表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/318

ギルマスと俺とモフモフと

第4話投稿します。そしてこの回で漸く主人公以外の人間が登場します!主人公のちゃらんぽらんな思考が目立ちますが─ちゃんとやる時はやります(多分)そろそろ本格的にダンジョンの話が出ないと不味い予感が───


*2020年12月7日改訂

 -4-


「うわぁ~、 可愛い~~♡」


 案の定ファウストがモフられてる。まぁこの辺は想定内であるが。


 モフっている相手は、このラーナルー市冒険者ギルドの職員ルピィ──えっと、確かフルネームが……ルピタ・リットンだったな、うん。


 朽葉鼠(オターグレイ)の髪を器用に三つ編みに(まと)め上げてあり、何時(いつ)見てもかわい──ゲフンゲフン。


「おい、ルピィ……そんなに撫で回すなよ。 ファウストが戸惑ってるぜ」


「へぇー、この子ファウストって名前なんですね~」


 そう言いながらモフるのを止める気配が無い。──ファウスト、すまんがルピィが満足するまで我慢してくれ──俺は()でくり回されゲンナリした様子のファウストに手を合わせる。


 だけど子犬サイズのファウストに合わせてしゃがみ込むルピィの姿がまたかわい──ゲフンゲフン。


 因みに「モフモフする」とはルピィから教えて貰った言い回しである。何でも毛並みがふわふわしてる動物とか()でる言葉だそうで──モフる=撫で回すとか顔を(うず)める事らしい。


 ルピィのおかげ? でギルドの女性職員の間では、このモフモフと言うのがすっかり広まったみたいである。そのうち愛好会とか出来るかもしれん。


「なぁ、そろそろモフるのを止めてくれないか?」


「はぁ〜、んん~~♡」


 あ……ファウストがこっち見てる………… 。


 だからそんな嫌そうな顔は止めれ! お前は曲がりなりにも魔物だろ?!


「あー、ルピィさんや……いい加減にしないとファウストに嫌われるぞ?」


「!? あっ、そ、そうですよね!」


 ルピィが凄く名残惜(なごりお)しそうな顔してファウストを解放した。


 ──全くルピィの奴は……お前その内モフモフの神様として女性職員全員に(あが)められるぞ………そしてファウスト、少し (うらや)まし──ゲフンゲフン。


「──失礼しました。 つい夢中になっちゃって」


 そう言いながら水色(ペール・ブルー)の瞳でウインクしながら「ペロッ♡」と舌を出す仕草は素直に可愛いとは思うが……性癖がなぁ…… 。


「でもウィルさん、「魔王の庭」からいつ帰って来られたんですか? 確か今頃だと第二階層の最後辺りだと思うんですけど……?」


「……いや、第三階層から戻って来たんだが…………」


「はい?」


 大きな眼をパチクリしながら俺の顔を見つめるルピィ──うん、やっぱり可愛いよな、この娘は。


「実は──その事も含めてギルマスに火急に報告があって戻って来たんだ」


「──そうですか。ではギルマスにお(つな)ぎしますので少々お待ちください」


 ルピィは余計な事を聞かずにギルマスの部屋がある2階に上がって行った。


 ホント、そういう所はしっかりしてるよなぁ。流石は中堅ギルド職員。


 俺がのほほんとそんな事を考えていたら、ルピィが戻ってきた── 。


「ウィルさん、ギルマスがお会いになるそうです」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 2階に上がり執務室の大きな扉の前に立つ俺。そして何故かルピィがファウストを抱っこしたまま隣でニコニコしてるんだが──この際、気にしたら負けである。


 俺は軽く咳払いしてから扉をノックする。


「おぅ、開いてるぞ」


 扉を開けて中に入ると大きな執務机の前にどっかり腰を降ろした筋肉隆々の大男が出迎えてくれた。(あかがね)色の短髪に額に刻まれた三条の傷跡は如何(いか)にも歴戦の猛者(もさ)彷彿(ほうふつ)とさせる。


 この着膨れ筋肉──もとい渋い偉丈夫(いじょうふ)がこのラーナルー市冒険者ギルドのギルドマスター──元Sクラス冒険者のディオへネス・ヒギンズ、そのヒトである。


「良く来たな、ウィル──そしてコーゼスト殿()


 そう言って俺達を出迎えるギルマス。因みにギルマスは俺以外に最初にコーゼストと()()()人間でもある。


 まぁぶっちゃけあの日、コーゼストに取り憑かれた(笑)俺がダンジョンを出てから一直線にギルマスに相談したのが切っ掛けではあるが──それ以来ギルマスはコーゼストを殿()付けで呼んでいる。


 ああ、それとギルマス、ルピィがコーゼストってのが誰の事なのかわからず、顔に「?」が浮かんでるぞぉ。あとであんたの口から説明しておいてくれ。


「それで? 今日は一体()()()()()()だ?」


 ……最初からトラブル前提で話さないでくれないか? まぁトラブルと言えばトラブルなんだけど………… 。


「──あ~と、実は────」


 ──そして話す事30分後。


 執務室には頭を抱えるギルマスと、引き()った笑顔のルピィと、絶賛原因を生み出した俺と一匹(と一個?)が居た。


「すると何か? その子犬は実はヘルハウンドなんだな??」


「まぁ、そうだな」


本気(マジ)か──」


「極めて本気(マジ)だ──」


 俺は言い切った。いや、だって、ねぇ?


 ギルマスは最近薄くなってきたと(なげ)く頭を抱えながら大きな溜め息をつく──また頭髪薄くなるのかな……?


