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魔王の庭、三度(みたび)の再び

本日第六話投稿します!漸くダンジョン探索編本格的に開始─されません!(笑)実は今までの話を繋げる回想シーンのてんこ盛りであります!期待された方、申し訳ありません(謝罪)


*2020年12月7日改訂

 -6-


「さて……と」


「魔王の庭」に改めて入宮(にゅうきゅう)した俺達は、一気に第三階層の最後の部屋の手前に有る転移陣(ポータル)のある部屋に転移して来た。この転移システムは何でも今から千年前に存在していた古代魔道文明と言うのが(のこ)したモノらしい。


 なので当然、今の魔法士達に|新たに創り出す事は出来ないらしい。精々中身の情報を書き換える事だけ、だそうだ。

「今の我々の文明は千年前より(すた)れている」とは知り合いの魔法士の話である。

 ──何故廃れたのかって?そんなの知らんが──── 。


『マスター、事前にファウスト本体の顕現(けんげん)をしておいた方が良いかと』


 俺のそんな思考はコーゼストの台詞に叩き切られた。そういやコイツも古代魔族が創り出した魔道具だったんだっけなぁ── 。


「それは、どうすりゃ良いんだ?」


 いきなり言われてもやった事が無いからさっぱり分からん。


『本来はマスターの思考を検知し命令コマンドを確認してから自動(オート)で喚び出すのですが、今回は初めてと言う事もありますので音声入力によるコマンドの実行を行います』


「あーっと、つまり声に出しゃ良いんだな?」


『その通りです』


 偉く御大層な言い回ししやがって………… 。


 とりあえず気を取り直して『命令』を声にする。そういやコーゼストにちゃんとした命令するのは、これが初めてだったはずだよな── 。


「よし、ファウストよ──元の姿に!!」


 うん、何か小っ恥ずかしいんだが!! 知らないヒトに見られたら恥ずかしくて悶死しそうである。


『Yes、My master』


受動(マニュアル)による顕現コマンド受領──』


『──アバターの顕現解除』


『──同一座標に素体顕現実行』


『──虚数変換、ファウスト顕現化します』


 子犬の姿のファウストが光に覆われると、そのシルエットが大きく(ふく)らみ始める。それは子牛程の大きさまで膨らむと光が薄れてきて── 。


「ガルルル──」


 ──そこには本来のヘルハウンドの成獣の姿に戻ったファウストがいた。やっぱりデカいな!?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


『──顕現化完了。自動(オート)モードに移行します』


 コーゼストはファウスト本来の姿を顕現し終えてそう報告して来る。一方の俺は従魔登録の首輪がちゃんと大きくなっているのを確認して安心する。しかし、改めて良く見ると顔が滅茶苦茶怖いな! やっぱりファウストはヘルハウンドと言う魔物なんだよなぁ……等とそんな事考えてたら── 。


「ヴォン!」


 ファウストが頭を勢い良くぶつけて来た──ちょ、な、何だ?!


「うぉっと?!」


 そのままファウストに押し倒され、更に(じゃ)れつかれてデカい舌で顔を舐めて来る! そんな勢い良く舐め回すなよ! 顔が持っていかれる!!

 あまりの勢いに(はた)から見た絵面(えづら)を思い浮かべる俺。これって絶対に襲われて喰われている様に見えるよな…… 。


「ッ! ふ、ファウスト。落ち着け、落ち着けっての!?」


「ヴァン!」


 俺の声に反応してファウストが離れる。うわっ、顔が水を(かぶ)ったみたいにびちゃびちゃだぁ。(よだれ)を手で拭う俺の前には、今の今までちんまりしていたのとは程遠いドッカリとしたファウストが、前脚を揃えて「お座り」の姿勢のまま尻尾をブォンブォン振って風を巻き起こしていた──物凄く埃が舞い上がってるんだが?!


『──私を無視して戯れあうのも結構ですが、そろそろ(よろ)しいでしょうか?』


「うるせぇ! 俺だって好き好んでやってる訳じゃねぇ!!」


 コーゼストに大きな声で抗議する俺。全く、遊んでる訳じゃないのに酷い言われ様だ── 。


「クゥーン」 


 俺の大声に、それまでご機嫌に尻尾を振っていたファウストが悲しそうな声と共にしょんぼりする。


「あ……お前に言ったんじゃないからなぁ」


 慌ててファウストに近付くと頭を撫でてやる。今はこんなに(なつ)いてるファウストだが、正直コイツとの戦闘は苦労した記憶がある──えーっと、確か……………… 。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 コーゼストとの最初の出会い(ファーストコンタクト)に動揺した俺は、そのまま取る物もとりあえず転移陣(ポータル)を使って迷宮(ダンジョン)を出て冒険者ギルドに駆け込んだ。それで運良く居合わせたギルマスに事の顛末(てんまつ)を話し、コーゼストを外せるか極秘に魔法士まで呼んで調べて貰ったが……結果は「今の魔法技術では外すのは不可能」だった。


 それを聞いて顔面蒼白となった俺とギルマスがうんうん悩んでいる最中、いきなりコーゼストが俺達2人の話に割り込んできてギルマスがビックリしたりもしたが、それでも改めてコーゼストの事を詳しく聞く事が出来、何だかんだでコーゼストは〈ギルドが承認したインテリジェンスアイテム〉として俺の所有である事など諸々(もろもろ)認定登録されたのだ。(ただ)し同時にギルドの総力を挙げてコーゼストの分析と()()()()()()()()()引き続き検討する──事も決定したのである。でもまあ古代魔族の創り出したインテリジェンスアイテムのコーゼストを、今の魔法士がどうこう出来るとは到底思えないが。


