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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
怒涛の再調査と新たなる事実編!
289/322

魔王の庭、未踏破と魔のモノ達と

大変お待たせ致しました! 本日は第272話を投稿します!

 -272-


 そんなこんなをしながら何日か経ったある日、王都冒険者ギルドのオルガから


「そろそろ「魔王の庭」の第十二階層の調査をお願いしたいんだけど……どうかな?」


 と懇願(こんがん)された。丁度うちの氏族(クラン)分隊(チーム)戦乙女(ヴァルキリー)』のマリオンが、Bクラスへの昇級(クラスアップ)試験を無事終えた時に、である。


「ん? あぁー、それがあったっけな……」


 オルガの願いに今更ながら思い出した俺。そういやそんな事を言っていたっけな。あの後、色々とやっていたのでしっかり忘れていたのはココだけの秘密である。


「もしかしなくても……忘れていた訳じゃないよね? 旦那様(ウィル)?」


 そんな俺をジト目で見やるオルガ。どうでもいいが俺の奥様達は妙に勘が鋭いな!? 隣では実質第一夫人のアンさんが笑っている。


「ハイ、モウシワケゴザイマセン……ワスレテマシタ」


 ここは変に言い訳せずに正直に答える事にした俺。だって下手に言い訳すると「言い訳禁止!」と言われかねないのだ、我が奥様達に。俺の言葉にオルガは大きく溜め息を()くと


「はぁ……まぁこの所色々とあったからね。仕方ないか……」


 やや呆れ気味だが理解を示してくれた。そして


「では冒険者ギルドの最高統括責任者(グランドマスター)として、改めてクラン『神聖な(セイクリッド・)黒騎士団(ブラックナイツ)』に依頼するよ。「魔王の庭」第十二階層を調査してくれたまえ」


 グラマスとしてそう指示を出すのであった。


 因みにマリオンの昇級(クラスアップ)試験は文句無く満点での合格であった。


 うん、実に目出度い。あとでちゃんと祝ってやらねば。


~~~~~~~~~~


 さてさて、兎にも角にもこうして「魔王の庭」の調査を正式に指示されたのだ。これは此方(こちら)としても本腰を入れてやらねばなるまい。それで一旦ラーナルー市の屋敷に戻って、クランのメンバー全員と緊急の作戦会議を開く事になった訳だ。


「よし、皆んな聞いてくれ」


 俺の言葉に大広間に集まった皆んなの視線が集まる。俺はひとつ咳払いをすると


「えへん、先ずは現状確認だ。アン、君達は今第十階層のどの辺りまで探索し終えたんだ?」


 アンにそう端的に尋ねる。彼女がリーダーのチーム『秩序(オーダー)』がこのメンバーの中でも、一番迷宮(ダンジョン)の奥深くに潜っているだろうからな。


「ええっと、そうね……大体半分ぐらいかしら?」


 俺の質問に自身の(おとがい)に手を当てながら考え考え答えるアン。聞けば第十階層に出現する魔物は意外と強く、アン達チーム『秩序(オーダー)』と言えども容易ではないみたいである。それに何より俺とコーゼストが一緒では無いことも、少なからず影響を及ぼしているみたいである。


 まぁ確かにコーゼストと一緒に居れば、攻撃力や防御力、果ては移動速度にまで、能力強化の恩恵を受ける事が出来るからな。俺は常にコーゼストと一緒だから忘れていたが、コレが普通の冒険者パーティーのダンジョンの攻略速度なのだ。と言うか、改めてコーゼストの『共生化』の能力強化の恩恵は大した物なんだな──口には出さないが。


 俺がそんな事を考えていると、(かたわ)らではヒトの思考(考え)を読んでドヤ顔をしているコーゼストの姿が。


 だからソレはヤメレと言うに。


~~~~~~~~~~


 大広間での話はまだ続いている。


「あーっと、そうすると一番効率が良いのは……」


「「魔王の庭」第十階層の最深の避難所(セーフエリア)までアン達チーム『秩序(オーダー)』と共に行き、そこから先はマスターウィルのチーム『混沌(カオス)』で向かうのが最善(ベスト)かと。その方が全体的に見ても時間の短縮にも繋がります」


 俺の言葉に被せる様にそう(のたま)うのはコーゼスト。やっぱりそれが一番ベストな方法らしい。アン達の方を見やると特に反対意見も無さそうである。俺はひとつ頷くと


「よし、それじゃあコーゼストの案を採用しよう。アン、俺達チーム『混沌(カオス)』を第十階層の最深のセーフエリアまで連れて行ってくれないか?」


 チーム『秩序(オーダー)』のリーダーたるアンにそう依頼する。アンも大きく頷くと


「ええ、良いわよ。任せておいて♡」


 快く引き受けてくれたのである。これでひとつ懸念が無くなったが──


「そういやコーゼスト。アン達チーム『秩序(オーダー)』のメンバーのレベルは今どのくらいなんだ?」


 その時ふと頭に浮かんだ疑問を口にする俺。


「はい──先ずアンはレベル81と変わらず、レオナもレベル80と変わらず、ルアンジェはレベル81相当でやはり変わりません。一方でエアハルトがレベル77、スサナがレベル78、ルネリートがレベル78、アリストフがレベル77と、この4人はレベルアップしていますね」


