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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
怒涛の再調査と新たなる事実編!
304/323

星銀の暗黒霊騎士

大変お待たせ致しました! 本日は第287話を投稿します!

 -287-


 俺達分隊(チーム)混沌(カオス)』が、この「魔王の庭」第十一階層の探索を再開してから15日ほど経った。


 この頃になると泥人形(マッドゴーレム)自動人形(オートマトン)はすっかりなりを潜めて、岩石人形(ストーンゴーレム)黒鉄人形(アイアンゴーレム)の混成群や、動く鎧(リビングアーマー)との戦闘が増えていた。


 幸いな事に遭遇したリビングアーマーは黒鉄(アイアン)製の重甲冑(フルプレート)だったので、誰も苦戦を強いられる事は無かった。因みにそのリビングアーマーの残骸だが、コーゼスト先生の推測通り光の粒子となって消えていったのである。やはりここら辺が迷宮(ダンジョン)が回収するしないの境界線(ボーダーライン)らしい。


 そして俺達は──


「──各感覚端末(センサー)による走査(スキャン)、並びに『星を見る者(スターゲイザー)』による観測が、見事なまでに妨害(ジャミング)されています。この部屋に守護者(ボス)が居ると思われます」


 ──第十一階層最奥部の最後の部屋の前に到達していた。いつもの如く部屋に入る前に、コーゼストがセンサーや『星を見る者(スターゲイザー)』で部屋の中を確認したが、結果はお聞きの通りである。彼女の台詞を聞いて、でかい溜め息をひとつ()く俺。


「はァ……覚悟はしていたが、やっぱりかよ……」


 分かっていた事だが、実際になるとやはり憂鬱(ゆううつ)になる。


「そんなに戦うのが面倒なら帰りますか?」


 そんな俺の独り言に近い呟きに律儀に答えるコーゼスト。お前も怖い事言うな!?


「ここまで来て帰ると言う選択肢は有り得ないんだが?」


「知っていますよ。言ってみただけです」


 思わずジト目を向ける俺に、しれっと答えを返すコーゼスト。お前なぁ…… 。


「と、兎にも角にも中に入るぞ」


 俺はそう言って部屋の扉に手を掛けるのであった。


~~~~~~~~~~


 部屋の扉が少し(きし)みを上げながら、ゆっくりと開かれて行き、俺達は部屋の中へと進み入る。部屋の内部は(ほの)暗い魔導照明(ソーサリライト)の灯りで満たされていた。


 その仄暗い灯りに照らされた部屋の奥には、1体の重甲冑(フルプレート)が鎮座する姿が見える。どうやらこの階層の守護者(ボス)は、案の定と言うか何と言うかリビングアーマーらしい。しかも薄明かりに浮かび上がるアーマーの色合いは青みがかった銀色──つまりは星銀(ミスリル)製と言う事だ。それを見て、またもやデカい溜め息を漏らす俺。


「はァ……最後の最後でミスリル製のリビングアーマーってか」


「全センサーによる室内の走査(スキャン)完了。特に(トラップ)は仕掛けられていませんね。敵リビングアーマーの情報(データ)も取得完了。材質は──マスターの言う通りミスリルですね。(レベル)は79、順位(ランク)はA+、技能(スキル)は──同族召喚(サモン)指揮(コマンド)を保有しています」


 一方のコーゼストは俺のボヤきなど何処吹く風、実に鷹揚(マイペース)にセンサーによる解析結果を口にする。だがちょっと待て、今何か物凄く聞き捨てならない事を口にした気がするんだが?


「……何だよ、その「同族召喚(サモン)」ってのは?」


「読んで字の如し、リビングアーマーを召喚するスキルかと思われます」


 俺の突っ込みに顔色ひとつ変えずに淡々と答えるコーゼスト。その答えを聞いて、思わず頭を抱えたくなる俺。だがまぁ、それでもやる事はたったひとつなんだけどな!


「はぁ……よし、それじゃあやるとしますか!」


 俺はそう言って、自分自身に気合を入れるのであった。


