自責の告白 若しくは迷宮命名
本日、第五十一話を投稿します!
イオシフの迷宮の命名と言う大事な事を後回しにしていましたが、漸く決定します!
そして、何で今までお金を受け取らなかったのか? うっかりにも程が有ります(私が)。
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結局ラファエルとコーゼストがノリで作った魔法術式解析能力の魔道具は、あとから出たラファエルのアイディアにより「魔法術式消去機」と言う魔道具として一応完成した。
簡単に言うと、相手が発動させた魔法の効果を打ち消す「術式反転」と言う防御魔法を発動させる魔道具なのだそうだ。
詳しい話はラファエルが自慢気に言っていたが、さっぱりわからなかった──が、実際アンの轟炎槍を打ち消したのには驚いた。勿論実験台にはラファエルが自ら立候補したのは言うまでもない。
それにしても……アンがまた新しい魔法を覚えた方が驚きだったのは、口が裂けても言えないが………… 。
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「どうです? 似合います?」
「……あぁ、似合っているぜ」
「うん、綺麗」
『流石はラファエル殿ですね』
「当然であるよ、うん!」
「旦那様、社交辞令だとお判りくださいませ」
「ワンワン!」
「…………」
結局最初に出来た「魔法術式消去機」は首飾形の魔道具に更に姿を変え、アンの装備になった。コーゼストがラファエルに交渉した結果である。ラファエルはラファエルで、この魔道具を今度行われる魔法士ギルドの集会に提出するのだそうだ──きっと荒れるだろうなぁ…… 。
『そこはラファエル殿に一任で宜しいのではないかと』
念話でコーゼストが宣うが……まァ俺達の事は決して話さない約束だし、こちらに飛び火しないなら面倒事は丸投げだな!
因みにルアンジェにも、この魔道具をと思ったのだが「魔法術式を覚えたから良い」のだそうだ──流石は自動人形。
「そういやラファエル……」
「何であるかな?」
俺はシグヌム市で感じた疑問を聞いてみた。
「お前、何でシグヌム市に入る手続きの時に馬車から一歩も出なかったんだ? それにネヴァヤ女史はお前の事を知っていたみたいだった。何故だ?」
「う、うむ……」
何やら言い淀むラファエル──やがて観念したみたいに話し始めた。
「──元々我が家はツェツィーリアの元伯爵だったのであるよ。既に断絶されているがね…… 。その時の伝手で、イオシフの迷宮の話がいち早く私の所にもたらされたのであるよ。あとネヴァヤ殿とは、ツェツィーリアからシグヌム市を越えてオールディス王国に入国する時に入国審査で少し揉め事があり、その時の顔見知りなのだよ」
何とも驚きの内容だが、何となくそんな事だろうとは思っていた。
「やっぱりな……」
「その口調からすると、気付いていたのであるか?」
「何となくだがな……決定的だったのは馬車で旅している時の食事の時、お前が『良い食事を』と言った事があっただろ? あれは確かツェツィーリアの仕来りだった筈だからだ」
俺がそう言うとラファエルは「あの時であるか……」と心底驚いた顔で声を上げる。
こっちだってまさか実家での教育が役に立つとは思わなかったがな………… 。
「……それでどうするのかね?」
「うん? どうするって?」
ラファエルは、言葉を選びながら
「私は──貴様に事実を告げていなかった。隠し立てする気は毛頭無かったが、結果として騙していた事になる……その責をどうするのだ」
そう聞きにくそうに尋ねてくる。責って………… 。
「あのなァ……」
俺は頭をガシガシ掻くと、ラファエルに向き直り
「それがどうしたってんだ。お前は俺の昔からの知り合いの偏屈魔法士ラファエル・アディソン。それ以上でもそれ以下でも無い、違うのか? それに真実だか何だか知らんが、聞かなかったのは俺だ」
そう小言の様に言うとラファエルは
「……偏屈は些か心外であるのだよ」
と先程とは一転、つかえが取れたみたいな明るい顔で文句を言ってきた──やっぱりコイツはこうで無いとな。
『これが友情と言うものなのですね』
──違うぞ、コーゼスト。これは腐れ縁って言うんだ!
