コーゼスト
本日第三話投稿します!相変わらずの誤字等お許しくださいませ。そして長かった説明回も一先ず終わります!飽きた方申し訳ございませんでした。いよいよ主人公の名前が明かされる…!それでも基本事なかれ主義の主人公を宜しく御願い致します(懇願)
*2020年12月7日改訂
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『──Cancel completed』(解除完了)
迷宮『魔王の庭』で見つけた隠し部屋、更にその奥にあった小部屋の中に響き渡る謎の声!
何処の言葉だか分からないが、最初の言葉は解る──魔力波検知、生体反応確認、登録魔力波との整合率85パーセント、だったか?!
兎も角、目の前の宝箱から明らかにヒトの声とは違う声が聞こえて来てる!
「くっ?!」
背中に冷たい汗がドッと吹き出す! 急いで手を離さないと駄目だと言う思いに駆られる!! しかし、意に反して身体が動かない──いや、身体は動くんだが手が離れない!?
そうしてジタバタしている内にも宝箱からの声が何かしらの変化を告げている感じがする!
『Verify all system startup──』
(システム起動の確認)
『──Language library inquiry start──』
(言語ライブラリ照会開始)
『──Fixed coordinate coordinate──Initiation of metastasis』
(転移座標固定──転移開始)
次の瞬間、手を掛けた宝箱が勝手に開き薄暗い部屋全体が光に満たされ、強烈な光に目が眩み思わず身体が竦む!
耐えきれず閉じた瞼越しに光が収まったのを感じ取り、薄ら眼を開けると──何事も無かった様に──いや宝箱が開いているみたいだから変化は有ったんだろうが──
猛烈に眩んだ目が元の明るさに馴れると俺は勝手に蓋が開いた箱を恐る恐る覗き込んだ。
そこには何も無い──何だ、空っぽだって?!
そこでふと、左腕に違和感を感じた俺はダンジョン内なのも忘れ、左腕の防具を外し下のシャツの袖を捲ると──そこには腕輪が嵌っていた。
げっ! 何だこりゃ?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『──Assimilation』(同化開始)
驚く俺の頭の中に、またもや先程の声が響いて来る! 何なんだよ、本当に?! て言うか誰が話しているんだよ?!
『──Dictionary system substitution(辞書システム置換)──古代大陸語をコンバート』
頭の中に響く声に更に焦っていると、今度は不意に耳に聞こえて来る謎の声! って言うか今度は何を言っているか判るぞ?!?
『初めまして装着者、私はコーゼスト。〈共生なる腕輪〉コーゼストです』
「──はい?」
突然部屋の中に響く声に気の抜けた返事をしてしまった。俺は慌てて誰何する!
「ッ! 誰だ! 誰が話しているんだ?! 姿を見せろ!!」
『現在装着者の左上腕部に位置している腕輪が私と言う存在です』
「ッ!? コレが?!」
思わず自分の左腕を見据える! えっ? この腕輪が話してるのか!?
『──現時点において装着者をマスターとして認識します──生体波動マッピング、 固有パターン抽出……』
「おい! お前は一体何なんだ! いい加減離れやがれ!!!」
俺は左腕の腕輪に手を掛けて外そうと思いっきり引き抜こうとするが──ハズレない?! こちらがジタバタしている内にも腕輪の奴は勝手に話を進めてやがる!
『──パターン登録完了。続いて固有名登録。マスターの名称を音声にて登録してください』
「!?! 畜生取れねーぞ、コレッ!?」
『──マスターの名称を──』
「やかましい! こちとらそれどころじゃねえぇ!!!!」
『──マスターの名称を──』
「畜生ぉ! なんで外れねーんだッ!!」
『──マスターの名称を──』
「(イラッ)──静かにしやがれってんだッ! この腕輪野郎!!!!!」
『────』
腕輪は黙り込む──しかしどうやっても腕から離せない──良く見ると肌に隙間無く密着している様子が見て取れる!
ええい、それならいっその事叩き壊すか?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そんな物騒な思考が頭の中を埋め尽くす、と
『──を』
『──名称を』
俺の文句に黙り込んでいた腕輪が不意に話し掛けて来る! しかも段々と音量を大きくさせて!
『名称を、名称を、名称を、名称を、名称を、名称を、名称を、名称を、名称を名称を名称を名称を名称を名称を名称を名称名称名称──』
ああぁぁぁぁぁ、やかましいわぁぁぁぁぁ!!!!!!
「そんなに聞きたけりゃ聞かせてやるからしっかり聞きやがれ! ウィルフレド・ハーヴィー24才! オールディス王国冒険者ギルド所属のBクラス冒険者!! 伯爵家の元三男坊だァ!!!!」
因みに彼女無し歴24年だ! どうだ、ざまぁ見やがれ!!
『──・──』
『──固有名称登録完了 : ウィルフレド・ハーヴィー』
「……は?」
半ばヤケクソで叫んだだけなのに、あっさりちゃっかりヒトを登録とかしやがった!?
『──システム・オールグリーン──これにて全設定作業完了────これから末永く宜しく御願い致します──マスター』
いやいや! 何でしれっとヒトに取り付いて、しれっとヒトを登録までしてマスター呼ばわりしやがるんだ?!
「この野郎!」
俺は再び左腕の腕輪を思いっきり引き剥がそうとしたが、うんともすんとも言わない!