~~~~~~~~~~


 俺とファウスト達は戦闘態勢をとりながら、ゆっくりと部屋の奥にどっかりと腰を下ろしているリビングアーマーに近付く。そしてある程度近付いた所で、不意に背後の扉が閉まり、それと同時にリビングアーマーの双眸(そうぼう)が紅く輝くと、ゆっくりと立ち上がる。


「……ふむ、どうやら侵入者の様だな」


 と同時に、太く低い男の声が部屋に響き渡る。驚いた事にその声は、明らかに目の前のリビングアーマーから発せられていたのだ。


「!? お前は話せるのか!?」


 あまりにも突然の出来事に、ついリビングアーマーに声を掛けてしまう俺。すると目の前のリビングアーマーからは


如何(いか)にも。(わし)の名はイーヴァイン。暗黒霊騎士イーヴァインである」


 これまた真逆の返答が?!


「イーヴァイン?! 真逆貴方は古代魔族(アンデモン)最強の騎士団長イーヴァイン・ナイトリーなのですか?」


 名乗りを挙げたリビングアーマーの言葉にいち早く反応したのは、俺の(そば)にいるコーゼスト。


「ほほう? 儂を知る者がまだこの世にいるとは驚きだな」


 コーゼストの台詞を聞いて何やら感慨深げなリビングアーマーのイーヴァイン。


「何だよコーゼスト。お前はこのイーヴァインとやらに覚えがあるのか?」


 そんなコーゼストに問い(ただ)す俺。すると彼女は


「はい、情報(データ)としてなら知っています。イーヴァイン・ナイトリーとは先程言った通り、古代魔族(アンデモン)の中でも最強と言わしめた猛者の1人です」


 爆裂魔法(エクスプロージョン)級の衝撃発言をするのであった。


~~~~~~~~~~


 コーゼストとイーヴァインとの話はまだ続いている。


「でも確かイーヴァイン・ナイトリーは勇者との戦闘で真っ先に戦死した筈……」


「如何にも。儂は勇者との戦いにて命を落とした──が、その魂はこうして最強の鎧に宿り、今日(こんにち)に至ると言う訳だ」


「成程……死霊術師(ネクロマンサー)による「反魂術」で魂をその重甲冑(フルプレートアーマー)に憑依・固着させたのですね」


「少し話しただけでそこまで的確に言い当てるとは……貴様は一体何者なのだ?」


「私の名は『共生の腕輪(コーゼスト)』、と言えば理解出来ますか?」


「何? うむぅ、すると儂と同じ古代魔族(アンデモン)の手によって生み出された存在か? だがそれが何でヒトと共に居る?」


 そう言うと俺に視線を向けてくるイーヴァイン。


「それはまぁ……色々と紆余曲折がありまして。ただ1つハッキリしている事は、彼は500年もの月日を経て、この私が認めた唯一の存在だと言う事です。それに彼は強いですよ? 何せ今世の「英雄」ですからね」


 イーヴァインの言葉に胸を張ってドヤ顔で返すコーゼスト。どうでもいいが、どうか余計な事を言わないでいて欲しいものである。


「何っ!? 「英雄」だと?!」


 案の定、コーゼストの返しに反応するイーヴァイン。そして


「ヒトの剣士よ! 貴殿の名は何と言う?!」


 いきなりハイテンションで名前を(たず)ねて来る。


「……俺の名前はウィルフレド、ウィルフレド・フォン・ハーヴィーだ」


 俺の答えを聞いてイーヴァインは


「良し!! ウィルフレドよ! この儂と尋常に勝負しろ!」


 やたら興奮した物言いでそう言うのだった。


~~~~~~~~~~


「……それは」


「そんな事させる訳無いでしょう!」


 俺が答えようと口を開くより早く、ヤトがイーヴァインに向かって一声吠える。するとイーヴァインは


「儂とウィルフレドの勝負を邪魔させる訳にはいかんなぁ!」


 そう言って紅い双眸をひときわ輝かせる。とイーヴァインの足元の床に、突如浮かび上がる幾つもの魔法陣(サークル)! 次の瞬間には、イーヴァインの周囲には数多くのリビングアーマーの軍勢が出現した!