 その後、頑張って気持ちを切り替えて改めて「魔王の庭」に潜った俺は隠し部屋に一旦(いったん)立ち寄り、幾つかのアイテムを回収した。そこでコーゼストから勧められた新しい装備を身に着ける事にした。


 それにより強化底上げされた自身ので身体能力とコーゼストの能力のお陰で、その後再開した迷宮探索も第一階層の途中から第二階層をサクサクと攻略出来たのだ。


 気付けば予定をかなり短縮した形で第三階層に到達する運びとなった。第三階層で遭遇する魔物達は、前の2つの階層と比べても多少強力になって来ていたが別段苦戦はしなかった。そんなこんなで迷宮探索を進めていたら── 。


『──この先に魔物の反応が有ります』


 ある部屋の扉の前でコーゼストから警告が発せられる。事実コーゼストの出してくる情報は確かな物だ──第一階層・第二階層は勿論、ここ第三階層でも今の今まで間違いはひとつも無かった。


 それもダンジョンの通路の曲がり角などの視認しづらい場所でも正確に周囲の魔物達に反応している。大体前後左右それぞれ30メルトの範囲か? 但し、どれだけ強いか弱いか? 等の細かい部分は不鮮明な情報ではあるが───何でもまだ目覚めたばかりなので本調子では無い、とは本人(?)の言葉ではあるが。


 ──全く400年も寝てたのにとんだ寝坊助野郎である。どんだけ血圧が低いんだ? まあそもそも腕輪に血圧も何もあったもんじゃないが。


 あとは俺との同化とやらが進めばもっと能力が発揮出来るらしいが──はっきり言って傍迷惑(はためいわく)な話である。


 まぁそれでも『この先、○○メルトに○○○が居ます』とか言われると、心構えと準備が出来てかなり楽ではあったが──そんな事はコーゼストには口が裂けても言えない事である。何故ならコーゼストの奴が調子に乗って威張(いば)るのが目に見えるからである。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 そんなしょうもない事を思いつつ、ゴソゴソと水晶地図板(マップタブレット)を取り出して自分の今いる位置を確認する。


 このマップタブレットも千年前に創り出された魔道具で、冒険者ギルドに登録している冒険者がCクラスに昇格するとギルドから貸与(たいよ)される。片手に収まる大きさのクリスタルの板に自分の位置は勿論、今まで通過して来た地図と道程と距離に方角、日の出日の入りも時間も表示されるスグレモノの魔道具なのだ。


 更にダンジョン内では攻略し終えた階層毎の地図も出ると言うオマケ付きである。但し、破損若しくは紛失した場合は気が遠くなる様な賠償金を払わさられる事になるんだが………… 。


 ──本当に千年前の古代魔道文明ってヤツは大したもんだよなぁ……等と思いながらマップタブレットを作動させて、自分が進んで来た日数と地図の表示から大まかな移動距離を素早く計算した。


「──そろそろこの階層もあの部屋で最後だと思うけどなぁ……」


 まぁ、多少の誤差は勘弁して欲しい所ではあるが── 。


『私もそう推考します』


 ここに来て珍しくコーゼストと意見が合った俺は思わず苦笑いを浮かべる。


「んで? あの部屋の中から反応がしてるんだな?」


『はい』


「あの部屋がラストだと、多分この階層の『守護者(ボス)』が居るかも知れないんだが──」


 守護者(ボス)──それは特定の階層に存在する上位個体である。今まで第一第二共に守護者(ボス)には遭遇しなかったのでそろそろじゃないか──とはまぁ俺の勘なんだが…… 。


『少々お待ちください───間違いありません。反応は一体のみ。恐らく守護者だと思われます』


「やっぱりか……ところでどんな魔物なのかわからないのか?」


『前方の部屋には特殊な結界が張られているらしく、正確な判別を妨げています』


「……全く肝心な時に使えねぇな……でもまあそんな仕掛けがあるって事はほぼ守護者(ボス)で確実だろうな………」


 今までで一番緊張する場面を迎え、無意識に身体が(こわ)ばる自身に気付き、なるべく力を抜く様に意識した。それと共に呼吸をゆっくり深呼吸に切り替えて心の平静を保つ──よし。


 (いく)守護者(ボス)とは言え、ここまでの魔物の強さから考えて多少苦戦する程度の筈だと、俺は相手を過小評価してしまった。


「……周りには他に魔物がいる気配は無いんだな?」


『動体センサー及び音響探査にも反応ありません』


「……よし、開けるぞォ…………」


 俺はゆっくり()つ慎重に部屋の扉を開けて中に入る……薄暗い部屋の奥には真っ黒な闇が存在していた。


 その闇にじっと目を凝らす──確かに何かが居る気配がする。


 すると闇の中に2つの紅く光る瞳が突如として浮かび上がる!


 それを視認した瞬間、背中を「ゾクリ」とした感覚が流れた! それと同時に入って来た扉が独りでに閉まる!


「グルルルルルゥゥゥゥゥ─」


 低い唸り声を上げながら奥の闇が動き出す!いや、闇かと思ってたのは真っ黒な魔物──魔犬だった! こいつは──!?


「──へ、ヘルハウンド……だと?!」


 それが最初にコーゼストが共生化した危険度Aランクの魔物ヘルハウンド──ファウストとの遭遇だったのだ。



時間軸を揃える為の説明と回想は次回も続きます。ある意味我儘な女性みたいなコーゼストに手を妬く主人公です!


*水晶地図板(マップタブレット)=古代魔道文明の遺産の一つ。所謂スマホである。



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