Luange ~月の天使とトラブルメーカー?~
本日、第四十五話を投稿します!
またもや新メンバーが増え、益々騒々しくなるウィル達一行(笑)
-45-
『Luange──ですか。「月の天使」と言う意味合いになるのでしょうか』
コーゼストがやたら感心したみたいに宣って来る。これにはきちんとした理由があるんだ。
「あの管理施設で目覚めた時に、さっきみたいに光輪が現れただろ? それを見て天使かと思ったからな。それに最初に見た時に白い肌が月の光の白さに感じたから、最初の受けた印象で決めた」
『マスターにしては抒情的な名付ですね──意外です』
「悪かったな! 何なんだ、その感想は?!」
『──方舟の月天使。なかなか機微に触れる良い名だと思いますよ』
俺が機嫌を悪くすると、取って付けたような誉め方をするコーゼスト………こいつは~~(怒)
そんな俺とコーゼストの掛け合いを、唖然とした顔で見ていたネヴァヤ女史だが、自力で再始動して
「わ、私もなかなか良い名前だと思いますが……方舟とは?」
女史は変な支援と共に、疑問を呈して来た。
『方舟とは古代魔導文明に伝わる「創世記」に描かれている「天翔ける船」の事です。アルカとはその方舟と言う意味です』
コーゼストが何時もと変わらず、しれっと宣うが……俺も初耳である。何だその方舟って?! ネヴァヤ女史が固まったぞ?!
『アルカに侵入した時に入手した情報ですが、特に聞かれませんでしたので』
またもやしれっとしているコーゼスト先生……お前が一番穢れているんじゃね? 後ろの方では、ラファエルが眼を爛々とさせていたのは何時もの事であるが………
そんな事を考えていたら、オメガ改めてルアンジェに変化があった。自身の名前を繰り返し呟いていたかと思ったら、また頭の上に光輪が現れ抑揚の無い声が響いた。
《個体識別番号──Ω1000ーZ99──固有名称オメガを変更。新規登録名称 : ルアンジェを登録──主記憶装置に記録完了》
そこまで言うとフッと光輪が消え、俺の方に顔を向けて
「ウィルフレド・ハーヴィー、名前、感、謝」
と……少しも有難味を感じない言葉を投げ掛けて来た。それを聞いていたアンから挨拶の手解きを受けるルアンジェ。
「そう言う時は笑顔で、「ありがとう」って言えば良いのよ」
「笑……顔?」
「そう、笑顔」
「どう、すれば良、い? 笑顔」
「こう、口の両端を少し上げて──」
「こ、う?」
「ええ、そうよ。その顔でお礼を言うの」
ルアンジェは、無理矢理作った表情をこちらに向けて
「ウィルフレド・ハーヴィー、名前、ありが、とう」
と今度はぎこち無いが気持ちを感じる笑顔を見せた。
「どういたしまして」
俺は若干苦笑いを浮かべながら、ルアンジェの頭に手を載せてポンポン叩いた。そんな俺の行動の意味を、また丁寧にルアンジェに説明するアン──手馴れた感じがするのは何故だ?
『アンは育児経験が有るのでしょうか?』
うぉい!? コーゼスト! 怖い事を言うなや! 俺は一瞬、赤ん坊を抱袋で抱きながらあやすアンの姿を幻視して、思わず頭をブンブン振ってしまった。それを見て不思議そうな顔をするアンに恐る恐る聞いた所、エルフの森に居た時に自分より幼いエルフの面倒を良く見ていたからだと教えてくれ、密かに安堵の溜息を漏らしたのは秘密である。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつの間にか除け者扱いしていたネヴァヤ女史に謝り、今後の話を改めて話し合う。ルアンジェは、俺が自分のパーティメンバーとして引き取った孤児と言う扱いになった。だが一方ではギルドの連絡網を使い、ルアンジェが自動人形だと言う事は全ギルドで徹底周知されるとの事だ。
因みにルアンジェの身元保証人には、ネヴァヤ女史がうちのギルマスと連名で名を連ねるらしい──尤もうちのギルマスには事後承諾だとは、ネヴァヤ女史の弁である。
「……また血圧が上がるか、胃薬の量が増えるか、抜け毛が増えるかの三択だな………ギルマス、冥福を祈る………」
『まだギルマスは御存命ですが?』
「いや……コーゼスト、そう言う意味じゃ無くてだな………」
ネヴァヤ女史とアンは笑いを押し殺して身体がプルプル震えている。当然だがラファエル達は除け者扱いである。そしてルアンジェは「?」を顔に貼り付けている。
俺はひとつ咳払いをすると、ルアンジェにはアンが笑いつつまた丁寧に教えてくれた。漸くルアンジェも状況を飲み込んだみたいで、覚えたての笑顔でまた「ありがとう」を言って来た。少し照れ臭くなり、視線を態と外しながら
「ああ……まァそう言う訳だからよろしくな」
割と素っ気ない態度で答えを返した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「そう言えば──その髪と瞳の色を何とかしないと、ヒトじゃないってバレちまうよな………」