 出現したリビングアーマーの軍勢は瞬く間に押し寄せて、瞬く間にファウストやデュークやヤトやセレネやニュクスに襲い掛かり、俺とコーゼストから引き剥がし、分断して行く!


「ちょ、ま、御主人様(マスター)ァァァ!!」


「この!は、離しなさい! だ、御主人様(ダーリン)ッ!!」


「く?! ぬ、主様(ぬしさま)! ど、どうかご武運を!!」


「ヴウ、マスター、申し訳あリませン」


「「ヴァンヴァン! ヴァンヴァン!!」」


「ワァーハハハッ! お前達は儂の軍団(レギオン)(しばら)く遊んでいるがよい!」


 俺の後ろに引き離されて行くヤト達を一瞥(いちべつ)し、そんな言葉を掛けるイーヴァイン。そして俺の方に向き直り


「さぁウィルフレドよ! これで邪魔は入らん! 儂と思う存分戦おうぞ!」


 そう愉しげに言いながら、背中に背負っていた大盾(ラージシールド)巨剣(グレートソード)をそれぞれ片手で構えて、俺に向かってそう吠える。


 どうでもいいがイーヴァインを見ていると、『デュミナス』のオルティースを思い出すんだが?

 

 戦闘狂(バトルジャンキー)な所もそっくりだし…… 。


~~~~~~~~~~


 俺は内心溜め息を()きながら、腰に佩刀(はいとう)していた『天照(アマテラス)』と『神威(カムイ)』を抜き放ち、目の前で対峙するイーヴァインへと向き直る。


 対するイーヴァインは大体身長は2メルト程か? その大きな重甲冑(フルプレートアーマー)大盾(ラージシールド)巨剣(グレードソード)を持っている様は、改めて見ると威圧感が半端ない。うちのデュークとはまた違った意味で、正に「巨壁」の様である。


「何と?! それは神鉄(オリハルコン)製の(カタナ)か? しかも二刀流か?! これは面白いッ! 儂の大盾『ガルガンチュア』を切り裂けるものなら切り裂いて見よ! さぁ来いッ!」


 俺の二振りの(カタナ)を見て、そう言葉にするイーヴァイン。実に戦闘狂(バトルジャンキー)的な発言である。


「行くぞッ!」


 俺は一言鋭い声を発すると、迅風増強(ゲイル・エンハンス)を発動させてイーヴァインに斬り掛かった!


「ぬ?! 速いな?!」


 そう言いながらも俺の『天照(アマテラス)』による斬撃を大盾『ガルガンチュア』で受け止めるイーヴァイン! 耳障りな金属音を響かせて『ガルガンチュア』に(ふせ)がれる俺の一撃!


 同時に左の『神威(カムイ)』がイーヴァイン目掛け斬り掛かるが、彼の持つ巨剣にやはり弾かれて届くことは無かった! 神鉄(オリハルコン)製の(カタナ)による斬撃を防ぐとは、大盾(ガルガンチュア)だけでなくあの巨剣(グレートソード)ももしかして…… 。


『マスターの推察通り、あの大盾も巨剣も剛鉄(アダマンタイト)製ですね。しかも両方ともに幾重にも強化魔法が付与(エンチャント)されています。生半可な攻撃は通用しないと思われます』


 俺の思考(考え)を読んだコーゼストが、念話で俺の推察を是認する──やはりそうか!


 コーゼストの念話に俺は内心で舌打ちをするのだった。


~~~~~~~~~~


「ほう! 儂の『ドラゴンファング』に打ち負けないとは! 流石はオリハルコン、中々に硬いなッ!」


 片やイーヴァインの方はと言うと、殊更(ことさら)愉しげだ。本当にお前は戦闘狂(バトルジャンキー)だな?! それにその巨剣(グレートソード)にも名が有ったんだな!?