俺は念話だが声を大にして言うのだった。
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ラファエルの所で何のかんのした後、ラファエルから「魔法術式解析能力」を教えた謝礼として金貨3枚を受け取った。俺にはさっぱりだがコーゼストは妥当な金額と言っていたので、有難く頂いておく事にした。
また訪ねる事を約束してラファエルの屋敷を辞すると、冒険者ギルドに向かった。ルアンジェの件は未だ回答待ちなのは理解している──今日の用件は、イオシフの迷宮の件である。
あの迷宮を踏破した俺達には迷宮への命名権が委譲されているが、ラーナルー市に戻る旅程の間、ラファエル達も交えて話し合った結果をまだ告げて無かったのと、ネヴァヤ女史からの「紅霞」の救出要請の特別報酬をまだ受け取っていないので、いつ支払って貰えるかの確認である──何かギルマスに言われそうな気がするが仕方ない。
ギルドに着くといつも通りに玄関を潜り帳場に向かう。いつも俺達が来ると応対してくれるルピィは珍しく席を外していたので、近くに居たギルド職員に声を掛けギルマスに繋いで貰った。2階の執務室に通されると一昨日より一層 渋面なギルマスが出迎えた。
「…………まだ2日しか経っていないんだが」
「そんなのは解っている。俺だって阿呆じゃない」
俺が不満げに答えると、大きな溜め息を一つ吐いて向き直るギルマス──どうでも良いが今の溜め息は何だ?
「それで? 用件は何だ?」
「イオシフの迷宮の名付けと、ネヴァヤ女史からの特別報酬の件なんだが……」
俺がそう言うと、また大きな溜め息を付くギルマス──だから何で溜め息を付く?!
「その話なら──」
そう言って執務机の引き出しから、ジャラジャラと音がする麻袋を出して机の上にドカッと置きながら
「一昨日の話の後、ネヴァヤが転送陣で送って来た。金貨で30枚あるらしい。受け取れ」
無愛想な顔で受け取りを促す。俺は黙って麻袋を手に取って、無限収納ザックに仕舞い込んだ──いつも思うんだが、たまには笑顔で接して欲しいものである。
『マスターと私が厄介事を持ち込むうちは駄目だと思いますが』
『厄介事とか言うな! 好き好んでトラブルなんぞに首を突っ込んでる訳が無いだろう?! 』
コーゼスト先生の念話での冷静な指摘に、念話でツッコミを入れる俺──酷い言われ様である。
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「それで──イオシフの迷宮の命名の件だが……」
そんな事とは知らないギルマスが訊ねて来る
──おっと、そうだった。
『また忘れる所でしたね……』
コーゼストから呆れとも取れる口調でツッコミが来た。お前は俺の奥さんか?! まだ独身だけどな!!
コーゼストの言葉を受けて、ジト目で見てくるギルマスの視線を無視して俺は咳払いをすると、あの時のメンバー全員で決めた名前を告げる。
「 " 混沌の庭園 " 」
「何?」
面食らった表情で目を瞬かせるギルマス。
「あの迷宮は、正に混沌そのものだった。これからは出現する魔物も他の迷宮と変わらないものになるだろうが──これはあの迷宮の最深部まで到達した、俺達の素直な感想をそのまま命名したんだ」
「…………お前にしては随分マトモな命名だな」
「……俺一人の意見じゃない。アンやラファエル達とも話し合った結果だが?」
「なるほどな……それなら納得出来る」
「何だか俺の命名感覚が悪いみたいな言い方だな?!」
確かに今まで俺が命名したのは、ファウストとルアンジェだけだから自慢出来る訳じゃないが──扱いが酷くないか?!
『ギルマス』
この時機でコーゼストが発言する。
『こう見えてマスターは中々ネーミングセンスが良いのですが?』
──コーゼスト先生、こう見えてとは何だ?こう見えてとは?! アンも後ろで俯きながら手で口を押さえ肩を震わせない様に!
色々落ち込みそうになる俺の手をルアンジェは不意に握って来て
「ウィルの付けてくれた私の名前、私は気に入っている」
ひとこと言ってくれる──中々出来た子である。自動人形だけど………… 。
気を取り直してギルマスに、イオシフの迷宮を " 混沌の庭園 " で登録してくれる様に伝えると「それじゃ、ギルド本部にはそう連絡しておくからな」と請け負ってくれた。
やれやれ、やっと肩の荷が降りた……………… 。
この後、ツェツィーリア共和国に難易度A級 迷宮 " 混沌の庭園 " が冒険者ギルドより正式に発表されたのである。
イオシフの迷宮は "混沌の庭園" に決まりました!
そして一連の報酬は金貨30枚(300万円)也! まぁ所謂人命救助ですから妥当かと。
そして相変わらず魔道具作りには妥協をしないコーゼストとラファエルでした!
*魔法術式消去機……コーゼストとラファエルが生み出した魔法防御系の魔道具。放たれた魔法に対して同じ魔法を発動させて魔法そのものを相殺する。「術式反転」と言う同じ魔法を放ち返す技術が使われている。
*轟炎槍……火属性の最上級に位置する単体攻撃魔法。ヒトの胴回り程の太さの轟炎の槍で相手を滅殺する。
いつもお読みいただきありがとうございます。