話がひと通り纏まった感じになり、俺はふと思った事を口にした。するとネヴァヤ女史もアンも「あ……」と一瞬惚けた顔をしてから、急に慌て出した。君達……今まで気付かなかったのか? まぁ俺もだけど………… 。
オタオタする俺達を見ていたルアンジェは急に俯いて、もじもじと落ち着きが無くなる。
「? どうしたんだ、ルアンジェ?」
「私、…………られる」
「うん?」
「私、色変え、られる」
『それは髪の毛や瞳の色を、と言う事ですか?』
「そう」
それが本当なら問題解決だ。流石は古代魔導文明の自動人形だけの事はある。
「それじゃあ、変えてみて」
「ん」
アンが促すとルアンジェは、スッ……と目を閉じた。三度頭上に光輪が輝くと、見る間に髪の色が根元から薄桃色から褐色に変わってゆく。やがて髪の先まで色が変わるとルアンジェは閉じていた目を開けた。そこには青紫色の瞳ではなく海碧色の瞳が有った。
『どうやら偽装機能と言うべきモノを保有しているみたいですね。これは標準装備ですか』
コーゼストが感心しきりである。これなら何ら違和感は感じないな──うん。
「こん、な感じ……ど、う?」
ルアンジェがおどおどした風に、こちらを伺う。俺が自分に出来る満面の笑みで「大丈夫だ」と頭を撫でてやると、少し嬉しそうな表情を見せた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「これで──当面の問題は解決ですね」
ネヴァヤ女史は明らかにホッとした口調で、安堵の言葉を漏らす。アナタもさっきまでオタオタしてましたよね……? 俺のジト目を華麗に無視して話を纏めようとしているし…… 。
「ところでギルマス、俺達の馬車の件はどうなってるんだ?」
ひとつ重要な事を思い出し確認する俺。それがイオシフまで来ていないと帰れないからなぁ……まぁ場合によっては転移陣を使って戻る算段もあるが…… 。
「それなら大丈夫です。20日前にシグヌム市を発っているので、そろそろ到着すると──」
「それでしたら昨日の午下に到着しています」
マシュー青年が女史の言葉に被せる様に教えてくれた。それは良かったが──何と言う時機の良さなんだ。お陰で馬車の持ち主のラファエルは、ホッとした顔をしている──偶にコイツが依頼主だと忘れそうになるが。
まぁ、帰りはルアンジェにこの世界の事を色々教えないといけないから、馬車でのんびり帰る様だな………
『マスターに一般常識を教えられるかが甚だ疑問ではありますが──』
うるせぇぞ、コーゼスト!!
「兎に角先ずは、馬車を見に行くか……」
「そうしてください。私も直ぐにシグヌム市に帰ってルアンジェさんの登録手続きと、貴方達にお渡しする報酬金を準備しておきますので」
そう告げるネヴァヤ女史に改めて礼と別れを告げて、俺達は大天幕の外に出る事にした。近くに居たギルド職員に馬車の事を訊ねると、すぐさま案内してくれたのだが────
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あ~、ウィルさんだぁ!」
馬車置き場まで来ると、何台か停まっている馬車の陰からそんな声が聞こえ、続けて小柄な人影が飛び付いて来た──蒼灰色の髪の上に突き出た猫耳──これって?!
「うぉッ?!ス、スサナか?」
「わ~、覚えててくれたんですねぇ♡」
ニャーと言いながら抱きついて離れないスサナを見て、驚いているラファエル達とサーッと顔色を変えるアンさん──胸の属性装備の垂飾に魔力が集まっているのが視えるぞ、アン!?
「あ~!スサナ、また何やってんのよ……ってウィルさん!?」
そんな微妙な修羅場状態でいる所に顔を出したのは──フィリス?!
「皆んなおいでよ! ウィルさん達が帰って来たよ!!」
こっちの疑問などお構い無しで、声を張り上げるフィリス。すると馬車の陰から、更に見慣れた人物達が姿を表したのである。
「あ! 本当だ!」
「えっ?!あ、本当だわ」
「ウィルさん、お帰りなさい!!」
三者三様の反応を見せながら声を掛けて来たのは、アシュレイ・ファーザム率いる『紅霞』の面々であった。
「────何であんた達がここに?」
スサナを引き剥がす事も忘れ、俺はそう言うだけで精一杯であった。
結局と言うか、案の定と言うか……自動人形のルアンジェが新メンバーほぼ決定です!
ほぼと言うのは、未だ手続き関係が終わってないからです。
現状、その能力が未知数なルアンジェの加入で今後の迷宮探索に拍車は掛かりませんのでご注意ください!(笑)
*創世記……古代魔導文明に伝わる人類創世に関する伝記。この話は今後!
*方舟……人類の始祖が乗ってこの世界に流れ着いた船の事。詳しくは何処かで!
お読みいただきありがとうございます。