 俺の問い掛けに淀みなくスラスラと答えるコーゼスト。


 流石「既知世界(この世界)一番の魔道具」の面目躍如(めんもくやくじょ)である。


~~~~~~~~~~


 明けて翌日、いつもと同じ様に市場(マーケット)干し肉(ジャーキー)やら燕麦粥(オートミール)やら黒パンやら携行食(クッキー)なんかの買い出しを行う俺とアン達。まぁ「魔王の庭」に潜ったら最後、踏破するまで何ヶ月も帰らない訳でもないし、一応買い出しの量は常識の範囲内で収めた……つもりである。


 それに何より荷物はコーゼストの無限収納(インベントリ)とアン達の無限収納背嚢(インベントリザック)に仕舞い込んだので、俺達自身は非常に身軽で迷宮探索(ダンジョンアタック)が出来るのが最大の強みだな──等と思っていたら


御主人様(マスター)ァ、私ダンジョンでは干し肉(ジャーキー)より分厚い炙り肉(ステーキ)を食べたいの!」


「あっ、ヤトったら(ずる)い! 御主人様(ダーリン)、私は出来れば蜜桃(ミィタォ)を食べさせて欲しいですわ♡」


「くふっ、主様(ぬしさま)(わらわ)はジアンナの作ってくれる料理でしたら何でも宜しいですわよ?」


「…………お前ら、本当に自由だな」


 一緒に市場(マーケット)を見て回っていたヤトやセレネやニュクスから、真逆のお強請(ねだ)りである。そらまあコーゼストの無限収納(インベントリ)は出来たての料理でも入れておけるから、ヤト達のお強請りにも充分対応は出来る。出来るのだが、ソレをやったら厄介事(トラブル)を巻き起こす気がしなくも無い。


 だがしかし、今更無限収納(インベントリ)の事はもう秘密でも何でもなく、街のヒトのみならず他の冒険者達も知っているからな。俺はそう思い直すと、彼女達の我儘(リクエスト)に答えるべく、上質の生肉や最近ラーナルー市でも出回る様になった蜜桃(ミィタォ)を多めに買い込むのであった。


 それにだ。屋敷の料理長ジアンナにもうんと腕を振るってもらわないとな──主にヤト達のやる気の為に。


~~~~~~~~~~


 結局買い出しの翌日はヤト達魔物娘’Sのリクエストに答える形で、「魔王の庭」に持って行く料理をジアンナに丸一日頑張って作ってもらっていた。ジアンナは「ダンジョンの中で私の料理を食べたいなんて……料理人冥利(みょうり)に尽きます!」とやたら張り切って作ってくれたが、ヤト達魔物娘’Sは皆んな健啖家(けんたんか)美食家(グルメ)だからな。そんな所がジアンナの琴線に触れたのかも知れない。


 兎に角丸一日ジアンナに頑張ってもらい、準備も万端整ったので、今日はいよいよ「魔王の庭」に潜る事になった。朝早くからアン達のチームを伴い「魔王の庭」の入口の大門に向かう。警護に着いている領兵に声を掛けて入宮(にゅうきゅう)手続きをして、大門をくぐると大広間(ロビー)にある管理端末(システムターミナル)水晶(クリスタル)にアンが手を置き、第十階層から再探索(リトライ)する事を告げる。当然の事ながらファウスト達は顕現済である。


『──現在第十階層までの転移陣(ポータル)が使用可能です。使用しますか?』


 管理端末(システムターミナル)の声に答えるアン。


「使います」


『使用要請受領しました──転移陣(ポータル)に入ってください』


 案内の声に従って床に描かれた転移陣に入る俺達。 


転移陣機構(ポータルシステム)起動。転移対象確認──座標確認。第十階層のポータルに送ります』


 その声と同時に足元の転移陣が輝き、俺達の身体は光に包まれた。次の一瞬、目の前の光が薄れて視界が鮮明(クリア)になると、俺達は「魔王の庭」第十階層の避難所(セーフエリア)へと転移していた。


