大舞踏会前日 〜飛び入りするは人魚〜
大変お待たせ致しました! 本日は第312話を投稿します!
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ジュリアスとステラの身辺警護として俺達氏族『神聖な黒騎士団』の特別分隊が、アースティオ連邦の首都レヴェナントに2人と共にやって来た翌日。
昼前にトルテア自由都市のヤスメイン・アールデイス盟主一家とその護衛が、昼過ぎにミロス公国のエルキュール・フォン・ベルネット大公一家とその護衛が、そして夕方にはメペメリア帝国のギヨーム皇帝一家と護衛が、そして同じく夕方には世界樹の森精霊の長老である貴森精霊のエウトネラ・アルヴォデュモンド議長が、やはり家族と護衛を伴って専用の転移陣でやって来た。ほぼほぼ俺の考えた通りである。
「嫌な予感以外でマスターの予測が当たるとは……明日は雨でしょうか?」
「それはそれで随分と酷い物言いだなッ!?」
しれっと毒を吐くコーゼストに、至極真っ当な突っ込みをいれる俺。お前は一体、俺を何だと思っているんだ!? それとアンさんや他のメンバーも、俺とコーゼストの会話を聞いて、笑いを堪えて肩を震わせない様に! 少しは失礼だと思わないのか?!
何はともあれ、こうしてこの西方大陸に在る世界評議会の参加国が、今此処に一堂に会したのであった。これはコレで中々壮観な光景であったりする。
もし此処に集まった代表者達に今何かあったら、世界は──正確には西方大陸だけだが──大混乱になる事は必至である。
『今ならマスターの従魔達だけで、世界征服が出来そうですね』
コーゼストさんや、軽い冗談でもそんな怖い事言うなや?!
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その日の夜は各国の代表者とその護衛同士の顔合わせを兼ねた歓迎会が、アルリニア宮の大広間で簡単にではあるが執り行われた。特に俺を含むうちのクランの特別チームのメンバーにとっては、知らない顔も多いので大変有難い話である。
何はともあれ、まず最初に顔を合わせたのは
「ハーヴィー卿、いつぞやは世話になったな」
メペメリア帝国のギヨーム皇帝陛下とイェシカ皇后殿下とヴェリトール皇太子殿下、そして護衛を務める近衛のモーゼス大将とその部下7人である。ユダール宰相は今回はギヨーム皇帝の留守を預かっているとの事だった。
次に顔を合わせたのは
「ハーヴィー卿、お久しぶりですわ」
ミロス公国のエルキュール大公閣下とその家族、そして6人の護衛である。エルキュール大公は直ぐ傍に立つ2人の男性に手を向けると、俺達に紹介してくれる。
「まず此方が私の夫のファノーネですわ。そしてその隣が私の息子の大公子のルードヴィグですの」
「私がエルキュールの皇配のファノーネ・フォン・ベルネットです。ハーヴィー卿のお噂はかねがね聞き及んでおりますよ」
「私が大公子のルードヴィグ・フォン・ベルネットです。『英雄』のハーヴィー栄誉伯には是非とも一度お会いしたかったで、大変嬉しく思います」
エルキュール大公の言葉を受けて、銘々に自己紹介をしてくれる皇配のファノーネ公と、息子のルードヴィグ大公子。
2人共になかなか腰が低く、且つ謙虚な御仁の様である。
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そうこうしてる間にも、エルキュール大公はファノーネ公らの隣へと手を向ける。
「そして彼女は近衛隊長のユーリア。私の股肱の臣でもあります」
「大公閣下より紹介に与りました。私が近衛隊長のユーリア・フォン・アルヴォネンです。ハーヴィー栄誉伯閣下、私の部下共々何卒宜しくお願い致します」
何とエルキュール大公の護衛隊長は女性だったのだ。近衛隊長と言っている事から推察すると、本人はかなりの実力者なのだろう。部下の5人もなかなかの手練れかと思われた。
そんな事を思いつつ、その次に顔を合わせたのは
「ハーヴィー卿、久方ぶりだな」
トルテア自由都市のヤスメイン盟主とその家族、そして3人の護衛だ。ヤスメイン盟主が、先ず2人の家族に手を向けて俺に紹介してくれる。
「卿らに紹介しよう。先ず此方の婦人は私の母のヴィクトリア、その隣の婦人は妹のセレスティナだ。2人とも、彼が以前話した『英雄』のハーヴィー栄誉伯だ」
「これはハーヴィー栄誉伯閣下、お初にお目にかかります。私がヤスメインの母のヴィクトリア・アールデイスと申します。以後お見知り置きを」
「ハーヴィー栄誉伯閣下、初めまして。私がヤスメインの妹のセレスティナ・アールデイスですわ。閣下のお話は兄からかねがね聞いております」
ヤスメイン盟主の言葉を受けて、それぞれにお辞儀で礼を執る母親のヴィクトリアさんと、妹のセレスティナさん。
ヤスメイン盟主が2人にどんな話をしたのか、凄まじく気になる所だ。