『私本体はマスターの左上腕部に原子レベルで同化固着しています』
「それってどういう──」
『物理的要因による分離は不可能──つまりこのままでは外せません』
「!? なんだそりゃ?!」
発作的に長靴に忍ばせていたナイフを取り出し後先考えず腕輪に突き立てた! しかし── !
ナイフの先端が腕輪にぶつかる瞬間、派手な音を立てて手前で弾かれる! 良く見ると淡い光の膜がナイフを阻んでいた!
「?! なんだこりゃ?!」
──うん、さっきからこの台詞しか言ってない気がするが、この際勘弁して欲しい!
『──単なる物理障壁です。私の自己防衛システムが起動しました──』
更に混乱に混乱を重ねる俺に、腕輪──コーゼストは酷く冷淡な回答をするのだった。
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『──あとマスターに警告します──仮に物理的要因のみで離そうとしても上腕部に同化している私を外すのは無理かと。それを無理矢理行おうとするなら、かなりの痛みを伴いますが?』
何とか腕輪を外そうともがいている俺にその腕輪本体のコーゼストから忠告が発せられ、思わず手が止まる俺。
「……それってそんなに痛いのか?」
『はい、それは物凄く』
「…………(ゴクッ)」
何でも無理やり外すとなれば、腕ごと切り落とさないと外すのは不可能だろうと言う話で──そんなの怖くて思わず身が竦むわ!!
『ですが落胆する事は皆無です』
コイツは! またしれっと軽く言いやがって!
『私──コーゼストはマスターの利益に繋がります』
「…………それってどういう……」
この台詞もさっき言った気がするんだが、気にしたら負けである。
『簡単に言うと──とても役に立ちます』
こ、コイツわぁぁぁぁッ!(怒)
「そもそもお前のせいだろが!!!? それなのにしたり顔──って腕輪に顔は無いが! 兎に角簡単に断言しやがってぇぇぇッ!」
『──私はマスターにあらゆる魔物のデータを開示出来ます。 勿論属性や弱点も。また「共生化」によりマスターの戦闘能力をImprovement──つまり底上げ出来ます。 更に私の共生主で有るマスターを自動防衛システムで守護する事も可能です』
──何か魔道具屋で「これは絶対物凄く役立つ魔道具です!」と必死に売り込みされてる気分になるんだが…… 。
どちらにしても今はどうやっても外せそうに無いし……一旦ダンジョンから出て、冒険者ギルドに行って何とかならないか相談しようかな………… 。
俺は隠し部屋を発見し、数々のアイテムを手にした喜びから一転、 肩をガックリ落としてしまう………………何かもう、どうでも良いや………はァ。もう色々諦めて、ノロノロと脱いだ防具を身に付けながら改めて腕輪に話し掛ける。
「……おい、腕輪」
『…………』
「おい?」
『……コーゼスト』
「は?」
『私の名称はコーゼストです』
──アァ、サイデスカ
「お前は本当に役に立つんだろうな……?」
『勿論』
「それで俺に何か害や影響は無いのか?」
『私がマスターに害悪に成りうる事は皆無です。それに先程も話しましたが───』
──結局俺はダンジョンを出るまでの間、ずっーと腕輪もといコーゼストの「如何に自分は優秀なのか」を延々と聞かされる羽目になった────── 。
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「……全く何で貧乏くじ引かなきゃならんのか…………」
俺はファウストが肉を一心不乱に食べる様を眺めながら、思い出した変えようが無い事実に落ち込みつつも、自分の肉串をむしゃむしゃ咀嚼してゴクリと飲み込む。
『マスターは何時までもグジグジし過ぎです』
『いや、 お前のせいなの分かってるか?!』
『そんな後ろ向きでどうします? 明るい未来に向かって前進してください』
本当にコイツは何処までも他人事だな! しかも未来に向かって前進とかなんだよ!!? お前が取り付いた段階で暗黒の未来しか見えんわ!! と頭の中でボヤいていると、ファウストが自分の肉を喰い終わったみたいである。
「さてと、ギルマスに報告しに行くかぁ……」
肉串を食べ終わり立ち上がりながら尻の埃を払い、そう呟く。絶対この事を話したらギルマスがひっくり返る様を頭に浮かべながら──── 。
『先ずはファウストのギルドへの登録を認めさせる事ですね』
『そんな簡単に行くかね……?』
『マスターのギルドへの貢献度から鑑みて──駄目そうですよね』
わかりきった事を言うんじゃありません! 俺は軽く落ち込むよ……?
『まぁイザとなったら高価なアイテムを、そっと渡せば問題無いかと』
『……お前、それは賄賂つうーんじゃね?』
『物は言いようです』
……何となくギルマスが胃薬を大量消費するのが目に見える様である………… 。
「さて、行くぞファウスト」
「オン!」
歩き出した俺の脇にピッタリと寄り添うかのように歩き出すファウスト──冒険者ギルドはもうすぐだ。
俺はウィルフレド・ハーヴィー、王都冒険者ギルド所属のBクラス冒険者である。
あ、そういやルピィの事忘れてた! このまま行くとファウストが餌食になるが目に浮かぶ。
すまんファウスト、その時は頑張って耐えてくれ。
*コーゼストは古代魔族の生み出した魔道具です。なので会話中の「英語」は古代魔族語となっております。すると、作り出した古代魔族とは…?
そして次回はまた濃いキャラ(?)が登場予定です。
宜しければ評価をお願い致します