ディ・リスペース・ビィデ・エトプエンニリィ・ドゥレニスリニリミィ──樹木よ、虚空より堕ちて敵を貫け』樹木短槍 "奈落" !」
アンの詠唱が完成し、イーヴィリアードの頭上の天井に翠色の燐光を発した魔法陣が浮かび上がる! すると天井一面に生えている普通の迷宮蔦に変化が起こった!
蔦が蠢いたかと思ったら急速に巨大化し、ヒトの腕ほどもある黒々とした枝に変化すると、その太い枝は伸びては切り離され、伸びては切り離されを繰り返し直下に槍の雨となって降り注ぐ!!
文字通りの木の槍は、イーヴィリアードの上半身問わず蛇の身体問わず傷付けていき、遂には突き刺さる!
「グッ?! な、何だと?!!」
突如頭上に出現した魔法陣に呆気に取られ、イーヴィリアードの反応が遅れた! 絶え間無く降る木槍の一本が頭に当たり、瞬く間に整った顔が真っ赤な鮮血に塗れる!
「お、おのれ〜〜〜!!」
文字通りの憤怒の形相になったイーヴィリアードは何本かの木槍が蛇の胴に突き刺ささるのにも構わず、両手を頭上に掲げ魔法障壁を張り樹木短槍を防いだ!
「フ、フフフフフ、惜しかったな……だが我の身体に深手を負わせた責は、その生命で償って貰う……!」
そう言って獰猛な笑みを浮かべるイーヴィリアード! それは是非とも遠慮する!
「コーゼスト!」
『はい──『複写』。アン、引き継ぎます』
樹木短槍 "奈落" をコーゼストが引き継ぎ、自由になったアンが魔力回復薬をグッと煽り、そしてすぐさま次の魔法を発動させる!
「──樹根呪縛!」
床に突き刺さる木槍から突如太い樹の根が生まれ、脚元(?)からイーヴィリアードの身体に絡み付き締め上げる!
「な、ナニ!?!」
動きを封じられたイーヴィリアードが驚きの声を上げる!
「今だ!!」
「くっ?! ぬるいわァー!!」
この機を逃さず全員での一斉攻撃を放とうとする俺の掛け声と、イーヴィリアードの怒声が同時に響く! 一瞬ののち再度放たれた一斉攻撃を、イーヴィリアードは辛うじて頭を振り口から強烈な咆哮を放った! これはファウストの破滅の咆哮?! いや、まさか竜の咆哮か!?!
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イーヴィリアードが放つ咆哮は、俺達の攻撃の奔流を呑み込むと真っ直ぐに向かって来る──これは不味くないか?!
咆哮はコーゼストが張った障壁に物凄い勢いでぶち当たると、何重にも張られた障壁のひとつを消失させ次の障壁にぶつかる──このまま抜かれるのか?! そんな事が頭をチラリと掠めると同時に、あっという間に最後の障壁まで消失し咆哮が押し寄せて来た! ヤバい!!
「ウィルーーーッ!!」
「?! ア、アン?!」
アンが叫びながら傍らに駆け寄ると俺を庇う様に抱きついて来る! とアンの胸元が輝き、幾重にも組まれた魔法陣が突如目前に現れ向かってくる咆哮に対し同様の咆哮を放ったのだ! そして押し寄せて来る咆哮にぶつかると、何と咆哮をかき消してしまったのだ!!
呆然とするアンと共に何が起こったか確認する間もなく、俺は迅風増強を発動させると躊躇無くイーヴィリアードに向かって駆け出した!
アレは確かアンが持つ魔法術式消去機の「術式反転」──何れにしてもこの機会を逃す手はない!
俺はカイトシールドを投げ捨てると長剣を両手で構え、一直線にイーヴィリアードに向かって走る!
案の定イーヴィリアードは自らの咆哮が突如掻き消えた事に動揺しているみたいで、俺に対して反応が数瞬遅れた!
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォおお!!!!!」
俺はイーヴィリアードの胸目掛けてロングソードを突き立てた! 肉を裂いて骨を断ち剣がイーヴィリアードの身体に沈んでいく!
「ガ!? ガァァァァァーーーーー!? ウ、 ウィルフレドーーーーーー!!!!」
イーヴィリアードは断末魔の咆哮を上げ踠きながら、俺の首に手を回し鋭い爪を突き立てた! 首筋の肉に食い込んで流血するのがわかる!
「カハッ?!」
──コーゼスト! お得意の自動防御とやらはどうなっているんだ?!?
俺は頭の中で悪態を付きながらも、剣を突き立てるのを止めない!! 首筋の肉にイーヴィリアードの爪がどんどん沈む感覚と息苦しさに嫌悪感を覚えながら、ふとイーヴィリアードと目が合った。その金色の目には涙が溢れていた──こいつ、死にたくない……のか?
一瞬の逡巡を経て俺は思い切って尋ねてみる──勿論、剣は突き立てたままであるが。
「お前…………生きたい……のか?」
「……………………(コクッ)」
俺の問い掛けにジッ……と俺の目を見ながら小さく首肯するイーヴィリアード。
だが時遅く、剣はイーヴィリアードの胸を貫き背中に抜ける所だったのだ。涙に濡れた金色の瞳から光が喪われ、首を締め付ける手から急速に力が無くなる──!?
「コーゼスト!!」
『──Confirmation of submission(服従化確認)』
俺の言葉を待っていたかの様に、ついさっきまで沈黙していたコーゼストが即座に行動を起こす!
『隷属術式構築』
『個体:ラミアへ魂の刻印完了』
『素体質量 虚数変換開始』
イーヴィリアードの身体が変換の光に包まれる──そして。
『変換完了──収納』
次の瞬間、光になったイーヴィリアードはコーゼストへと飲み込まれていったのである。
何とか勝利を収めましたウィル達。色々ご指摘はあるでしょうが、この様な結果にしました。
それにしてもやっぱりと言うか案の定と言うか……イーヴィリアードを仲間にしました。
次回の話はユルい話になります(多分)。
*魔導火砲…………自動人形であるルアンジェの武装。ルアンジェの右前腕が変形展開して現れる小型火砲。弾種を使い分ける事により様々な攻撃を行う事が出来る。所謂ゼ〇サーガのK〇S-M〇SのR・カノンである。
*樹木短槍 "奈落" …………樹の槍で相手を穿つ樹木短槍の上位精霊魔法。相手の頭上より大量の木槍を絶え間なく降らせる。樹木が有る場所と言う縛りはあるが、かなり強力な魔法である。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。