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俺がそんな事を考えている間にもヤスメイン盟主の手は、2人の家族からその隣の護衛の1人へと向けられる。
「そして彼が護衛隊長のフェルナンド。私の側近の1人でもある」
「フェルナンド・バーガーです。ハーヴィー栄誉伯閣下、宜しくお願い致します」
そう言いながら此方に軽く会釈するフェルナンド氏。一見すると物腰柔らかな人物の様に見えるが眼光は鋭く、その所作から歴戦の戦士である事が推察できる。流石は護衛隊長を任されているだけの事はあるな、等と密かに感心する俺。
そして最後に顔を合わせたのは
「ハーヴィー卿、クロノ殿の一件以来だな」
世界樹の森精霊の長老である貴森精霊のエウトネラ世界評議会議長とその家族、そして2人の涅森精霊の護衛である。
「ハーヴィー卿、紹介しよう。彼女が私の妻のデルガルトだ」
「初めましてハーヴィー卿。私がエウトネラの妻のデルガルト・アルヴォデュモンドです。夫エウトネラがいつもお世話になっております」
エウトネラ議長が奥さんのデルガルトさんに手を向けて紹介し、デルガルトさんが会釈と共に自己紹介をしてくれた。そして議長の手は護衛の2人へと向けられる。その2人の護衛は外套のフードを目深に被っていたが
「そして護衛の2人だが──」
議長の紹介に合わせて
「ウィル、アン、久しぶりだね」
1人がそんな台詞を口にすると、被っていたフードをとって正体を明かす。
何と護衛の正体は、アンの父親で俺の義父のフォルテュナさんだったのだ。
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「お、お父さんッ?!」
俺が反応するより先にアンが声を上げる。
「私も居ますよ。アン、ウィル」
そう言うと、もう1人もフードをとって正体を明かす。何とそれはアンの母親で俺の義母のディフィリアさんだったのだ。
「お母さんも?! これは一体どう言う事なの?!」
真逆の両親との再会に、喜びのあまりか更に大きな声を上げるアン。うちの他のメンバーもあまりの出来事に呆然としている。
「エウトネラ議長、これは一体どう言う事なんだ?」
そんな中、俺だけは何とか気を取り直して議長を問い質す。すると
「驚いたかね? 実は今回の大舞踏会にハーヴィー卿、君達も参加すると聞いて、急遽歴戦の猛者である2人に護衛役を頼んだのだよ」
物凄い爽やかな笑みを浮かべたしたり顔で、その様に宣うエウトネラ議長。何と言うか……いつも難しい顔をしている議長の意外な一面を見た気がする。
兎にも角にもこうして俺を含むクランの特別チームのメンバーと、各国の参加者達と護衛達との顔合わせは滞り無く済んだのであった。それは同時に各国間でもお互いの顔合わせが終えた事を意味する。これで参加国全ての護衛を含む、大舞踏会の参加者の人数は総勢56人と相成った訳である。
決して多くは無いが、決して少なくもない人数だな……まぁ『大舞踏会』と銘打っている割には、参加人数はほぼほぼ一般的な舞踏会規模だな──等とそんな取り留めのない事を考える俺なのであった。
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皆んなが会場のあちらこちらで話に花を咲かせているのを、俺がぼんやりと眺めていると
「ハーヴィー卿」
エウトネラ議長から徐ろにそう声を掛けられた。その言葉を受けて議長に意識を向けると、いつの間にかジュリアスやリーゼらを含む世界評議会の面々が集まっており
「卿に世界評議会として、ひとつ依頼があるのだが……良いだろうか?」
議長が代表して口を開く。
「……それは依頼の内容によりけりだが」
何を言われるか分からず、心の中の警戒度を少し引き上げる俺。
「何、そんなに難しい事では無い。実は卿の奥方の1人である魚人族のマデレイネ女王陛下にも、此度の大舞踏会に参加して欲しいのだよ。どうだろう、直ぐに連絡してはもらえまいか?」
俺の警戒を知ってか知らずか、笑顔でそう口にする議長。詳しく聞くと、これを機に魚人族にも世界評議会に参加して欲しいのだそうだ。
この話をマディに話したら、嬉々としてやってきそうなのが目に浮かぶ。同時に摂政のヨエルさんが頭を抱えるのが幻視できるのは俺だけか? 俺の直ぐ傍ではマーユが「お母さんを呼ぶの?!」と、俺と議長の話を聞いてやたら燥いでいたりする。
「まぁ……そう言う事なら構わないが」
そんなマーユの様子に苦笑しながらも俺は、腰袋から遠方対話機を取り出して通信路をマディのテレ・チャットに合わせると、釦を押してマディを呼び出すのであった。
今ならオーリーフ島は正午頃の筈だから、問題ないだろう──たぶん。
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程なくしてアルリニア宮の大広間の床に、眩い輝きを放つ魔法陣が出現する!