「それもコーゼスト殿()の力なのだな?」


「──と本人は言ってるけど……ねぇ?」


「『ねぇ?』ぢゃあねぇ~だろがぁ~!!!」


 ギルマス、そんなにキレるな。血圧が跳ね上がるぞ?


 顔を真っ赤にしたギルマスが肩で息をしながら(にら)み付けてくる──が、俺も絶賛通過中の道なので頑張って欲しい。その内、胃薬以外に血圧の薬も必要かも知れんが、その時は差し入れてやるからな。


『──発言をお許しください』


 不意に今までダンマリを決め込んでたコーゼストが声を上げた。


 おいおいコーゼスト、ルピィがいきなり聞こえてきた知らない声に挙動不審になってるぞぉ。ちゃんと責任取れよな?


「……おぅ、なんだ?」


 疲れた顔でギルマスがコーゼストの発言を許可する。


『私が自己の能力を最大値で使用した場合、 「魔王の庭」に存在する全ての魔物を支配下に置く事()()()()()。しかしながらそれは愚策(ぐさく)であると推考します』


「それはどう言う意味だ?」


『はい、 ()ず私はマスターからこの国の冒険者と言うのについて知識を得ました。それによると冒険者とは魔物を討伐し、その(レベル)に応じた()()()()()()()()()()事であると理解しました。それにより自身の(レベル)を上げより強い力を得る物だと。また魔物討伐は生活の(かて)であるとも理解しています』


「……まぁ俺達冒険者とはそうして強くなるし、何と言っても(レベル)が上がると実入りも良い分カネが掛かるからなぁ……」


 コーゼストの発言を聞いてギルマスが落ち着き始めた。コーゼストさん、なかなかやりますなぁ。


 そしてルピィ……そんなキョトンとした顔をするな──後でちゃんとギルマスかコーゼストに説明してもらえ。


『それを前提に考えてください。私が能力を解放すればマスターに対して利益にならない事は明白です。 特に(レベル)に関して、それと魔物を討伐した際の賞金、及び魔物から採取される魔核(コア)やドロップ品の生み出す純粋な利益も独占しかねません。その愚策を講じた場合、他の冒険者の方々にも不利益を確実に与えてしまいます。 それは()いてはマスターに対する憎悪等の悪感情しか生み出さずマスターの不利益にしかならない事象であります。またそれはギルドにも長期的に見て不利益を与えかねません』


 ギルマスはコーゼストの意見を黙って聞いているし、俺もコーゼストの言ってる事に耳を傾けて感心していた。


 そしてルピィよ、唖然(あぜん)とした顔でファウストをモフるなよ…… 。


『──以上の事案を考察した結果、私はダンジョン内でも特に()()()()()()()()()使役しようと結論に至りました。その方が三方共に益があると判断したからです』


「ふむふむ……うん? ちょっと待て、今なんと言った?!」


『──はい?』


「いや、今言っただろ?! ()()()()()()()と!!」


『はい、 言いましたが?』


「すると何か? このヘルハウンドはまさか──」


 ギルマスがわなわなと震える指でファウストを指差すが俺は大体察しが付いてる。だってこのファウストは最後の部屋に居たんだからな。


『はい、 この個体は第三階層の強い個体──貴方達が言う「守護者(ボス)」ですね』


 ギルマスが大きな音と共に思いっ切り椅子ごとひっくり返る!


 そしてそれを見ていたルピィもファウストをモフるのを止めて硬直(フリーズ)した。


「な、な、な、」


 ギルマス、そんなに額に青筋を立てないでくれないか? いや、マジでおっかないから!


「なんて奴を(なつ)かせやがった────────ッ!!!!!!!!!!!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その後、何とか落ち着いたギルマスとの話し合いでファウストは俺が使役する魔物として登録される事になった。


 そうなったのはコーゼストの言った「隠し部屋に有る役立ちそうな魔道具の提供」の一言である。事実あの部屋は俺に所有権があるのだが、見た目(くず)にしか見えない様な魔道具も、実際は壊れて廃棄されていたのはコーゼストの居たあの小部屋のだけなのだそうだ。


 それ以外は、ほぼ開発完了か()しくは修理途中の物であり多少(いじ)ると使えるのが(ほとん)どらしい。それを今後も使()()()()()()()()に応じて冒険者ギルドに譲渡する事で押し切った──(もっと)もコーゼストが主体で話が進んで、俺の出る幕は無かった。


 まぁ、俺としては直ぐ使える魔道具や武具の方が助かるんだが。


 それをコーゼストにこっそり念話で話したら『全くマスターは大物なのか小物なのかわかりません……』と1つも褒められてない感想を言われた──ほっとけ!!


 でもとりあえず簡単に治るのは幾つか回収しておいても損は無いだろう──と思う。


 そう言えばルピィには、俺がコーゼストの事を説明する羽目になった──何故に?!


 尤も始終俺はルピィからの質問攻めであったが…… 。


 なお、ルピィはファウストが魔物だと分かっても結局モフるのを止めなかった──あの手触りはクセになるからなぁ…… 。



ギルマスは病気で現役引退しました。イメージとしては武藤○司さんに短髪生やして大きくした感じです(笑)ルピィは基本可愛いモノ好きですが一応ギルド職員としては中堅なんです!


あと、意外とコーゼストが黒い………



宜しければ評価をお願い致します

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=818401577&s
― 新着の感想 ―
[一言] ボスが膝に乗る。の意味が分かりました! 人気があるのも頷けます。 引き続き拝読します!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