 さて、ここからはいよいよ俺達チーム『混沌(カオス)』の出番である。


~~~~~~~~~~


「よし……ここから先は俺達が先行する。アン、君達は今まで通りの歩調(ペース)で進んでくれ」


 そう言ってアン達チームと別れる旨を口にする俺。


「ええ、分かったわ。貴方も気を付けてね♡」


「ウィルなら問題ないだろうけど……それでも気を付けて♡」


「ああ、君らもな」


 アンとレオナの2人とお互いの健闘を祈って軽く接吻(キス)を交わす。スサナやルネリートが物欲しそうな顔で此方を見ているが、定員です、諦めて下さい。そんな事を思っていると


「ウィル……気を付けてね」


 そう言いながら俺に抱き着いて来たのはルアンジェ。この子も自動人形(オートマトン)の身体から魔法生命体(ホムンクルス)の身体になって、益々ヒトっぽくなってきたな……等と思いつつ、抱き着くルアンジェの頭を優しく撫でてやる。


「ルアンジェもな。アン達の事を守ってやってくれよ?」


「ん、分かったわ。任せて」


 頭を撫でられて満足したルアンジェが(ようや)く俺から身体を離した。そしてそれをまた物凄く物欲しそうな顔で見ていたスサナとルネリート──頭ぐらいならいつでも撫でてやるが?


「アン! レオナも! 御主人様(マスター)の事は私に任せておいてッ!」


「もうヤトったら……アンさん、レオナさん、御主人様(ダーリン)の事はヤトだけでなく、私にもお任せくださいね♡」


「くふっ、妾も主様の事はちゃんと御守り致しますわ♡」


 一方でヤトやセレネやニュクスの魔物娘’Sからは、そんな言葉が聞かれる。


 お前達だけじゃなくてファウスト達も期待しているからな、いや本当に!


~~~~~~~~~~


 兎にも角にもアン達のチーム『秩序(オーダー)』と別れて、第十階層の未踏破区域に足を踏み入れた俺達チーム『混沌(カオス)』。アン達は転移して来たセーフエリアから先、この第十階層の詳細な地図を作成しながらゆっくり慎重に進むことになっている。


「良し……コーゼスト、お前の出番だ。第十一階層への最短経路(ルート)を頼む」


 そうコーゼストに指示を出す俺。ここからは完全にコーゼストの独壇場だ。俺の指示を受け頭上に複雑な文様の魔法陣(サークル)を複数展開させると


「お任せ下さい──使用可能の感覚端末(センサー)全起動(フルアクティベーション)生命感知(ライフセイシング)センサー、魔力波(マギアウェーブ)センサー積極化(アクティブ)熱感知(ヒートディテクティブ)センサー覚醒(ウェイクアップ)。『星を見る者(スターゲイザー)情報処理(システムオンライン)──第十階層の情報を取得しました。これより地図作成(マッピング)を開始。ならびに最短ルートを策定──策定完了しました。こちらです」


 そう言って自ら先頭に立ち、道案内を始めるコーゼスト。その後について歩を進める俺とファウストを始めとする従魔(フォロー)達。因みにこの段階でこの階層の(トラップ)の類はコーゼストが全て把握しており、俺が斥候(スカウト)技能(スキル)を使う事無く、安心安全に移動が出来るのだ。


「「グルルルルルゥゥ」」


「マスター、進行方向200メルト先に複数の魔物の反応です。この反応は──梟熊(アウルベア)ですね。数は5体、(レベル)は平均で63、順位(ランク)はA+相当です」


 それにこの様にファウストとコーゼストのコンビによる早期警戒があるから此方としては実に有難い。


 俺はファウスト達に短く指示を与えながらそんな事を思っていたのである。


~~~~~~~~~~


「グワァーーーッ!」


 雄叫びを上げながら統率者(リーダー)(おぼ)しき体高3メルトの梟熊(アウルベア)が俺の前に立ちはだかる! だが!


「──行きます(ゲーエン)


 同じく体高3メルトのデュークが前に出て、そのアウルベアとガッシリ組み合う! 残りの4体のアウルベアは、それぞれファウストやヤトやセレネやニュクスと睨み合っている! その時!


「うふふっ、ほぉら熊ちゃん達。アナタ達の相手はソチラにいるわよォ♡」


 セレネの「魅惑(ファシネイション)」が発動して、彼女と目を合わせていたアウルベア達が他のアウルベアと同士討ちを始めた! (たちま)ち混乱に陥るアウルベアの群れ! 鋭い鉤爪(かぎづめ)で引っ掻き合い、噛み付き合って手傷を負っていくアウルベア達! そこに更に追い打ちをかけるかのように


「「ウーーッ、ウヮォーン!」」


「──豪炎槍(パイロランス)!」


「──大嵐槍(ストームランス)!」


「──くふ、大岩槍(ロックランス)


 ファウストの爪撃破(そうげきは)が、ヤトの豪炎槍(パイロランス)が、セレネの大嵐槍(ストームランス)が、ニュクスの大岩槍(ロックランス)が、トドメとばかりに叩き込まれる! 断末魔の叫びを上げる間もなく倒れ伏すアウルベア達! 最後に残ったリーダーのアウルベアも


「ヴ──金属槍(メタルランス)


 組み合うデュークの身体から生み出された無数の長槍(ランス)で、文字通り串刺しになって光の粒子へと還って行く。あとに残ったのは5つの大振りな魔核(コア)だけであった。


「……ヲイヲイ」


 その光景に言葉を失くす俺。流石は全員レベル80超え(オーバー)のランクSだけの事はあるが……はっきり言ってこれは過剰攻撃(オーバーキル)過ぎる!


 俺は魔物を倒してドヤ顔をしている従魔(フォロー)達に、思わず頭の中でそうツッコミを入れるのであった。



 コレ、俺要らなくね?



ここまでお読みいただき有難うございました!


次回は2週間後になります!


それではお楽しみに!!

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