 だがしかし、最初の一合でイーヴァインの力量は推し量れた──コイツは間違いなく強者だ。一瞬でも油断をすると、それが命取りになりかねない! ここは反撃の隙を与えてはならない!


 俺は刹那の瞬間にそう考えを(まと)めると、そのまま『天照(アマテラス)』と『神威(カムイ)』の二刀による流れる様な連撃を、イーヴァインに向けて叩き込む! が! やはり大盾(ガルガンチュア)の防御を抜く事は出来ない! それでも幾度となくイーヴァインに連続で斬撃を叩き込む俺! だが!


「よォし! 今度は儂から行かせてもらうぞ! 吠えろ『ドラゴンファング』ッ!」


 此方(こちら)のほんの(わず)かな隙をついて、一転攻勢に転ずるイーヴァイン! その剣筋は鋭く、そして一撃一撃が重い! こんな重い一撃を受けるのは、ルストラ師匠とオルティースの2人以来だな?!


 だがその鋭く重い攻撃を『天照(アマテラス)』と『神威(カムイ)』で全て(さば)ききる俺!


「何と! やるではないか、ウィルフレドッ!!」


「ッ! そいつはどうもッ!」


 自身の攻撃がひとつも俺の防御を抜けなかったにも関わらず、何処か凄く愉しげなイーヴァイン!


(全く! 戦闘狂(バトルジャンキー)にも程がある!)


『その割にはマスターも楽しそうですね』


 俺の心の中の悪態に、そんな言葉を念話で返してくるコーゼスト。


 俺、そんな顔していたか??


~~~~~~~~~~


「なかなかに楽しませてくれるな! ウィルフレド! では儂も本気を出すとしよう!」


 互いに剣を交えること数分、イーヴァインは一言そう言うと、いきなり剣速を上げて来た! と言うか、今の今まで本気じゃなかったのか?!


 そう思わず頭の中でイーヴァインに突っ込みを入れる俺! イーヴァインの巨剣(ドラゴンファング)の一撃を捌く度に、俺が手に持つ『天照(アマテラス)』と『神威(カムイ)』が軋みを上げる! このままではあと数合で俺が押し切られるのは間違い無い!


 瞬時にそう判断した俺は、イーヴァインの攻撃を受け止めた反動を利用して、わざと体勢を崩して奴から十分に距離をとる!


「もらったァ!!」


 そう吠えながら突っ込んで来るイーヴァインに対し、俺は短い詠唱を口にする!


「荒ぶる(いかずち)よ!」


 すると『天照(アマテラス)』と『神威(カムイ)』の刀身に沿って、雷が走り、激しい火花(スパーク)が巻き起こる! そして!


「喰らえッ! 「雷精断斬(ヴォルト・セヴァー)」!」


天照(アマテラス)』による雷撃の空裂斬(アギト)──雷精断斬(ヴォルト・セヴァー)を、突っ込んで来るイーヴァイン目掛け解き放つ!


「な、なんとォーーーッ!」


 だがイーヴァインも、俺が雷精断斬(ヴォルト・セヴァー)を放った瞬間に超反応で大盾(ガルガンチュア)を構えて、雷撃の斬撃波を正面から()えて受け止める! 大盾(ガルガンチュア)に激突する雷精断斬(ヴォルト・セヴァー)


「ぬオォォォォーーーッ!!!」


 激しい雷撃を辺りに撒き散らしながらも雷精断斬(ヴォルト・セヴァー)に耐える、イーヴァインの大盾(ガルガンチュア)


 やがて激しい雷撃が収まると


「かぁーーーっ! (しび)れたのう!」


 完全無傷のイーヴァインがそこには立っていたのである。


 なんて奴だ、全く!



ここまでお読みいただき有難うございました!


次回は2週間後になります!


それではお楽しみに!!

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