ご存知転移魔導機のサークルだ。やがてサークルから溢れた光が薄まって来ると、サークルの中心にはマディと彼女の叔母のルベルロット・ジョゼ・ファンティーヌ──ルベルさんの2人が立っているのが見えた。当然ここへの転移は、コーゼストが『星を見る者』の『使徒』の1つを使って位置取りを支援していたりする。
閑話休題。
「あなたッ! マーユッ!」
光が完全に収まると脇目も振らず一目散に、俺とマーユの所に駆け寄ってくるマディ。一国の女王としてはそれで良いのか悩ましいが、その気持ちは分からんでもない。
「マディ、良く来たなぁ」
「お母さん!いらっしゃいっ!」
なので親子3人でひしと抱き合う事にする。この際、周りからの生暖かい視線は敢えて無視する。しかしいつまでもそうしている訳にもいかないので
「さてと……マディ、そろそろ、な?」
優しく彼女を諭す。彼女も「え、ええ、そ、そうね」と言いながら、漸く俺とマーユから体を離す。
「何だい? もうお終いかい? もう少しそのままでも良いんだよ?」
一方でルベルさんは、俺達を見ながらニヨニヨとしながらそんな事を宣う。
「……ルベルさんも本当に久しぶりだな」
なので照れ隠しで少しぶっきらぼうに声を掛ける俺。
「ははっ、ウィル、久しぶりだね! 元気そうでなによりだよ!」
そんな俺に呵々大笑と言葉を返すルベルさん。相変わらず豪快なヒトである。
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「世界評議会の皆様、初めまして。私が魚人族の女王を務めているマデレイネ・ジョゼ・ファンティーヌで御座います。この度はお招きいただき有難う御座います」
「そしてあたしは、このマデレイネの叔母のルベルロット・ジョゼ・ファンティーヌさね。マデレイネ共々宜しくお願いするよ」
銘々にそう言いながら、優雅にお辞儀を執るマディとルベルさん。マディは当然の事ながら、ルベルさんがキチンとしたお辞儀をしたのに、密かに驚いた俺だったりする。
まぁ、それはソレとして。
俺は世界評議会のメンバーに手を向けて、マディとルベルさんに1人1人紹介して行った。そして最後にヤスメイン盟主まで紹介し終えると
「マデレイネ女王陛下、そしてルベルロット女史。此度の突然の招集に応えていただき、世界評議会議長として感謝申し上げる」
エウトネラ議長がマディとルベルさんに向かって、深々と頭を下げた。そして続けて
「ハーヴィー卿から聞いての通り、今回この大舞踏会に貴国を招集したのは、貴国を是非とも我々の世界評議会の一員として迎え入れたいからなのだ。どうだろう、受諾してはもらえまいか?」
期待を込めた眼差しで、その様に宣う議長。
「それは此方としても願ってもない事ですわ。エウトネラ議長、そして世界評議会の皆さん、何卒宜しくお願い致します」
議長の言葉に笑顔で答えを返すマディ。今ここに魚人族の世界評議会への参加が決まったのであった。
俺は何気に歴史的な出来事に立ち会った……のか?
ここまでお読みいただき有難うございます。
突然ですが執筆者の体調不良等の諸事情により、この「なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?」の投稿を二ヶ月ほどお休みします。次回313話は2026年5月上旬頃を考えております。
いつも読んでくださっている方々には申し訳ございませんが、何卒宜しくお願い致します。




